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嘘告してきた女の子を助けたら懐かれた話  作者: 春井涼(中口徹)
第二部

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第六話-6

「とりあえず来てみたはいいものの」


 振替休日二日目、俺は現在、珍しく梨花を連れず一人でAtom(あとむ)朝日出に来ていた。全国規模で割とどこにでもある大型ショッピングモールだ。以前凛と行ったアリス朝日出と違い、駅からは近くないものの、東宮家では最も近い場所にある施設だ。学校帰りだと経由地点になるアリスに行くことが多いが、家からだとAtomの方が利用頻度は上がる。


 そして俺は、絶賛困り中だった


「凛の誕生日に何か贈り物しようかと思ったけど、俺くらいの親密度で異性に送って許されるものって何だ? 何だったら嫌がられずに渡せる?」


 異性との交流経験のなさと、事前調査の不足が為せる業だろう。誰かに助けを求めたいような、自分一人で考え抜きたいような。でもそれだと、受け入れられないものを選んでしまった場合に気付けなくて終わるんだよなあ。


 かといって、小西に助けを求めたらからかわれるし、天宮先輩に助けを求めたら絶対からかわれるし、白原に連絡を取ったらその時点で平井に殺されそうだし、梨花は、まあその、あまりこう言っちゃ悪いけどあてにならない気がするというか。母さん? 論外。だめだ相談できる相手がいねえよ。詰んでる。慣れないことはするもんじゃないな。


 何かとっかかりが欲しい。こういうのは先に調べてから出かけるべきだったんだろうなあ、失敗したなあ。誰に相談することもできないし、ネットか何かで調べてから出直すようだろうか。まだ凛の誕生日までは日数あるし、次の週末でも充分間に合う。門限なんてないから学校帰りにアリスに寄り道しても良いんだし。


 じゃあもう今日は一旦帰ろう。ところでそろそろNT(ノベルステラー)文庫の発売日じゃなかったっけ。いつもはアリスのくまねこ書店で買ってるけど、一応Atomにも書店は入ってる。買わないまでも、新刊の棚を覗いて行くくらいは……書店?


 そういえば、凛って休み時間、よく本読んでるよな。俺みたいにラノベ読んでることもあるし、もうちょっと硬派な何かを開いてることもあるけど、読書量自体は結構ありそうだ。下手したら、学校での読書量は俺よりも多いんじゃないだろうか。


 まだ買うわけじゃない、ただ、ちょっと書店を見て行く理由が変わった。


 本の虫が常日頃から求めているものといえば限られてくる。ブックカバーや栞、ブックスタンド、あと現実的でないものまで含めると本棚が物質的なところで挙げられるだろうか。それから物理的でないものを挙げるとすれば本を読む時間も。まあその後ろ二つは俺ではどうしようもないのでさておき、方向性は悪くなさそうだ。


 明日あたり、確か文芸部と美術部から人手を出してする作業があったはずだ。合同で出した部誌のうち、余った数冊をいい具合に分配して引き取らなくてはならない。今は美術部の部室で預かってもらっているはずだし、一人か二人が取りに行けばいいはずだ。残りの冊数も多くないしな。


「って考えると、今することは書店の品揃えを見ておくことくらいか。Atomって何があるんだ? アリスに比べたら、商品は硬派な印象があるけど」


 くまねこ書店はラノベとか漫画とか、そういう趣味向けのもの、イラスト本とかも置いてるくらいで比較的サブカル色が強い。一方でAtomの相武書店は自己啓発本とか新書とか、そういう真面目そうな本が多い。他にこの近所にある本屋だと、ショッピングモールに入ってない職林堂とかだろうか。


 くまねこ書店に行けばラノベとか漫画の新刊はある程度網羅でき、取りこぼすことはほとんどないが、相武書店だと入荷量が種類も数もかなり減る。いずれにせよ、学校帰りに寄ることが多いので、俺はくまねこ書店の常連で、ポイントカードもそっちでしか作っていなかった。だからまあ、買い物をするならくまねこ書店が良い。


 とはいえ、目当てのものがくまねこ書店になかったら、そのときは相武書店とか職林堂で買い物をすることにもなるだろう。誕生日プレゼントを探しているわけだしな、一応、確実に入手できることを優先しようとは思う。


 いずれにせよ、今日は物色だけ。見るもの見たら、解散。

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