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猫と僕と知らない世界  作者: シマタロウ
第一部2章:猫と魔術師のお仕事

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6-7:猫と僕と彼女の気持ち なんだかとても懐かしいような

 取り調べ?ヒアリング?は、お昼前に一旦終了となった。というのも課長さんが別のお仕事で席を外す事になったからだ。

 もちろん柏木さんが代打をしてくれてもいいのだが・・・なんというか午前中だけで疲れたので終了ムード。ぶっちゃけ、そんなに話す事も無いのよね。逃げ隠れてた事情は柏木さんが先に言ってくれてるし、「何をしてたか?」って聞かれたところで、ほとんど病院のベッドの上だったんだし、そもそも何も覚えていないし。


 ちなみに入院時の様子だけど「どうして生きているのか分からない。医者も驚き」という感じらしいので詳しく聞くのは止めた。だって怖いもん。いま治ってるし、それでいいじゃん。良いって事にしようよ。

 そんなわけで午前のうちからダラダラタイム。

 久しぶりに起動したスマホゲーでデイリーボーナスを多量に貰い損ねている事に気づき、日にちの経過を実感する。というか、真面に社会人してないから、それしか気付かせてくれるものが無かった。まぁ、別にいいのだけど、特に急ぐことも無かったはずだし。でも、なんか引っかかるような、思い出せないような、そんな感じ。気にかかるけど、何も思いつかなくて時間だけが過ぎて行く。


「もうお昼っすねぇ、外に食べにいきましょうか?なんか食べたいもんあるっす?」


 何時の間にやらお昼時だった。ふむ、普通なら退院したばかりという事を考え軽めにするところだけど・・・幸い体は健康そのもの、そしてここは肉料理屋がたくさんある秋葉原。


「大きいハンバーガーが食べてみたいな」


 ほら、意外と行く機会ないじゃん、本格的なハンバーガー屋さんって。


「了解っす。ちょっとググってから行くっす」


 ハンバーガーを求めて街に繰り出す男二人(クロは関心を失って頭の上で寝たまま)


 結局はビルを出てすぐのところにあったので、そこにしたけど、あんまりお肉の味がしなくていまいち。野菜もたくさん入って大きくて見た目はゴージャスだったのだけど、素材の味を楽しむって感じ?野菜もしっかり味わえて、まぁ、つまりは味が薄かった。


 肉を・・・肉を食べたい。濃く味付された肉を、もっと。


 あれ?これ、ひょっとしたら貧血か何かの症状が出て、体が無意識に肉を求めているとか、そんな話かも?いや分からんけど。普段は鶏肉以外はあんまり食べたいとも思わないし。そんなわけで、二人してちょっと微妙な感想を抱きながら事務所に帰ってきた。


 というか、元々支部長しかいなかったからさ、いま誰もいないのよ、ここ。支部って言うのも違和感あるから事務所って表現してるけど、そもそも事務もしてないよねぇ!みたいな。

 なんなんでしょうなぁ。仕事無いのかねぇ・・・その割には僕よく働いてたよね?挙句の果てに爆殺されかけたし。・・・よく分からん。なんだろ、ここ。


「さぁ、今から何したらいいんっすかねぇ。依城さんが帰ってくるまでマジで暇っすよ。遊んでるだけってのも気が引けますし、装備の見直し案とか作ってみるっすか?」


「装備かぁ、服は新しいのあるしねぇ。あぁ、そうだ。前に作ってもらったスタンロッド。あれがさぁ、経緯は覚えてないんだけどベキベキになってて。あれを作り直して欲しいのと・・・」


 なんだろう。何かが引っかかる。欲しかったものが・・・あったような、無かったような?

 頭の上でクロが起きた。モソモソしてる。

 とりあえず、右手をあげてクロを触る。モショモショしているだけで楽しい。


 そうだ・・・

 確か、あの時・・・


「ナイフが欲しいな。魔力をのせても壊れない。飛び切り丈夫なナイフが。たぶん、今の僕なら使えるはず」


 なんとなく、そんな気がする。


「ナイフっすかぁ。でも赤松さんが魔力を乗せても耐えられる物ってなると、ちょっと見当が付かないっすね。後で支部長にも相談するっすよ。ひょっとしたら押収品で良い物が眠ってたりするかも知れないっすから」


 押収品?それは使って良い物なの?あれじゃない?呪いのナイフとか、そんなんじゃないの??

