第六話-5
「ぷくううう」
ふぐかな? ハリセンボンというには棘々していないので可愛いの範囲で収まっているし、正直怖くもないのだが、どうやら俺は凛に怒られているらしい。
「東宮くん、凛ちゃんが何で怒ってるか分かってる?」
「まあその、さすがに話の流れ的に……」
大方、既に面識あったし二人で出かけた少し後に俺の誕生日が過ぎていて、それに気付かず今になって知ったから、とかそんなところだろう。あれくらいの時期には、確かにある程度仲良くはなってただろうしなあ、一応言いたいことは分かるんだけど。俺も立場が逆なら同じように、とはいかずとも、少々寂しくはあったかもしれない。
「けど待って、言い訳させてほしい」
「やだ」
「やだ、って……あの、普段全く意識しないし自分でも翌日になるまで忘れてるようなことを、一体どうしろと」
「しれっと言い訳したなお前」
「ぷくうううう!」
ふくれっ面の凛も可愛いんだけど、今回ばかりは本当に許してほしい。何しろ家庭環境が家庭環境だから当日中に祝われないなんて東宮家ではざらだし、俺自身、誕生日二日後くらいに何かの書類で生年月日を書いたとき、「あれ、今日何日だっけ? もしかしてもう一七歳なった?」と初めて思ったくらいだ。
自分の誕生日なんてそれくらい意識しないし、正直割とどうでもいいと思っている。一六歳はアルバイトが解禁されるし、一八歳は成人だし、二〇歳は酒煙草が解禁だから、それなりに意識はするだろう。けど年齢が一個進んだ瞬間にそんな自覚が芽生えるものでもないし、今年みたいな奇数歳は、何が変わるわけでもないから本当に気にする価値がない。
そもそも俺以外の人たちだって、LINERの誕生日表示機能を全員切って見えないようにしているんだから、あまりとやかく言わないでもらいたいものだ。人はこれを逆切れと呼ぶ。しかし凛を怒らせてしまったのも事実。ここは素直に両手を挙げておく。
「分かったよ、悪かった」
「むう、来年は絶対するんだからね、お祝い」
可愛いなあ、本当に。これはちょっとからかってみたい気もする。
「文芸部の三年生は五月末でいなくなるから三部活の懇親会には行かないけど、それでもわざわざ祝ってくれるんだ?」
しかし目論見とは裏腹に、
「そうだよ、そう言ってるの」
平気な顔で普通に反撃を喰らってしまった。勘弁してくれ、顔が熱くなるだろ。なんで凛はそういうことを平気で言えるんだ? 俺はいちいち心臓が煩くなるというのに。
天宮先輩がめっちゃにやにやしてる。でも何も言わない。いっそ何か言ってくれれば言い返せもするのだが、
「おい健人、お前も何か言いたいことがあるなら言え」
「お熱いこって」
「やっぱ黙れお前が言うな」
周りの連中は喋らせたらろくなこと言わねえな、どうなってんだ、まったく。
とりあえず明日……いや、明日はさすがに休みたいな、明後日何か買いに行ってみるか。幸いなことに、懐にはそこそこの余裕はあるし。
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