第一話-16
例の計画、というのは、言わずもがな嘘告白の件だ。俺が梨花に地獄のような練習を課せられている間、平井からLINERで計画について共有され、いじめのターゲットにされているのが誰なのかも教えられた。
それが、クラスメイトの御影凛である。同じクラスにいながらその事実に気付かなかったことには衝撃があったし、今までに何があったのか、俺が聞かされたのはほんの一部らしいが、到底容認できるものではなかった。同等の情報が相沢にも共有されると、
「うわまじか……。俺でも全く知らなかったぞ」
と言って、数秒間呆然としていた。こいつの情報網にかからないって、相当上手く逃げられてたんだな。そりゃ今まで目撃証言が出なかったわけだ。だが、それなら一つ、疑問が残る。
「けどちょっと待ってくれ、これは実態について聞いたときからいずれ訊こうと思ってたんだが……」
俺は、俺たちと同じく東棟玄関で食事を始めた平井たちに、質問を投げかけた。正直馴染みのない女子三人が一緒にいるというこの状況から今すぐにでも逃げ出したいと思っているが、こんなところで非モテ陰キャを発揮している場合ではない。
「……そんなに巧妙に逃げられてた相手なのに、どうやってその、いじめの事実を知ったんだ? 目撃情報もなかったんだろ?」
そう、誰も気付けない状況というのは、それを打破する算段を複数人で練っている、この状況と矛盾するはずなのだ。御影が自分から後輩に相談した、という可能性もあるが、俺は自分自身の経験から、その可能性は高くないと見積もっている。
いじめの被害に遭っている、という相談は、何も知らない人たちが無責任に想像する何倍も難しい。だからこそ、陰湿ないじめは気付かれず、発覚するのは氷山の一角、取り返しのつかない事態になってからようやく発覚する、というケースも稀ではない。
「それは確かにそうだ。あんまりこういうことを言いたくはないが、第三者の俺としては、東宮の方が変な後輩に騙されている可能性すら考慮しないといけない。誰も知らない、証拠も証言もない、それなのにこんなことが起きていると言われても、根拠と信ぴょう性に欠ける。そもそも、こいつが魔力使用者だって情報を本人に告げたのは、話を断れなくする脅迫の材料だって見方もできるんだぞ」
俺の意見に同調して、相沢がそんなことを言う。正直、俺も否定し切ることができない。話を信じる理由は、今のところ、平井から伝えられている情報しかないのだ。だが、
「相沢、さすがに少し言いすぎだ。お前の情報網が広くて信用できるのは分かる。でもそこに引っかかる情報が全てじゃない。それに、平井から聞いた話は嘘だとは思えない。元当事者として断言する──あれは到底、作り話でできる内容じゃない」
「それこそ、実例を参考にしたプロパガンダかもしれないぞ」
「うん、そうだよね。その疑問は当然だと思うよ」
ヒートアップする俺たちの議論に割って入ったのは、平井と一緒にいた黒髪ボブカットの先輩だ。
「結論から言うと、凛ちゃんが被害を受けているのに最初に気付いたのは僕だったんだ。今年の四月中旬ごろから、ちょっと様子がおかしくてね。しかもそれで何もないように装う姿に、見覚えがあった」
「見覚えと言いますと?」
相沢の疑問に、先輩は続ける。そして特大の爆弾を投下した。
「去年の僕と、同じだった」
なるほど、全て理解した。この先輩も、去年同じようないじめを受けていたんだ。しかもそれを隠していた。何らかの理由で解消されたようだが、今の御影の様子が、去年の自分に重なって見えたのか。だから気付けた、と。
相沢も、同じ結論に行きついたようで、
「御影、疑って悪かった」
と言って頭を下げた。
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