第二話-1 ラブコメでいじめられてるのは大体隠れ美少女な件
「はあー!? どうしてそういうことを私に黙っているかなあ!?」
「悪かったって、口止めされてたんだよ。だから結衣、そろそろ許してくれ、酔う……」
ぐわんぐわんと効果音が付きそうなくらい身体を揺らされている相沢、両手で肩を掴んで揺らしているのは小西。何の話かといえば嘘告白……というより御影のいじめの話を相沢が話した結果、こうなったという状況だ。
ちなみに相沢は、揺れに弱い。肩を掴まれていると言ったが、揺らす方向は前後だけでなく左右にもなるので、これがかなり相沢には効くらしい。
付き合いの長い幼馴染の小西のことだ、知らないわけではないと思うが、本当に酔いそうだ。というか既に酔ってるかもしれない。そろそろやめてあげて。
相沢がぐわんぐわんから解放されてふらついているので、俺は背中を手で支えてやった。そして言った。
「女房に隠し事はいけませんぜ、旦那」
「うるせえ、なんだよその喋り方。俺が反論できないのを分かった上でお前な……」
言い返してくる声にも力がない。吐かれても困るので、とりあえず相沢は椅子に座らせることにした。文芸部の部室でもないのに適当に椅子を引っ張ってきたが、まあ多分問題はないだろう。それに、蚊帳の外にいるもう一人も、そろそろ会話に加えたいし。
あの嘘告白から二週間ほどが経過した月曜日の今日、俺たち二学年の学年集会が行われた。内容は二学年で早速起きた陰湿ないじめが中心だ。
実際にあった以上、知らせないわけにはいかない。そしてついさっき、その問題の解決に、俺と相沢が関わっていたことを(平井の許可を得て)小西に話し──なぜか相沢だけが小西にぐわんぐわんされたというわけだ。最後だけ意味分からん。
まあそれはさておき、俺と相沢は平井と天宮先輩の指示を受け、しばらくは御影の経過を観察することになった。となると当然、小西にも引き合わせた方が何かとやりやすくなる。
そのために、俺たち四人は、放課後の化学部の部室に集まっていた。最初から事情を伝えておいた方が楽だろうという考えだ。そこで小西に諸々の事情を話した結果が、冒頭のぐわんぐわんである。
「というわけで、こちらがその御影凛です」
「あ、えと、こんにちは……?」
「改まって紹介されても対応に困るだろ」
思ったより早く回復した相沢が、机にあったハリセンで俺の腕を叩いた。失敗だったか。というか化学部になんでそんなものが置いてあるの? 誰が何のために作ったのそれ? すっごい良い音したんだけど。腕がひりひりする。
「なんか色々大変だったみたいだね。ごめんね、同じクラスなのに気付いてあげられなくて」
小西、受け入れるの早くない? そして対応神か。
「これが結衣のいいところだ」
「おっと旦那、嫁自慢ですかい?」
「いや、ただ彼女の良さを再確認してた」
「惚気でしたか失礼しました」
「こらそこ! 隙あらばコントしない!」
「結衣、顔赤いよ」
「相沢、お前もだぞ」
コントは前に天宮先輩にも怒られたな。でも残念ながら、喜びながら怒られても怖くない。むしろご馳走様です。そしてこの空気に慣れていない御影が置いていかれている。
「あの、東宮くん」
「はいなんでしょうか」
「なんでわたしにだけ敬語なの? じゃなくて……相沢くんと小西さんって、いつもこんな感じなの?」
「せやな」
「今度はなんで関西弁?」
ふむ、なかなかいい突っ込みだ。そして普通に会話できないのは、もちろん俺が女子に慣れてないからですね。小西と会話するのも最初はなかなかハードル高かった。
あまり緊張しなかったのは、最初から後輩だと分かってた白原と、緊張の方向性が他と違った平井くらいだろうか。梨花はまた別枠として。
「まあとにかく、ここにいる三人は御影を裏切ることはないから。その点はその、安心していい、と、思う」
「断言はしないんだ?」
急に恥ずかしくなって語尾が怪しくなってきた俺の言葉に、御影が可笑しそうに笑った。
「うるさいな、慣れない台詞だし柄にない台詞なんだ、笑うなよ」
ちょっとむくれて言い返す。御影はまだ笑っていた。うん、彼女は笑ってた方が可愛いと思う。
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