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嘘告してきた女の子を助けたら懐かれた話  作者: 春井涼(中口徹)
第一部

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第一話-1 嘘告白にもいろいろ事情はあるけどできれば関わりたくはない

東宮(はるみや)ー、俺五月病なったわ」


「急にどうした」


 五月の連休明け、隣席の俺にそう言って話しかけてきたのは、友人の相沢(あいざわ)健人(けんと)だった。菅野台高等学校化学部所属、人数的に多分次期部長と称されるやつだ。


 中肉中背で眠そうなぼんやりとした顔立ちをしており、正直こいつに五月病とか言われてもピンとこない。お前多分、毎日五月病だろ。もはや万年病だろ。


「いやー、五月病ってマジであるんだな。ファンタジーかなんかだと思ってたわ。まさか俺がなるとは思わなかった」


「お前の場合は毎日五月病みたいなもんだろ、無気力が服着て歩いてるようなもんじゃねえか」


 しまった、つい反射的に言ってしまった。せっかく内心で呟くだけに止めようとしてたのに、なんとも恐ろしいやつだ。


 あとれっきとした理系代表みたいな化学部がファンタジーとか言うな、そういうのは俺たち文芸部員の領分だ。美術部も入れてやっていいかもしれないが。


「お前は元気そうだよなー、期待の魔法使い東宮双矢(そうや)君?」


「なんでわざわざ俺のフルネームを呼んだ。あと魔法使い言うな、痛いやつだと思われるだろ!」


「それこそお前が言うかよ、厨二病の体現者が」


「語弊しかない……」


 分かってる、こいつが言うことは噓でも冗談でも何でもないってことが。そいつは俺が一番よく分かってる。でも待ってくれ、情報の切り取り方に悪意があるんだ。誤解を招く言い方するなよ、理系なら公平に情報を並べるんだ。


「それはそうとお前、ゴールデンウィーク中に彼女できたか? 俺お前からのダブルデートの誘い待ってるんだけど」


「そう簡単に彼女ができてたまるか。そもそもお前の彼女以外、友達と呼べるような仲いい女子がいねえんだって」


 そう、こんなふざけたやつにも彼女がいる。そして俺は、このふざけたやつにさっさと彼女作れとせっつかれている。ことあるごとに。


 ……そんなにダブルデートとやらがしたいんだろうか。何がいいのかさっぱり分からないが。


 そんな馬鹿な男子トークをしていると、その彼女が現れた。少々生活サイクルが違うとかで、このカップルがそろって登校してくるところは滅多に見ない。


「おはよー、二人とも。健人はやっぱり五月病になっちゃった?」


 小西(こにし)結衣(ゆい)。相沢の彼女だ。黒髪をポニーテールにまとめた、小柄な美少女である。ぶっちゃけ相沢にはもったいないと思う。まあ本人たちが好き合ってるし、俺は口挟む気はないけど。というか、


「おはよ、結衣。今日も髪型似合ってるよ」


「ありがと、健人」


 こんなのを毎朝見せつけられているのだ。引き裂くとか苦言を呈するとか、もうそういうのが馬鹿らしくなってくる。ゾンビ映画の序盤で殺されそうだ。よくそんなストレートに言えるよな、ごちそうさま。


 ちなみに小西の席は、俺の右斜め後ろ、つまりは相沢の真後ろだ。前述したとおり、相沢は連休明けの今に限らず、常に五月病みたいなものなので、今の席になってからはよく授業中に居眠りしては小西につつかれている。青春とはかくあるべき、みたいな話だ。本当にごちそうさまです。


 そういう座席配置でもあって、俺はこの二人に良くしてもらっている。昼休みもこの三人で食事をすることが多いし、ダブルデートネタでせっついてくるのは小西も同様。お陰様で退屈しない。


 自分で言ってて悲しくなってくるが、非モテ陰キャには過ぎたる栄誉と言うべきか。まあいいや、彼女とか恋人とか、俺には一生縁のない話だ。話半分に聞き流すが吉……。


「そういえば健人、あのこと(・・・・)ってもう東宮君に言ったの?」


「あ、やべっ。言ってなかったわ」


 荷物を下ろした小西が、(おもむろ)にそんなことを言う。そして、相沢もそれで通じているらしい。なんだろう、どこかに連れて行ってくれるのだろうか。俺はこの二人に連れられてなら、大体どこにでも行きたいと思えるんだが。


「東宮、来週の土曜日、化学部と文芸部と美術部で小田原に行くって話聞いたか?」


 なんだそりゃ。


「美術部の高野先生が提案したらしいんだけど」


 ……なんだそりゃ。


「俺たち化学部には、一昨日の夜連絡があったんだが、文芸部(そっち)はまだ聞いてないか?」


 …………。


「なんだそりゃ!?」


 知らん。聞いてない。は? ふざけんなよ?


「化学部の顧問ってあの(・・)塚本先生だよな? 連絡が遅いことに定評のあるあの(・・)塚本先生だよな? 俺、なんも聞いてないぞ?」


 流石に俺だけ情報が遮断されてるなんてことはないはずだ。ということは、うちの顧問が連絡を出していないということになる。


 万が一俺にその連絡が届いてないとしても、メッセージアプリLINER(らいなー)の文芸部グループで話が共有されるはずだ。今までそういう習慣だったし、そのあたり、うちの部員のことは信用している。


 ということは、本当に顧問が連絡を怠っているということだ。だんだん腹が立ってきた。文芸部(うち)の顧問は鈴村先生だが、今まで化学部と合同で活動することが決まった時は、いつも文芸部の方が連絡は早かった。


 にもかかわらず、今回は化学部に先を越されたという。屈辱である。


 鈴村先生は、塚本先生と仲がいい。それは結構なことだ。でもまさか、連絡が遅いというステータスが朱に交わって赤く染まったんじゃないだろうな。


 俺は、今日の活動時に鈴村先生に問い詰めることを決意した。

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