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猫と僕と知らない世界  作者: シマタロウ
第一部3章:猫と準備と裏工作

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1-2:猫と新しい発見 二人の初めての旅行(猫もいるけど)

 僕には決まった武装という物が無い。

 せっかく刃物を上手に使えるわけだし、何か良い得物の一つぐらいはあっても良いかなと思うのだけど。


「いいんじゃない?他のところでも武器をわざわざ探すとかした事は無いし。案外、良い武器を使ったら魔術のノリも良くなるかも知れないし?」


 クロの反応が意外と良かった事もあり、柏木さんが何処からか見つけてきた「怪しい刀剣の調査」に乗らせてもらう事にした。何処からかって言ってみたところで出所は想像がつくんだけど。最近ずっと研究に専念してる柏木さん。その少し前に紹介してあげた四谷さん。そして出所不明の情報・・・柏木さんと四谷さんが何らかの取引を行って、その結果として紹介者である僕にもキックバックで情報が降ってきたって感じかな?そして、現物で無く情報止まりなのは、僕の貢献が少ないから?

 でも、僕個人としては現物よりも「情報」の方が助かったりする。もし今回の対象が役立つ物だった場合「どこにそれがあるか」という情報を持つ事は、僕にとって大きな価値があるのだから。


 もし、この僕が失敗した場合、「物」だけ持っていても次に繋げる事が出来ないのだから。


 というわけで、僕達はその「怪しい刀剣」とやらの調査に赴く事となった。


 目的地は本土から少し離れたところにある小さな島。電車、バス、船(高速船が出ている)の順での移動になるので現地調査の時間を考慮に入れると5日は必要になる計算。ちょっとした旅行、というかバカンスみたいなプランになってしまう。なので・・・いやその日程を見て惹かれたかどうかは分からないけど、参加メンバーは依城さんも加えての3名(僕、クロ、依城さん)となった。


 ちなみに柏木さんは提案者ではあるものの研究がお忙しく1週間も空けられないという事でパス。なんだか知らないけど四谷さんとの出会いでブレイクスルーがあったらしいよ?熱く熱く語ってくれたけど、僕には何が嬉しいのかサッパリ分からなかった。クロ曰く「魔力の物質化の第一歩」らしく、なんだか凄い物らしいけど、僕の目的には直接は関係無さそうなのでスルーという事で。



 そして旅行(出張)当日、午前11時を少し過ぎた頃、船乗り場の待合スペースで僕は依城さんの到着を待っていた。凄く小さな乗り場で、それこそ夜行バスのチケット販売所ぐらいの大きさしか無くて・・・本当に船は出るのかという疑問さえ湧いてくる。

 まぁ、それは置いておくとして、今回の待ち合わせ場所は中途半端なところにするのも面倒なので最終的な合流地点を指定した。僕はなんとなくバスを使ったけど、依城さんの事だから、たぶん・・・


「あっ!あれじゃない?」


 僕の頭の上でクロが立ち上がり声をあげる。絶妙なバランス感覚。・・・実際は魔力で頭頂部に張り付いてるんだけど、これ、僕の頭髪と頭皮って将来的に大丈夫なのかな?


 クロが見ていたのは、チケット売り場の前で止まるタクシー。待合スペースのガラス戸越しに見知った姿のOL風の人が降りてくるのが見える。

 うん、絶対タクシー使うと思ってたんだよね。面倒だものね、バスって。僕は慣れてるけど。

 こちらを見つけ依城さんが小走りでやって来る。


「お久しぶり。元気?だった?」


 前に会ってから一か月ぶりの依城さんは・・・何故か目の下にクマを作り顔色も妙に白っぽい?あれ?寝たら治る系の人だったよね?


