第七話-1 修学旅行はラブコメの定番らしい
中間試験を乗り越えた俺に、シスコンには厳しいイベントが到来近付いてきた。何が悲しゅうて四日も梨花と離れ離れにならなくてはならんというのか……。
修学旅行。
菅野台高校の行き先は、毎年沖縄と決まっている。首都圏からだととんでもない距離だ。凛が天宮先輩から聞いたところによると、朝から空港へ行かなくてはならないそうで、そうなると朝はかなり早く起きなくてはならないという。梨花と会えないのもしんどいけど、早起きもなかなかきつそうだ。
「よう、シスコン。いよいよだな」
「お前……挨拶の仕方がそれか」
夏休みの合宿のときも、一泊二日、梨花と離れ離れだった。あのときも健人には揶揄われたのだが、俺にとっては死活問題である。
「少し違うけど、お前だって小西と四日間離れたくないだろ」
「本当に全然違うな、嫌だけど。その点でいえば俺らって結構いい状況に置かれてるんだよなあ、恋人同士は同じクラスにしない、みたいな話は聞くけど、俺らは去年から付き合ってんのにクラスメイトだし。だから修学旅行も一緒だ」
「しかし羽田まで行くの面倒なんだよなあ、四月の校外学習でも一回行ったけど、三回くらい乗り換えさせられたし」
「あれもしんどいよなあ、俺は二回で済むけど」
何と羨ましい。電車の乗り換えって、二回と三回ではかなり大きな差がある気がする。なんだかわからないけど、三回も乗り換えがあると一気に億劫になるんだよなあ。
そんなこんなで迎えた班別自由行動のグループ編成、行き場がない俺は凛と一緒に健人と小西に拾ってもらった。普段一緒にならないクラスメイトと組んで友達を増やそう、という柄でもない。人数的にはあと二人加えないといけないので、さすがに別のクラスメイトを探さなくてはならなかったけど。
そういえば俺の前の魔力使用者だった細川先輩も、俺たちと同じ菅野台の生徒だ。あの人がいなくなったのは去年の一一月、もうそろそろ一年になるが、まだ一年経ってはいない。彼も修学旅行に参加したのだろう。どんな人だったかは分からないが、班行動ではどう立ち回ったのだろうか。同じ部活だった健人曰く、
「人と群れるような人じゃなかったな。けど人間嫌いでもないから、それなりに上手いことやってたんじゃないか?」
その割には変人部の懇親会で会った記憶がないんだけどな、どうも不思議な人だったらしい。わざわざ公言まではしないものの、魔力使用者なのは隠してなかったみたいだし。俺は面倒だから基本的に隠しているんだけどな、そのあたり気になって、家に帰ってから梨花に訊いてみた。
「細川先輩、魔力使用者なの隠してなかったらしいけど、なんでか知らない?」
すると梨花は少し考えて答えた。
「推測くらいはできますが、あまりあの男の事は考えたくありませんね」
梨花は相変わらず、彼に苦手意識を持っているらしい。何をされたんだ、一体。
梨花の苦手意識を再確認した翌日。
「自由行動の班だけどさ」
「おう」
健人が二人のクラスメイトを連れてきた。
「拾った」
「拾われましたその一」
「拾われましたその二」
「捨て猫か何かですか?」
無論捨て猫ではないのだが、普段二人行動が多く他に行き場がなかったうえ、無害そうだから連れて来てみた、とのこと。無害なら何でもいい。その一が男子で外波山和也、その二が女子で宮本柚葵だそうな。へー、初めて名前知った。ちなみにこいつら、去年くらいから付き合ってるらしい。
「つまり独り身は俺と凛だけじゃねえか。肩身狭いな」
「意外とみんな、誰かと付き合ってるものなんだね」
ってか外波山、身長結構あるな。宮本も女子にしてはそれなりか? そしてこの二人、身長差がそこまで大きくない。聞けば一〇センチメートル差なのだとか。
「あたしたちお揃いなんだよー」
と宮本が言うので何のことかと思えば、外波山曰く、BMIの話らしい。正式名称と何に使う物なのかは分からんけど、体重を身長の二乗で割るあれだよな。いや渋いわ。知らんしそれ多分割と頻繁に増減するやつだろ。でも今ので分かった、こいつら理系だな。じゃあ文系選択なのも俺と凛だけじゃねえかこの班は。
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