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嘘告してきた女の子を助けたら懐かれた話  作者: 春井涼(中口徹)
第一部

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第二話-6

 料理が運ばれてきたのを契機にして、天宮先輩は自分の席に戻って行った。それから少し、それぞれの料理を堪能する時間が流れる。


 確か今日の本題、お礼と謝罪とお願いって言ってたな。お礼と謝罪は分かったけど、残り一個は分からない。


「それで、お願いって何ですか?」


「その前に、東宮双矢くん」


「なんです?」


「……君、凛ちゃんのこと好きでしょ」


 あ、このハンバーグ美味いな。ところで凛って誰のことだ? ああ、御影って御影凛って名前だったな。なるほど、それで御影のことを、なんて? 隙? スキ……。


「……!? 何!? 急に何の話ですか!?」


「あれ、まだ気になってる段階だったかな」


「いや俺が言いたいのはそういうことじゃなくてですね!?」


「ほらほら東宮くん、周りのお客様に迷惑かけちゃうから、ちょっと静かにしようねー」


「今の話の流れで俺が窘められるの、すごく納得いかないんですけどねえ!」


「それで、実際どうなのー? 告白するなら出会って三ヶ月以内の今が狙い時だよー?」


 だめだ全然聞いていやがらねえ! この人のこののんびりした喋り方、絶対こっちが素だろ! さっきまで謝罪だの感謝だのされていたはずが、今度は一体、何の辱めを受けている!?


 いや待て、落ち着け、こういうのは取り乱した方が負けだ。実際俺は、御影のことをどう思っている? 考えるまでもない、というか考えられるほど、まだ俺は御影のことを知らない。あ、でも何回か可愛いとは思ったな。


「ま、まあ、ありかなしかで言ったら、あり、ですね」


 よし、かなり冷静に返せたはず。


「うんうん、凛ちゃん可愛いでしょー」


 いやだめだこれ認めても負けだ。もう諦めて白旗上げるしかない。指摘の方向性を変えよう。


「なんか先輩っていうより、お姉さんの立場じゃありません?」


「実際、東宮くんになら、お姉さん凛ちゃんのこと任せてもいいかなーって思ってるよー?」


 話が見えてこねえよ……。天宮先輩、まじでよく分からん。天然か? 天然なのかこれは?


「さっきから何の話ですか、お願いとやらはどこ行ったんですか」


「今してるところだよ」


 そしてコーンスープ飲んでるだけで、なんでそんなに絵になるんだこの人。


「東宮くん、凛ちゃんのこと、守ってあげてね」


 なに? お願いってそんなこと? わざわざファミレスに呼び出して言うことか? 本当によく分からないなこの人。


 ……そんなこと、あの嘘告白の計画に関わった時点から、わざわざ今更言われるまでもないっての。




 なんかもう思い出すのも嫌な醜態を晒しただけな気がするが、その後は和やかに食事をし、当たり障りのない会話をした。ここの唐揚げ美味かったな、今度来ることがあったらまた食べよう。


 そして、会計なのだが。


「あの、本当にいいんですか? 俺、自分の分は自分で払うつもりで値段気にせずいろいろ注文しちゃいましたけど、全部先輩が持ってくれるって」


「いいのいいの。言ったでしょ、今日のはお礼と謝罪とお願いだって。これはその対価の一部みたいなものなんだから、こういうときは素直に奢られておきなさい。それに──僕にはとっておきにカードがあるからね」


「とっておきのカード? ……エイズフォーゲルの従業員割引!?」


 先輩の手に現れたのは、エイズフォーゲルのエンブレムが入った青いチケット。この短い時間で、この人は何度、俺の想像を超えれば気が済むのだろうか。


「何を隠そう、僕はここでバイトしてるからね。割引も効くし、そうでなくてもお財布には結構な余裕があるのだよ。あ、お疲れ様でーす」


「今日は天宮先輩に驚かされっぱなしですよ、本当に」


 なんともまあ、濃い一日だった。本当に。

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