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猫と僕と知らない世界  作者: シマタロウ
第一部2章:猫と魔術師のお仕事

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エピローグ2 いたよ!ここにも浮かれてる人が!!

 私は朝から反省していました。ただの反省じゃありません。大反省です。

 振り返ってみれば、昨日の赤松さんへの態度・・・マジでありえない。あれはいけない。自分で言うのもなんですが、調子に乗り過ぎてたし、浮かれ過ぎでした。

 恥ずかしいやら情けないやらで目覚めて速攻で自省モード開始。ベッドの上で頭を抱えて悶えるばかり。


「あぁぁぁぁぁぁ・・・・あぁぁ・・・」


 自分の発言が頭の中でリフレインする。『要は健やかなる時も病める時もってやつですよね』酷すぎる。あまりに酷すぎる。『ねぇ、赤松さん、私の事を好きなんですか?』なに調子に乗ってくれてるの。あたまが沸いているのではないでしょうか・・・


 一体あの時の自分は何を考えていたのか。まぁ、何も考えて無かったんですけど。


 赤松さんからすると、どういう風に見えたでしょう?「この女なんでこんな痛い事になってるの?」とか思われていないでしょうか?大丈夫だとは思いますが・・・思いますが・・・自分で振り返ってもウザいぐらいだから、あれは相当・・・

 しかも一旦帰るって話になった時も、なんかゴネちゃいましたし。別れ際も馬鹿みたいにお土産持たせたり・・・ヤバイ・・・これはヤバイ・・・


「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 何やってんだ、私は。中学生ぐらいならいいけど・・・もう立派な大人なのに。


 ・・・・・・

 ・・・


 あれですね。悶えようが恥ずかしかろうが、やっちまった事は仕方ありません。それに一応仕事もあるし、いつまでもウダウダしているわけにもいきませんし。


 でも、こうして振り返ってみると課長が赤松さんを一旦家に帰らせてくれたのは正解だった。たぶん舞い上がった私が訳の分からない失敗をする前に一旦冷却しておこうって事だったのでしょう。流石、課長。私の事を私よりも理解している。・・・ホント助かった。ありがとう課長。ナイスだ課長。




 そして、なんとか頑張って定刻に出勤。寝起きに時間のロスがありましたが気合と根性で間に合わせました。が、なんと珍しい事に課長が来ていません。別に私も急いで来なくて良かったですかね?

 警備室から鍵を受け取り事務所を開けた。凄く久しぶり。そして、よく考えると特にする事も無いのでコーラを買ってきて、いきなりのブレイクタイム。


 まぁ、暇なのでとりあえず事務所の片付けを始めてみましょうかね。昨日のゴミも残ってるし、ちょっと埃っぽいし。事務作業は出来なくても、掃除とか片付けならなんとか。それにしても、久しぶりのコーラは炭酸がキツイキツイ。体を動かすとゲップが出ること出ること。こんな姿もまた彼には見せられないような


 ふと視線を上げると、いつの間にか課長が来ていました。

 ・・・・・・

 ・・・


「よぉ、最近の奴は気にしないのかも知れないが、あんまり上品じゃねぇなぁ」


 ・・・人生って難しいですね。


 とりあえずゴミだけ捨ててきて自席に座る。別に課長が来たからと言ってやる事が生まれるわけではないですが、そこは気分です。


「そう言えば課長が私より遅く来るなんて珍しいですね?」


「あぁ、昨日な、なんだか嬉しくて久しぶりに深酒をしてな」


 しみじみとした表情で課長が語る。いまいち、その気持ちが分からないですが、とりあえずフムフムと頷きながら残り少なくなったコーラを飲んでいく。


「なぁ、依城・・・式はいつにするんだ?」


「!!!!グフッ!!・・・・・ゴホッゴホッ」


 コーラを吹き出すところでした!!

 いたよ!ここにも浮かれてる人が!!しかも本人でも無いのにまだ浮かれっぱなし!


「おい、大丈夫か・・・というか何やってるんだお前」


「いえ、ちょっとビックリして。そんないきなり籍を入れようとか、急に話が進展してるわけでも無くてですね」


「そうか、そんなものなのか・・・すまん。俺の早合点だったか。あれだ、その時は言ってくれ。準備ならいくらでも手伝う」


 あれですね。なんだか娘に初めての彼氏が出来たようなノリですね。ありがたいような、むず痒いような。


「・・・ん?そういや赤松って戸籍あるのか?」


「そう言えば・・・ちょっと怪しいですね」


 そうだった。浮かれて忘れていたけど、赤松さんは真面な生まれでは無いわけで。あの暗い地下室で生きていた人のわけで。昨日の自分の無神経さがやっと自覚出来ました。


「すまん。考え無しだった。・・・俺の方で対処しておくから心配するな」


 大丈夫です。気にしてません。私もいま気付いたところなので。それにしても課長がやけに優しい。何故でしょうか?・・・聞いちゃいますか


「ねぇ、課長。最近なんで私にそんなに優しいんですか?」


「そうか?俺は普段と変わらないつもりなんだが。いつも優しいだろ?俺」


 そうでしょうか?そうだったような、一概にそうでも無かったような?昔はよく怒られてたような気がしますよ?

「そうだな、初めてお前と会ってから、もう10年近く、ずっとお前の事を見てきたが、正直、結婚もしてない、子供もいない、そんな俺からしたら、どうやって接したら良いのか分からない事もあってな。

 育った環境もあるし、まぁ、事情も色々とあるが・・・お前が友人も作れず俺としか世間との接点が無いってのを、ずっと不憫だと思っててな。魔術師としての生き方という意味では、それほど特殊とは言えないのかも知れないが。

 でもな、お前にも一緒にいたい奴が見つかったのを知って。それが・・・思いのほか・・・嬉しくてな・・・・・・」


 不意に言葉が途切れたので課長の方を見てみると、声を押し殺して涙ぐんでいました。


「すまない。みっともないとこを見せちまって。年を取ると涙もろくてダメだな。本当に」


「いえ、ありがとうございます」


 今まであまり意識していませんでしたが、課長にとって私は家族のようなものだったのでしょう。そして、きっと私にとっても。


「ねぇ、課長。それはそれとして明日から休みとってもいいですか?」


「・・・・・・気持ちは分かるが仕事もしてくれ。せめてお前がやらかした分の報告書ぐらいは仕上げてから休みに入れ。あとずっと気になってたんだが、なんで『課長』なんだ?そもそも『課』なんて無いのに」


「特に意味は無いですよ。何となくです」


「・・・そうか」


 騒がしかった日々も終わり静かな事務所が戻ってきました。退屈ですけど・・・しばらくはそれも良いかも知れません。

 


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