第一話-20
菅野台高校の校舎は、ドアが鉄製で結構大きい音がする。こんな静かな状況で動かせば、嫌でもそちらに意識が向く。そこから出てきたのは三人の女子生徒である。何か見たことある気がするな。こいつらもクラスにいたんだっけ。
「はい引っかかったー!」
「ドッキリ大成功ー!」
「期待しちゃったねー残念だったねー!」
うわうっざ。本当に嘲笑いながら登場しちゃったよ。さてはごみだろこいつら、言われなくとも躊躇なんかせんわ。平井は俺を、絶対的平和主義者か何かだとでも思ってるのか? 躊躇どころか一瞬で殺意湧いたんだが。
「お前みたいなクソ陰キャに相手に誰が告白するかっての! 現実見ろよ!」
「ってかお前、身長一七〇なくね? もしかして人権ないんじゃない?」
「自意識過剰乙ー!」
あー、うるせえ。もういいかな? いいよね。
「梨花……やるぞ」
小さく呟いて、俺はしなる銀魔力を三人の女子生徒に向けて放った。流石に殺したら問題になりそうだから、腹部を圧迫するように縛り上げる。
銀魔力は魔力を物質化する魔法だ。こうして締め上げる際に結び目は作らないし、細い銀魔力の糸を集めた後ですべて一体化させることもできる。そして強度を上げれば、これは鋏や電動鋸でも容易には破れない。
「現実を見るのはてめえらだよ」
ぎりぎりと音を立て、銀魔力が三人の腹部に食い込んでいく。もうちょっとやってもいいかな? いいよね、先に非人道的な行為を働いてたのはあいつらなんだし。
「はあ!? なにこれ、全然取れないんだけど!」
「放せよクソっ、おい無視すんな!」
「っていうか、だんだん呼吸がしづらく……」
「あー、うるさ。やっぱてるてる坊主にしようかなあ……」
もう何でもいいや、あとは膝を逆に圧力掛けて……。
「ま、待って東宮くん! やりすぎ、やりすぎだから!」
両肩を掴まれ、俺はふと我に返った。肩を掴む華奢な手の先にいるのは、前髪で顔が隠れている一人の少女。そして目の前には、銀魔力が腹に食い込んで苦しむ三人の女子生徒。銀魔力が繋がっているのは、俺の右手。
まさか俺は、怒りに任せて、またやってしまったのか?
俺は慌てて、銀魔力を解いて戻した。そんな状況で、平井と相沢と天宮先輩が駆けつけてきた。
「東宮? まさかこれ……お前がやったのか?」
「……そうらしい。逆上して、殺す気で縛り上げてしまったみたいだ」
「おいおい、殺しちゃあ問題だろ。事実確認ができなくなるぞ」
「……そういう問題じゃないよ。被害者側が加害者になったら本末転倒でしょ」
「それもそうですね」
平井たちは、「派手にやったなあ」という目でこの惨状を見ていた。それを救いと見たのか、咳込みながら派手にやられた方の三人が懇願する。
「助けて、あいつが急にウチらをワイヤーみたいなので縛り上げてきて……」
だが、平井は取り合わない。
「残念ですけど、あなたたちが先に悪行を働いた証拠はここにありますよ」
平井が示したのは、彼女自身のスマートフォンだった。そこに映し出されたのは、
「わたし、あなたのことが好きです。わたしと付き合ってください」
「俺も……俺も、御影のことが好きだ。だからその、付き合おう」
「はい引っかかったー!」
「ドッキリ大成功ー!」
「期待しちゃったねー残念だったねー!」
「お前みたいなクソ陰キャに相手に誰が告白するかっての! 現実見ろよ!」
「ってかお前、身長一七〇なくね? もしかして人権ないんじゃない?」
「自意識過剰乙ー!」
俺が正面から映った映像だった。俺が背後を振り返ると、あの三人が映り込むように角度が計算されている。しかもこの画質……さてはあいつ、御影の胸ポケットに仕込まれたスマートフォンとビデオ通話で繋いでおいて、その映像を録画していたな?
冷静に考えると、結構恥ずかしい台詞吐いてるな、俺。まったく、とんでもない茶番だ。
「平井、お前、ウチらを裏切ったの?」
怨嗟の籠もった視線を向ける、加害者の女子生徒。だが、平井はどこ吹く風だ。
「そもそも最初から、私はあなた方の仲間になんてなってませんけど?」
「ふざけやがって……!」
おお、こわ、こわ。いじめってやっぱり、碌な結末辿らないよな。
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