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嘘告してきた女の子を助けたら懐かれた話  作者: 春井涼(中口徹)
第一部

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第二話-8

「天宮先輩にも言ったけど、俺は別に、お礼されるようなことはしてないよ。ただの自己満足だし」


 本当に、天宮先輩に言ったのと全く同じ内容のことを、御影に伝えた。むしろ俺は暴走した方だ。あれで礼などされる方が筋が通らない。結果として、迷惑かけたわけだし。


 それに御影に限っていえば、事情聴取が始まる前にもひと騒ぎあった。本当に、お礼をされる理由がないのだ。そう言って断ろうとしたのだが、まさかの御影に先手を打たれた。


「お礼要らないはなしね。みなみ先輩から聞いたけど、東宮くん、お礼されるようなことしてないって思ってるんでしょ」


「分かってるなら話は早い。じゃあそういうことで……」


「だめ」


 だめか。なんでそこまでして、みんなお礼をしたがるのか。


「東宮くんにとって自己満足だったかどうかは関係ないよ。わたしが助けられたと思ったからお礼するの」


「それはまたなんと強情な……」


 どうやら折れてはくれないらしい。とはいえ、そんなに急になにかさせろと言われても、すぐに思いつくことはない。


 いや、ないわけではないんだが、さすがにこれ言ったら誰でも引くだろうっていう内容だしな……俺でも引く。何なら前言撤回して電話切って二度と口聞かなくてもおかしくない。


 御影とは付き合い長いわけじゃないしな、長ければやってくれるっていうものでもないだろうけど。


 一応確認してみるか。


「ちなみにそれ、許容範囲どこまで?」


「えっと、常識と良識の範囲内、公序良俗を逸脱しない程度?」


「王様ゲームか」


 さっき全く同じ条件範囲聞いた記憶があるぞ。とにかくこれはだめだ。許容範囲外になる。


「とはいえ他に、ちょうどいいお願いもないしなあ……」


「他にってことは、一個は何かあるの?」


「いや、ないわけじゃないんだけど……」


「言って」


「いや、でもこれはさすがに……」


「言って」


「……電話だと強情ですね御影さん」


 仕方ないので、言うことにした。これで引かれても仕方ないと思うけど、まあそのときはそのときだ。


「じゃあ今度の日曜日、俺とデートしよう」


 やばい、言葉を間違えた。


「わ、分かった。何時にどこに行けばいいの?」


 そしてまさかのOK。


「あー、えっと、アリス朝日出、じゃあ分かりにくいと思うから、朝日出駅北口の改札前に午前一〇時集合……でいい?」


「うん、じゃあその時間に行く」


 思いの外、あっさり決まった。本当に?


「ああっと……い、嫌じゃなかったか? よく知らない奴に急にデートに誘われるとか、普通怖いだろうし……」


「だ、大丈夫、嫌じゃ、ない、から」


「そ、そっか。じゃあ、また」


「うん、おやすみ」


 電話が切れた。すっげえ緊張した。そして、今更ながらに自分のことを顧みる。もう眠いとか疲れたとか言ってる場合じゃない。


 俺は、大きく深呼吸すると飛び起きて、息を止めたかと思うくらい静かにしていた義妹に振り返った。


「梨花どうしよう、デートに着ていく服がない!」


「それを私に言われましても」


 そうでしょうとも。

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