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猫と僕と知らない世界  作者: シマタロウ
第一部3章:猫と準備と裏工作

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1-6:猫と新しい発見 やっぱね、自分の判断が一番当てにならんわけよ

 結論から語ると村上さん家には何も無かった。


 さっきはあったはずの魔力反応も無くなってしまったし、蜘蛛の残骸も溶けて消えてしまった。残っているのは依城さんによる破壊の痕跡だけ。

 何かそれっぽい遺物とか、蜘蛛の親玉とか、そういうソレっぽい何かが欲しかった。これでは罪のないお年寄りのお家を無意味に破壊したようにしか見えない。


「あの、お願い、そろそろ降ろして・・・」


 それはそれとして、ずっとお姫様抱っこスタイルを続けていたら依城さんの元気が無くなってきたような?


「ちょうど人目も無いし、良い機会かなって?」


 と言いながら少し力を入れてギュッと抱えなおしてみる。正直、抱き心地が凄く良い。なんとも言えない心地良さ。


「ほら、調査はクロがやってくれてるし僕達は暇だし、別にいいかなって。たまには、二人でこういのもいいなって」


「・・・そういう事なら・・・もう少しだけ、このままでも」



 顔を赤くし俯く依城さん。それにしても、こうやってると


「ホント普通の可愛い女性にしか見えないね」


 さっきまでガトリングガンをやっていた人には見えないよ。

 ますます僕の胸の前で縮こまる依城さん。

 なんだろう。ぶっちゃけ、とても楽しい。あれだ。なんかもう多幸感さえある。今まで生きてきた中で、こんなに充実した時間を過ごせた事があっただろうか?ひょっとしたら、この時間を過ごすためにこそ、この旅行はあったのかも知れない。これこそ、まさに


「ねぇ、マスター。楽しくいちゃついてるとこ悪いけど、ちょっと不味そうな感じよ」


 家の奥で調査をしてくれていたクロが戻ってきた。尻尾がぶんぶんと振られている・・・何かストレスのかかる事があったみたいに。


「蜘蛛がまた増えたとか?」


 周りをキョロキョロと見渡してみるが、目に入るのはあちこち破壊された、さっきと変わらぬ風景のみ。


「なんかねぇ、村の真ん中の方に小さな魔力反応がたくさん集まってるみたい。たぶん村の人の避難先じゃないかしらね?それとね、どうも一つ一つの反応が少し強くなってるような気がするの。ここで乱獲しちゃったから、対抗するために強化されたとかかなーって」


 なるほど。つまり、考え無しにやり過ぎたかもと。うん、概ね、いつも通りの展開だね。


「んじゃ、さっさと『よりあい会館』だったっけ?そこに向かおうか」


「それがねぇ、あっちの山の方にも何か反応があって。こっちは何か妨害か欺瞞があるみたいで詳しくは分からないけど、多分、大きいのが一つ。ここのおじいちゃんから聞いた話から考えると、そっちがたぶん」


「親玉ってわけだね。そして、小さい方は親玉をどうにかしない限りは無限増殖のパターンかな?」


「たぶん、そうじゃないかしら・・・ありがちだけど。セオリー通り、ここは二手に分かれて同時攻略した方が良さげね。さすがに村の人を放っておくってのも気分悪いし、蜘蛛ぐらいならマスターだけでも問題無いでしょうし」


 仕方ない。名残惜しいが仕方ない。このスタイルのまま、もっと過ごしたかったけど仕方無い。無念。


「依城さん、残念だけど二手に分かれよう。僕は親玉の方に行くから、依城さんは避難場所の安全確保をお願い」


「え?・・・・・・」


 ぼんやりしていたようで話の飲み込みが遅い。

 少し惚けた表情の依城さんと至近距離で見つめ合う・・・なんだか恥ずかしい。


「親玉の方って赤松さんが危ないじゃないですか?!」


 おぉ、いきなりの再起動。びっくりした!


