第六話-7
翌日、美術部に部誌を取りに行く役目を部長に押し付けられたので、美術室に赴くことになった。白原と一緒に。多分俺一人で充分なのだが、なぜかついてきたのだ。なぜかというか、多分平井に会いに行くんだろうけど。
「ってわけで、回収に来ました」
「来ましたー」
部活時間が始まって割とすぐなので、まだ美術室内に人は少ない。中にいたのは天宮先輩と凛と、えーっと、石渡だっけ? ギャル風の後輩が一人。ちなみになぜ後輩と分かるのかといえば、上履きの学年色で判別できるのだ。顔を覚えていなくても学年だけは見分けがつく。赤青緑と見事に三学年分揃っていることになる。
「乃愛ちゃーん、鈴花はー?」
「なんか教室で先生とやり合ってたよ」
「何をだよ」
「そっか、じゃあ時間かかるかもね」
……平井の奴、何やってんだか。血の気が多いな。まあいいや、俺は俺のすることを済ませておくとしよう。
「えっと、文芸部の取り分はどれくらいだっけ?」
「取り分って。なんかの賭け事みたいだよ、双矢くん」
「でもほら、カジノやってるクラスあったじゃん?」
「何だったんだろうね、あれ。去年もあったけど」
「一昨年もあったよ」
毎年やってんのか。法的に大丈夫なんだろうな。余った部誌の配分は美術部三と文芸部二だったか。……これ、白原一人に任せても良かったのでは? 急ぎで回収したいわけでもないし。
美術部は人がまだ集まる前ということもあってか、活動を開始している様子ではない。天宮先輩はなにか荷物を纏めているみたいだし、凛も読書中。石渡に関しては、机の上に溶けていたところを、白原にちょっかい掛けられてじゃれ合っているような感じ。仲良きことは良きことだ。
「……ん? 天宮先輩、なんか身辺整理してない?」
棚から何かを引っ張り出しては私物を抜き取り、残りを戻し、抜き取った私物を手持ちの鞄に放り込む。あえていうなら身辺整理が近い気がする。
すると凛が本から顔を上げて、
「あれ? うん、みなみ先輩、文化祭終わって引退だから」
「あー、そういえばそんな話してたな。美術部は文化祭後が引退の時期何だっけ」
「そうそう、で、今日は次の部長を決める話し合いの日」
「へえ、文化祭終わったと思ったら忙しいな」
文芸部はどうだったかというと、五月末くらいに三年生がいなくなり、役職持ちを誰にするかの会議が行われた。結果、誰も部長や会計に立候補せず、最終的にはくじ引きで押し付け合う始末。二年生の人数がそもそも少ないので役職を引く確率はかなり高く、実は俺も副部長である。まあ仕事はほぼないんだけどな。
健人たち化学部は代々推薦制らしく、出席率が高いからという理由によって健人が部長に、最も連絡を密に取れる保証があるという理由で小西が副部長になったそうな。聞いた話だと当初は小西を会計に推す声があったが、
「いや待て、相沢が倒れたらその嫁が同時に倒れる可能性があるぞ。リスクは分散すべきだ」
という誰かの発言により、会計は別の誰かが担うことになったとか。すごい変な話があったものだ。言いたいことは分からんでもない。
とりあえず本来の目的である部誌の売れ残りは回収したし、帰ろうかと白原を探すと、まだ石渡と戯れている様子。凛は天宮先輩に呼ばれ、本にボールペンを挟んで席を立った。
……話相手もいないし、俺はさっさと部室に帰るとしよう。
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