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嘘告してきた女の子を助けたら懐かれた話  作者: 春井涼(中口徹)
第一部

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第一話-14

 あのぞわぞわする地獄を一週間味わった、次の月曜日。俺は小西から相沢を借りて、昼休みに二人で弁当を食べていた。


 いつも三人で食べていたので小西が個食にならないか少し心配したが、他の友達と食べるんだとかで、一人にはならないらしい。少なくとも、二人がいなければ万年ぼっち飯の俺が心配することではなさそうだ。


 情報収集が目的のため、場所も変えている。今は使われていない、東棟の玄関だ。ここは人通りがなく、腰かけやすい階段があって、しかも日陰で風も弱い。密談には最適というわけだ。


「んで、俺に訊きたいことって何だよ?」


 卵焼きを頬張りながら、相沢が言う。小西の手作りらしい。今日も今日とて仲睦まじい様子で何よりだ。


「言っておくが……」


 口に入れていたものを飲み込んで、相沢が注釈をつける。


「俺はなんでも知ってるわけじゃないからな? お前はどこか、俺を情報屋みたいな扱いしてるところあるけど」


「そりゃだって、他クラスの噂話から抜き打ちテストの情報まで、なんでも取り揃えてるからだろ。スパイかよ、助かってるけどどこから仕入れてくるんだ、その情報」


「俺は顔が広いからな」


「畜生、万年五月病のくせに事実なせいで何も言い返せないのが悔しい……」


 まあ冗談はこのくらいにしておこう。本題はこんなことじゃない。


「で、だ。俺が今日訊きたいのは、美術部の平井鈴花って奴のことだ」


「平井鈴花……? ああ、あの銀髪の後輩か。そいつがどうかしたか?」


「端的に言うよ。あいつに、俺が魔力使用者だってことがばれた」


「ほーん? その情報こそどっから漏れたんだろうな」


「……リアクションが薄いな。何か知ってるのか?」


「んやあ、俺も詳しいことは知らん。ただあいつ、去年の文化祭で見たことがあるな」


「本当か!? どこで何をしていた?」


「落ち着けって。刑事ドラマじゃねえんだから、そこまで細かく覚えちゃいねえよ」


 それもそうだ。窘められて、俺はパンをかじった。これは昨日、スーパーで買い溜めしたやつだ。安かったから。


 俺には弁当を作ってくれるような恋人はいない(悲しくない)ので、昼はいつも、適当にどこかで仕入れたものをそのまま食べている。本当に妬むわけじゃないが、相沢の昼食とはえらい違いだ。


「あー、でも確か、うちの企画に来てたはずだ。先輩と一緒に」


「先輩って言うと?」


「今はもういねえよ、去年の秋、急に辞めちまったからな。そろそろ半年になるか」


 あ、先代のことか。


「まあその先輩のことはいいや。平井について、なんか知ってることはないか?」


「さあ? ってかなんで、平井はお前が魔力使用者だってこと知ってたんだ?」


「あいつ曰く、先代と繋がってるらしい」


「先代って、魔力使用者の?」


「らしい。で……これも秘密にしておいてもらいたいんだけど」


「まあいいけど」


「平井は雪女……つまり異能力者らしいんだ」


「雪女? ……なるほど、それであの警句か」


 流石リア充……ということなのか、とにかくこいつは察しがいい。いや、俺が察しが悪いのか。こいつは俺と平井が異能力者だと知ってすぐに、警句が流れ始めた理由に行き当たったのだから。


「でも待てよ、警句が流れ始めた頃はお前は魔力使用者になったばかりだったはずだ。正直、そんなすぐに、手を出されたら報復できるレベルの能力があったとも思えん。それに平井はまだ入学してきていないし、そもそもお前らは互いが異能力者だと知らなかったはずだ。誰があんな警句を流せたんだ?」


 勘が鋭すぎてひやりとする。正直これは、どこまで話していいのか分からない。多分平井の許可が必要なはずだ。先代が警句を流した張本人だとか、先代は去年消えた先輩だとか、しかもまだ生きているだとか。


「でもまあそっちは良いんだ、脱線したから話を戻そう。訊きたいことはもう一個あるんだよ」


「釈然としねえなあ、おい」


「すまん。でも俺の一存じゃ話せない事情が多い」


「なら仕方ねえけどよ。で、もう一個って?」


「ああ、うちのクラスの御影凛についてなんだけど……」


 思えば、俺はもう少し周囲に注意を払っておくべきだったのかもしれない。仮にも密談だったのだ、警戒しておくに越したことはなかった。


 話に夢中になっていた俺たちは、風の流れが変化していたことに気付かなかった。そして、目も前に現れた人影にも。


「凛先輩が、どうしたんです?」


「「あっ……」」

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