第一話-9
俺は東宮双矢、地球上に五人しかいない魔力使用者だ。……何を言っているのか分からないと思うので、順を追って説明しよう。
魔力使用者とは、地球上の人間のうち、死ぬまで無制限の魔力を貸与される、無作為に抽出された五人の人物を指す言葉だ。
つまり、魔力使用者が継承される場合、先代の魔力使用者は死亡していることになる。というか、魔力使用者が一人死亡すると次の一人を選出して穴埋めをする。
魔力使用者が存在する理由は不明で、こんな存在は当然公になっていない。魔力を提供してくれるのは大天使と呼ばれる存在で、彼女たちは、魔力使用者一人に対し、必ず一人が付く決まりになっている。
俺の場合は梨花だ。人に見られたとき説明が面倒なので、中国で産まれた身寄りのない従妹が義妹になった、という設定になっている。
魔力使用者は、大天使を介することで魔力を得てそれを使用できる。つまり、魔法が使えるということだ。
その魔法を使ってすることに、自分の欲のために使え、という原則や、生命創造の禁止、などの禁忌を除き、制限はほぼない。何なら世界を手中に収めてもいいとすら言われたくらいだ。収めたところで何にもならないので断ったが。そもそもどうやって?
魔法は万能だが、全能ではない。そして、一つ一つの難易度が非常に高い。俺は魔力使用者になって半年になるが、いまだに炎しか扱えないのだ。初歩の初歩とされている銀魔力──魔力を物質化して自在に変形できるようにするもの──ですら、俺は満足に扱えない。
梨花曰く、俺は魔力使用者平均に比べてもやや適性がない方らしい。ただし、先代を外れ値とした場合だそうだ。
先代を含めて平均を取ると、俺はもう、完全に適正なしの評価を受けることになるという。それどころか、平均を超える魔力使用者が少数派になるとか。……元化学部員らしいけど、先代何者だよ。
そこに、平井の言う先代の話を統合してみる。つまり。先代魔力使用者は菅野台高校の元化学部員で、半年前に死亡……したと見せかけて生きているという。ここが分からない。
先に述べたとおり、魔力使用者は死亡することで次代に引き継がれる。つまり、俺の先代の魔力使用者は、俺が魔力使用者になった時点で死んでいないとおかしいのだ。それなのに、平井は先代が生きているという。
「つまりどういうことだってばよ」
「仕事をしやすくするために、導線を残しておきたかったみたいですよ。まあ、詳しくは言えませんけど」
「でもなんで、平井がそんなこと知ってるんだ? ……もしかして、白原も知ってる?」
「先代魔力使用者とは、千夏も面識はありますよ。私が知ってるのは、その先代魔力使用者と深い関わりがあったからです。千夏に先代魔力使用者のことを訊くのはおすすめしません。止めもしませんけど」
「何者なんだ、その先代は?」
「許可が出てないので、それは言いません。でももう一つだけ教えてあげますよ。『異能力者に手を出すな』の警句は、私と東宮先輩を守るためのものだそうです」
「俺と、平井?」
「私も異能力者に含まれますからね。半年前には、私は菅野台高校を受験することを決めていましたから。なおかつ、私が扱えるのは魔法じゃないので、警句には『異能力』って言葉を使ったんでしょう」
「平井が、異能力者!?」
思わず叫んでしまい、俺たちは周囲の観光客から怪訝な視線を受けた。ごめん平井、でもこれは許してほしい。
「どういうことだ、平井が異能力者って?」
「氷漬けにするって言ったのが答えですよ。私は雪女、後天的に妖力を得た、伝統的な日本妖怪です」
俺の喉が、ひゅうっと変な音を立てた。これは、平井の異能力のせいではないと思いたい。
やはり、この少女は俺よりはるかに強いのではないだろうか。というか、そんなことより。
「君、俺にそんな話をして一体何を企んでいるんだ?」
「簡単な話ですよ」
平井は足を止めると、こちらを振り返って妖しく微笑んだ。
「今代魔力使用者の東宮双矢先輩、私の計画に協力してください」
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