「ひ!久しぶりです!お元気でしたか?!」


 そしていきなり緊張の極致っぽい依城さん。なんでさ?声も大きくて上擦っていて謎い。


「先にチケットを買ってきますね!赤松さんもまだですよね!ちょっと待ってて下さい!」


 そう言うとチケットカウンターに向かって走り去って行った。


「相変わらず面白いわね、ナギは」


「そうだね・・・」


 僕もカウンターについて行こうかと思ったけど・・・止めた方が良さそうね。なんかテンパってるし、たぶん僕が行くと酷くなるんだろうし。


 とりあえずチケットを買っている依城さんを少し離れたところからジッと眺める。

 少しあたふたしているがお買い物はちゃんと出来たご様子。良かった良かった。そして依城さんは独り壁の方を向いて深呼吸。それが終わると、ととっと小走りで戻ってくる。


「お待たせしました。すみません。ちょっと緊張しちゃって。へへへ」


 可愛らしい仕草ではあるけど


「あのさ、そんな急に関係性が変わるわけでも無いし、緊張とかしなくても」


 僕がそう言うと頭の上から少し怒った感じの声が響いてきた。


「マスターも少しは変わりなさいよ!平然とし過ぎ!というか自然体過ぎでしょ!!ナギの初々しさを見習いなさい!もっとこう・・・嬉し恥ずかしを見せなさいよ!!」


「えぇ?」


 まさかの飼い猫からのダメ出し。というか、最後のはクロが見たいだけでは?


「・・・そうですよ。せっかくの初めての旅行なんだし、もうちょっと、なんというか、こうドキドキ感みたいなのを出して下さいよ。私なんて昨日から緊張で眠れなかったんですから」


「あら?ナギって、それでそんなにボロボロになってたの?」


 クロの素朴な疑問。聞きにくい事を代わりに言ってくれて助かります。


「すみません。言い過ぎました。ほぼ徹夜だったのは本当ですけど、後輩にちょっといびられてて」


「「後輩に??」」


「・・・そんなとこだけ揃うんですね」


 依城さんの恨みがましい目。悪いけどちょっと面白い。なんだか自然と笑顔になってしまう。


「依城さんが誰かの不平を言うなんて珍しいね。厳しい人なの?その後輩って」


 というか、先輩が後輩にいびられてるの?逆では??


「厳しいというか、部から来た人なんでキッチリしているというか。しかも教えて貰う事が多くて頭が上がらないというか・・・書類のダメだしとかも多くて」


「なるほど!提出物がまずかったのね!ナギってそういうの苦手そうだし!!」


 ぐぬぬ的表情の依城さん。

 出来ないものを強制されるのは辛いものね。分かるよ。僕も報告書は猫に頼ってるからね。というか今回の報告書は柏木さんがいないからクロだけが頼りになるわけか・・・少し不安かも。


「まぁ、せっかくの旅行だし難しい事は一旦置いといてさ、しばらくはゆっくりしようよ。

 時間もたっぷりあるし、泊るところも現地の人がやってる民宿だし、きっとご飯も美味しいよ、海鮮とかさ?・・・詳しくは分からないけど、3人で鍋とか出来たら楽しいよね、きっと」


 ちなみに詳細は本当によく分からない。柏木印の情報を元に電話で現地に問い合わせたところ、営業している民宿が一軒しか無かったので細かい事は何も確認せずに決めてしまうしか無かったのだ。ホームページも何もないし電話番号も公開してない『島民の紹介があった人しか泊まれない』という超レア民宿だそうだ。実体としては普通の民家なんだろうね、たぶん。


「へぇ、民宿ですか、それは楽しみですね。でもよく二人分も部屋ありましたね。島の外から来る人なんて滅多にいないと思ったんですけど」


「ん?一部屋しか無かったけど2回目だし別にいいかなって」


「あ!マスター船が来たわよ!思ってたより小さいわね!」


 そんな話をしていると高速船とやらが到着した。何というか思いのほか普通の船、そしてクロが言うように10人も乗れなさそうなミニサイズ。でも、船に乗るなんて初めてだし結構楽しみだったり。


 この時の僕はまさに旅行気分、楽しい予感で頭が一杯だった。

 でも結論から言えば、楽しい旅行気分は、ここから半日程度しか続く事は無かった。


 わざわざ協会に持ち込まれた「怪しい刀剣の調査」しかも僕が使えるような霊装候補の話。そんなのが普通の旅行で終わるはずなんて最初から無かったんだ、よく考えると。


「え?!一部屋って、アレですか?!そういう事ですか?!ちょっと!いきなり!さらっと言われても心の準備とか?!」


 もちろん、我らが最大戦力の依城さんも、この時は順調に惚けていた。

 


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