第一話-17
やや話が脱線した。本題は、計画──嘘告白が行われる日時が決まった、という話だ。
「主犯の三人に工作して、凛先輩が嘘告白させられるように仕掛けました」
さらっととんでもないことを言う平井である。なにこれ。
「そのまま情報を抜き取ったところ、凛先輩は明日の放課後、東宮先輩を東棟二階に呼び出し、北側の人気のない場所で嘘告白することになります」
「それ、今言っちゃっていいのか? 先に情報が伝わってると、主犯に命令されたときに反応で分かるんじゃ……」
「もう指示はされてますので、そこは心配いりません。今は、嘘告白の標的を探していることになってますね。モテなそうで気弱そうな陰キャ男子を狙うように言われたみたいなので、東宮先輩は条件に合致してます。そこも心配いりません」
「悪かったな、非モテ陰キャで」
「むしろ良かったんじゃねえの?」
「黙れリア充、爆発しろ」
「事あるごとにコント始めないでもらっていいかな、そこの二人?」
「「すいませんでした」」
先輩に怒られるという一幕を挟み、平井の話が続く。
「凛先輩は、六時過ぎくらいを目安に東宮先輩を堕としにかかってください。心理学的に確認されている、黄昏効果が狙えます。元々女性から男性への告白は成功率七〇パーセントになりますし、それをさらに引き上げることが可能です」
御影が頷いてるけど、なんでちょっと本気っぽい計画練ってるの? その心理学用語はどこから出てきたの? 御影も意気込んだ風に拳握ってるんじゃないよ、ちょっとは何か突っ込んでよ。
「で、東宮先輩は、嘘告白だと分かった上で承諾してください。断ったら主犯がネタバラシに出てこない可能性もあります。それで捕縛し損ねたら、現状が余計悪化することになりかねません。凛先輩を傷つけたら手足の指を凍傷にして落としますからね」
御影がぺしぺしと平井の背中を叩いている。が、痛くはなさそうだ。
対照的に雪女の脅迫は普通に怖い。殺しますよ、とかじゃなく、蜂の巣にしますよ、とかでもなく、じわじわと苦しめられる上に死にはしなくて一生苦労する指の凍傷っていうのが具体的かつリアルで怖すぎる。絶対逆らわないでおこう。
「そういえば今まで聞かされてなかったけど、主犯って誰なんだ? 三人ってさっき言ってたけど」
俺がそう訊くと、平井はわざとらしく視線を逸らした。
「知らない方がいいと思います。今知らなくてもどうせ明日の放課後には分かりますし、それに、今から知ると明日までかなり気まずくなると思いますから。詮索もお勧めしません。人払いはしますから、捕縛するときは躊躇せず、一思いにやってください」
「ってことは、俺も見知った相手ってことか?」
「多分関わりは少ないと思いますが、可能性はあるでしょうね。とにかく何も考えないでください」
「わ、分かった」
そんなに言うということは、本当に知らない方が良さそうだ。詮索はしないことにしよう。誰が主犯なのかはものすごく怖いところだが、知らないを貫き通そうと心に決めた。
そのとき、ちょうどチャイムが鳴った。結局、話してばかりで食事があまり進まなかったが、まあ仕方ない。俺は齧りかけだったパンを急いで口に詰め込み、相沢はミートボールのたれをつけた白飯をかき込む。それぞれ荷物をまとめ、次の授業って現代文だっけ、とか話しながら立ち上がる。
とそこへ、今まで一度も喋らなかった御影が俺の腕をつついてきた。地味にくすぐったい。
「東宮くん……明日のこと、よろしくお願いします」
俺は不覚にも、意外に声可愛いんだな、と思ってしまった。不明だとかで聞かされていなかったが、いじめの原因って、もしかしてこの声に嫉妬したとかじゃないだろうな。いじめとしては、いかにもありそうな話だ。
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