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嘘告してきた女の子を助けたら懐かれた話  作者: 春井涼(中口徹)
第一部

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第一話-10

 私の計画に協力してください──。


 その台詞を聴いたとき、俺の脳内に思い浮かんだのは、善良な後輩だと思っていた少女が実は秘密組織のエージェントで、魔力使用者として仮にも常識外の能力を持つ俺を、何か壮大な犯罪計画のピースに組み込もうとしている、という構図だった。


 愕然として冷や汗を流し始めた俺を見て、平井が笑い始める。いつの間にか、周りの音は聞こえなくなっていた。


「先輩、もしかして文芸部ってそういうことばかり考えてる人の集まりなんですか? 全然そんな話じゃありませんって」


「そういうこと、というのが無駄にスケールのでかい妄想って意味なら、まあ間違ってない気もするけど……」


 というか、文芸部に限らず創作なんてやっている人は大体そんなものだろう。妄想なくしてどう物語を作るというのか。じゃなくて。


「先輩、顔赤いですよ」


「うるさい」


 こいつ、なんとかして仕返しできないかな。


「でも話が進まないので、そろそろ真面目な話に戻しましょうか。一人、助けたい人がいるんですよ」


「助けたい人……? 先代の魔力使用者か?」


「ああ、そっちの話はもう忘れて大丈夫です。先輩には関係ないですし、ただ信ぴょう性を確保するためだけに使ったので。まあ、この話が先代に知られたら、私は怒られるでしょうけど……」


「じゃあ、誰を?」


「美術部の、私の先輩なんです。今、面倒な事態に陥ってまして、助けたいので先輩を計画に組み込めたらいいなーと」


 面倒事か……。あんまり関わりたくはないなあ。


「ちなみにそれ、断ったらどうなるんだ?」


「大したことありませんよ? 二度と自宅の布団で眠れないとさえ思ってくれれば大丈夫です」


「脅迫っ!?」


 遠回しに殺すぞって言ってるよねそれ!? 雪女の能力がどれくらいなものか分からない以上、俺に生き残る余地なくない!?


「一応冗談ですけど、先輩が魔力使用者だって情報をばらまいて、ほんのちょっとだけ痛い目に遭ってもらうくらいのことはするでしょうね。多分、不登校に追い込むくらいにはなりますよ」


「高校生にとっては充分致命的じゃないかそれ?」


 怖い。雪女の後輩すごく怖い。もしかしてその脅迫の仕方、先代に教わったの? 『異能力者に手を出すな』なんて警句を流行らせる先代なら、脅迫に一つや二つ、やりかねないと思ってしまう。


「でも事情を聴いたら放っておけなくなるんじゃないか、とは思ってますよ。知った上で断るなら、それは本当に人でなしだと思いますし」


 そんなこと言われたら、もう聞くしかないじゃん。


「それで、その事情って?」


「いじめです」


 お、おう……予想外に重いのが飛び出してきたわ。これは確かに、断ったら人でなし評価待ったなしである。


 しかしいじめか。これ、俺たちでどうにかできることなのか? 先生とかに相談するべき案件じゃないか? 生徒間じゃ、手に余りそうだが。


「もちろん、後で先生には告発します。でも今は、物的証拠がないんですよ。これだと先生たちが動く保証がない。正直な話、打つ手がないんです。だから、ないものは本人たちに作らせます」


「作らせる? 複数人の証言じゃだめなのか?」


「だめです。今のところかなり巧妙に逃げられていて、目撃証言がありません。しらを切られたらそれ以上どうしようもありませんから。だから、第三者を巻き込ませます。その巻き込まれる第三者が、東宮先輩、あなたです」


 ないものは作ればいい、の精神は、クリエイターの基本だ。だがまさか、それが証拠にまで応用されるとは思わなかった。俺は一体、何をさせられるんだろう。


「先輩がするのは難しいことじゃありませんよ。嘘告白を受け、種明かしに出てきた加害者を捕縛する。それだけです」


 つまり銀魔力を使えということか。……俺、それ苦手なんだけど。

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