第一話-13
気に食わないやつを、縛り上げる技術──。
つまり、ワイヤー術とか呼ばれるやつだ。物を掴んだり運んだりするのは、銀魔力の基本的な使い方だ。もっとも簡単な使い方で、長くても普通は一ヶ月で習得できるらしい。
俺もこれは、三週間くらいで習得できた。時間がかかったのは、魔法を使うのが初めてだったためで、銀魔力を最初に覚えさせられるのは、魔力の細かい扱いに慣れるため、という理由もあるらしい。
実際俺も、これで魔力の簡単な動かし方を理解できたし、その後の炎の習得は一週間で済んだ。ちなみに先代はどれくらいでできたのか、と梨花に訊いてみたことがあるが、
「知らない方がいいと思いますよ」
と言って教えてはくれなかった。先代が異常なのは「外れ値」という表現が証明しているので、多分相当早かったんだと思う。
俺は、梨花の力を借りて、現在地面以外に何もない空間に立っていた。大天使が持っている、重力、明るさ、大気成分、気温などを自在に設定できるご都合主義の塊みたいな空間だ。
仮想空間と呼ばれるこの場所は、俺は魔法の練習をするために使うことが多かった。万が一事故があっても、誰にも迷惑が掛からない。理想そのものだ。
梨花が複数の魔法陣を展開すると、俺たちの周囲にいくつかの壁が出現した。どうなってんだ、これ。多分銀魔力もまともに扱えない俺が聞いたところで、多分理解できないと思うけど。
「双矢さんの場合、恐らく銀魔力の位置と形状を制御できていないのだと思います。いくつか支点を作ってみましょう。双矢さんが実際に銀魔力を使うのは、どんな場所なんですか?」
「確か、あまり使われていない空き教室の多い廊下と言っていたから……壁と天井に囲まれていて、あまり広くない空間だ」
「では、こんな場所でしょうか」
梨花が魔法陣に変更を加えると、壁が変形し、移動して、学校の廊下のような空間が出来上った。……すげえ。これもう俺要らないんじゃないか? 嘘告の現場に梨花連れて行って、俺がちょっと指示出せばもうそれで片付くんじゃないか? そんなことを思っていると、
「自衛の手段は多いに越したことはありませんよ」
「ナチュラルに俺の思考を読んでくるなよ、察しの良さはいつも助かってるけどさあ」
これである。読心魔法でも習得して使っているんじゃないだろうか。というか、自衛の手段が必要なのか。
「では環境も整ったことですし、練習を始めましょうか」
俺の適性のなさも相まって、目的とシチュエーションを限定したうえで実戦に耐えうるレベルにまで上達するまで、大体一週間かかりましたとさ。めでたしめでたし。
練習はかなり地獄だった。梨花が俺の中に銀魔力を通して力の使い方を教えてくれた、あのなんとも表現しがたい感触は忘れられない。
なんというか、臓腑に熱いものと冷たいものが同時に触れたような気がして、ものすごくぞわぞわしました。あれはやばい、そっちの気がある人なら、多分なんか新しい扉を開けるかもしれない。
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