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嘘告してきた女の子を助けたら懐かれた話  作者: 春井涼(中口徹)
第一部

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第二話-3

 気を取り直して王様ゲームは続き、そろそろ一〇回目くらいになるだろうか。未だにお誕生日席から動けていない平井がだんだん可哀想に見えてきたが、最初の命令だったし仕方ない。


「「王様だーれだ」」


「あ、俺だ」


 俺が引いたくじの先端は、赤い塗料が塗られていた。つまり俺が王様だ。命令は……決めた。


「じゃあ二番、自販機で紅茶華道のロイヤルミルクティー買ってきて。喉乾いた」


「お前それただのパシリじゃねえか」


 ノータイムで左隣から相沢が小突いてくる。いいツッコミだが地味に効くねんそこ。俺あんまり肉ないから、薄皮通過するとその下すぐ骨なんだよ。それはさておき、俺は財布から一〇〇円玉と一〇円玉を取り出しながら訊ねる。


「で、二番は誰?」


「俺だよ」


「じゃあよろしく。多分これで足りるはずだから」


「ちくしょう、覚えてろよ」


 相沢が捨て台詞とともに美術室を駆け出して行った。まあ良識はあっただろう、ちゃんと代金は渡したんだから。無駄のないやりとりに、女性陣が肩を震わせているのが見える。


 紅茶華道のロイヤルミルクティー美味いんだよな、早く帰ってこないかな。


「「王様だーれだ」」


 相沢はいないが、待っていてはゲームが五分くらい停止してしまうので、残ったメンバーでまたくじを引く。俺は……四番よく出るな。王様は天宮先輩になったらしい。


「あ、僕? それじゃあ、三番が猫のポーズで『にゃあ』でどう?」


「自分に当たったら程よく地獄なやつだ……」と俺。


「漫画の王様ゲームみたい……」と御影。


 そして自分の番号を確認し、ちょっと残念そうな白原。やりたいの?


 とりあえず、野郎の『にゃあ』は回避できたらしい。これならあとは、誰が猫になっても事故にはならないだろう。天宮先輩がすごくわくわくしてる。というか目がものすごくきらきらしてる。


「それで、三番は誰?」


 すると、まさかのお誕生日席から渋々といったふうに小さく手が上がった。


「わ、私です……」


 本人はすごく嫌そう。でも他の女性陣は目を輝かせている。気持ちは分かる。


「おー、鈴花の『にゃあ』は楽しみ」


 とは、白原が期待の眼差しと共に送った言葉だ。さあ覚悟を決めるんだ平井鈴花、公序良俗に反しているわけでもなし、王様ゲームのルール的には全然ありの範疇だからストップは効かないぞ。天宮先輩の目がきらっきらしてる。逃がさないってさ。


「みなみ先輩恨みますよ」とか言って最後まで嫌そうにしていたが、やがて平井は両手を握り肩の位置まで持ち上げ、


「に、にゃあ……」


 うん、非常に恥ずかしそう。どこ見てるんだ、天宮先輩の右には誰もいないよ多分。


「可愛い!」

「鈴花可愛いよ!」

「僕の勘に狂いはなかった!」

「だからやりたくなかったんですよ!」


 女性陣、絶賛。さっきまで大人しかった御影ですら感激して拝んでいる。ちょっと解釈不一致。天宮先輩は満面の笑みでどや顔してるし、白原に至っては羞恥と屈辱に耐えかねて机に突っ伏した平井にそのまま抱き着いている。百合は美味しい。大変ごちそうさまです。


 いつの間にか帰っていていた相沢が、ロイヤルミルクティーの冷たい缶を片手に呆然として立っていたが、そんなことは些事である。いや些事じゃないな、喉乾いたから早くくれ。せっかく結露するほど冷たいのがぬるくなるから。

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