「ほら、僕とクロだと殴る蹴るしか出来ないから防衛戦とか向いてなくて。たぶん、たかが蜘蛛だし、そんなに危険も無いかなって」


「いえ、でも、今までも楽観的に行動するとだいたい酷い事になってますよね?」


 依城先生のおっしゃる通りでございます。


「でも、他に手も無いし」


「島の人には自分達でちょっと頑張ってもらって、その間に二人でやっちゃえばいいんですよ。大丈夫ですって、きっと」


 そうかも知れない。でも


「それもいいかも知れないけど、今回はそこまで危険も無さそうだし、どうにか出来るなら、どうにかしてあげた方がいいかなって。島の人達は普通の人なんだし。ダメ・・・かな?」


 俯いていて表情が読み取れない。心配してくれるのは有難いけど。


「ちょっと降ろしてください」


 真剣な声色だったので大人しく降ろす。もったいない。


「そこまで言うなら分業しましょう。でも一人で手に負えそうに無かったら私を呼んでください。どんな事をしていても絶対にすぐに駆け付けますから。この条件なら私と別れて行っても構いません」


 なんか、いつの間にか過保護になったね、依城さん。気持ちは有難いけど、ちょっと「おかん」って感じがする。


「ありがとう。じゃあ、それで行こう。親玉を片づけたら、すぐに連絡入れるから。じゃ、また後で。依城さんも気を付けて」


 依城さんは少し怒ったような悲しいような、そんな硬い表情をしていたけど


「気を付けて。いつでも呼んでくれていいですから」


 そう言って僕を送り出してくれた。

 彼女をあそこまで過保護な気持ちにさせたのは、今まで僕がしてきた事の結果なわけで・・・・申し訳ございません、ホントごめん。僕にもう少し力があれば、彼女にあんな顔をさせる事は無いのだけど。


 そんな事を考えながらも僕は全速力で蜘蛛が封じられているという山に向かって走る。道中に蜘蛛が出てくる事も無く、実に移動が捗る。本当にいるのかな?その蜘蛛の親玉とかいうのは。村上さんの話だと洞窟があって刀がどうのうこうのって事だから・・・

 目を凝らすと山の中腹辺りに古い鳥居が見える。あそこかな?


『あの鳥居の向こうから魔力を感じるわ。でも、この距離でもはっきりとしない』


 何か陣地的なものでも作ってるのかね?蜘蛛にそんな知恵が?よく分からん。

 とは言え、僕に出来る事はただ殴る事だけ。なら相手に用意をさせる隙も無く先手必勝(今回のテーマ)を目指すのが最もスマート。


 というわけで、何も躊躇する事なく、参道を飛ぶようなスピードで駆け抜け、鳥居の向こう側へと突入した。

 何も障害は無かったが、鳥居を潜った瞬間に何か違和感があった。そう、まるで空気が変わったかのような。

 そして、僕の目の前に広がる光景もまた一変していた。鳥居の向こう側は山の中ではなく、何故か洞窟だった。

 いや洞窟というか大きなドーム状の空間だ。それこそ、この山が丸々入るのでないかというぐらいな広大な大きさの。


『やられた!!空間を捻じ曲げて別のとこに繋げてあったのよ!わたしが感知していたのは鳥居から漏れていた僅かな魔力だけ!』


 つまりは、強敵が居そうな予感って事?ボス部屋みたいな?

 その時、何か大きな物が動く、ゾッとするような気配がした。まるでダムの放水が始まる直前のような、大きな建物が崩れる時のような。

 先ほどまで壁の一面と思っていた部分がバラバラと崩れ出してきた。そこから大きく太い柱のような物が幾本も突き出して来る。そして、その棒の間から壁を割って出てきた物は


「顔かぁ・・・」


『蜘蛛の顔ね・・・』


 そこから出てきたのは、小さな山ぐらいはあるんじゃない?ってサイズの土蜘蛛だった。さっきまで刈ってたのは卵から孵ったばかりの子蜘蛛だったのかな?そりゃ、柔らかいし弱いよね。


 ちなみに携帯は圏外になっていた。

 今回もまた僕が間違っていた。依城さん、ごめんなさい。

 


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