第七話-4
東京の羽田空港から、沖縄の那覇空港へ。飛行時間自体は約三時間、ただし搭乗手続きやら何やらで、羽田でさらに一時間は使っただろう。乗り遅れないために少し早めに来ていたのでさらにさらに三〇分ほど。着陸する頃にはすっかり昼である。
朝早かったから余計に腹減ったな。天宮先輩に聞いたところでは、細川先輩は機内ではずっと寝てたそうだけど。俺は持ってきた本を読んだり、同じグループの健人や外波山に惚気話を両側から聞かされたり……。だから余計に疲れたのか、さすがに勘弁してくれや。
とにかく腹が減ったので菅野台の全員が空港のゲートをくぐるまで待つ間、鞄に仕込んでおいたビスケットを取り出す。何も入っていないプレーンのやつだけど、結局こういうのが一番美味いんだよな。あと疲労に効く。素手で触るわけにはいかないので個包装のものを。凛が羨ましそうにこちらを見ていたので彼女の口にも一つ押し込んでおく。
凛は驚いたように目をぱちくりさせ、それからもぐもぐとビスケットを食べた。そして一言、
「双矢くん、そういうの平気でできるんだ……」
そういうの、とは? 俺は何か変なことをしただろうか。アレルギーや好き嫌いに問題がないのは文化祭の準備中に確認済みだが。
「違った? お腹空いたのかと思ったけど」
「違ったっていうか、そうじゃなくて……うー」
よく分からないけど怒っているわけではなさそうだ。なぜか少し顔が赤くなっているようにも見えるけど。何だったんだろう。
よく分からないままに大型バスに乗り込み、移動開始。確か一日目と四日目に班別自由行動があったはずだ。一日目の今日の行き先はアメリカンビレッジである。海岸沿いを四〇分程度走るらしい。バスの座席は班ごとにまとまるようになっていて、固まった六座席を班員で適当にシャッフルする制度になっている。俺の隣は凛だ。シャッフルとは?
「まあでもさっきみたいに左右から惚気話聴かされ続ける地獄よりはましか……」
「大変だったんだねえ」
俺が適当な理由を付けて納得していると、凛が笑いながら慰めてくれた。シャッフルされたようでされていないような配席だが、なんだかんだで俺が一番落ち着けるのは凛の隣かもしれない。……なんか語弊があるな、誰に言うわけでもないから良いけど。
飛行機の座席は三人掛けが横に三列あるような形、機内全体を見ると横向きに九人座れる設計だ。なので飛行機では六人班を半分に割って座るようになっていた。俺たちの場合は男三人女三人で別れた。なので飛行機での凛は、小西や宮本と一緒にいたはずだ。
「そっちは飛行機の中でどうしてたんだ?」
と訊いてみると、
「結衣ちゃんがずっと寝てたから、わたしと宮本さんは部活の話したり、趣味の話したり、外波山くんの話聴かされたり」
「結構いろいろ話したんだな」
「電波がないのがちょっと困ったよ。普段読んでる本の話しようとしても、これって表紙見せられないんだもん」
「あー、確かに」
意外と本の題名だけ聴かされても覚えているのは難しい。表紙とセットで覚えると、だいたいこんな感じの見た目、という風に本屋とかネットの電子書籍サービスで探せることがある。飛行機の中は意外と不便だ。
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