 そして、その後も柏木さんと二人で装備についての話し合い?雑談?は続いた。

 結局、一番話題に上ったのは毎度おなじみ真っ黒のライダースーツというかツナギみたいな全身スーツ。僕は覚えてないけど前のモデルは爆発に耐えられなくて派手に破損してしまったらしい。

 その反省から『魔力消費は増えたものの服自体が強化魔術を自動で展開する馬鹿みたいに防御力の高い物』に作り替えてくれたそうな。ただ欠点として、稼働時は魔力が垂れ流しになってしまう事、そしてその負荷を埋めるために例の白い犬から取れた魔力結晶を外部燃料として利用している事、の2点が残ったままらしい。

 特に後者は今後燃料補給が出来ないので致命傷。・・・というか材料が材料だから、流石に常用するのは如何な物か?という話らしい。


「しかし、結局あの薬はなんだったんっすかね。人が白くなったと思ったら、最終的には犬になって、そして死ぬと中から結晶が取れる。意味不明っすよ。何がしたいのやら」


 柏木さんが頭を抱えている。やはり同じ魔術師として、他の魔術師がしている事は気になるものなのだろうか?ちなみに、僕は全然気にならない。たぶん、クロもまた寝てるぐらいだから全然気にしてない。

 やったね。多数決により柏木さんが繊細なだけと決定!まぁ、僕は考えても分からんだけなのだけど。


 その時、事務所の扉が開いた。開いた、というかドカンと音を立て開け放たれた。

 姿を見なくても気配で分かる。依城さんだ。


「お疲れさまー」


 気軽に社会人っぽい挨拶をしてみる。最近こういうのしてなかったから、ちょっと楽しい。


「お、お疲れ様です・・・」


 なぜかちょっとモジモジした感じで依城さんが入ってきた。


「お、お久しぶりです・・・あの、その・・・体の調子はどうですか?」


 ちょっと目線を伏せながら、何故かやけに小声。なんだろう。緊張してる?


「うん、お陰様で元気だよ。御飯もちゃんと食べれたし・・・あれ?依城さん、今日はちょっと雰囲気が違うね?」


「分かりますか!!!」


 おぉ、今度は勢い込んでなんじゃ?クロも飛び起きちゃったよ!


「せっかくですので、もっとよく見てくださいよ!!」


 さっきまでの緊張っぷりはなんだったのか、一転して今度はテンションが高い。そして、高いテンションのまま自分の姿を見せつけるようにモデル立ち・・・いや、違う。これ、カトキ立ちだ!

 なんでさ?しかも、照れがあるのか顔がちょっと赤いし。

 でも、こうやってアピールされると確かに分かる。今日の依城さんは一味違う。


「なんだか髪が艶々してる」


「んふふふ」


 笑いを堪えながら毛先をちょいちょいと触る依城さん。


「おぉ、毛先が綺麗に整ってるし・・・ちょっと内側にクルって」


「ふふふふふふふふふふ」


 笑いが堪えられない感じで妙な声が漏れている。分かってきた。気合を入れておめかししたから誉めて欲しいんだ!なら・・・


「なんだか肌も瑞々しいし、今日は服もいつもよりパリッとしてるよね。凄く着こなしてるって感じがする」


「ふへへへ」


 だらしなく笑いながら手をこちらに伸ばす依城さん。なんだろ?指先をこちらに見えるように・・・


「おぉ、凄い。爪まできれいに。ピカピカだし、形も凄く綺麗に整っている!」


 そして次は足?というか靴をこちらにグッと差し出すように

 ・・・やべぇ。これ分からねぇ。どう見ても歩きやすそうな革靴っぽい運動靴にしか見えねぇ。

 くそ?!正直にいくしか無いのか?!


「いい靴だね。走ったり跳んだりしても足を痛めなさそう」


「そうでしょー。さっきたまたま見つけて買ったばっかりなんですよー」


 よし当たった!ナイス!!我ながらナイス!!


「久しぶりに会うんだから頑張らないとって言われたんでやってみたんです。こんなに褒めてもらえるなんて、お世辞でも嬉しいです。こういうの初めてで」


「いつもよりずっと綺麗と思うよ、お世辞とかじゃなく」


 依城さんは、その場にしゃがみこんで顔を膝に埋めた。

 クロは目をまん丸にして驚いている。

 柏木さんは「俺は関係ないっす」みたいな表情をしながらスマホを弄っている。

 なんだ、この状況。


「・・・そんなとこにしゃがんでないで依城さんも椅子に」


 そう話かけると


「もう、ホントに!もう!!」


 奇声を発しながら顔を赤くしてバシバシと僕の肩を叩く。


「あーもう、本当にこの人は・・・」


 今度は僕たちに背を向けて独り言。

 ・・・・・・

 ・・・・

 ・・

 そしてクルリと振り向いて赤い顔をしたまま


「あれですね!こんな辛気臭いとこにいるのもなんですし!みんなでケーキでも食べに行きましょう!美味しいとこ知ってるんです!!」


「へ?聞き取り調査とかは?」


「いいんですよ、そんなの!明日しましょう、明日!明日頑張ればいいんですよ!!」


 そう言って依城さんは僕の手を引いて歩き出す。

 なんでだろう。こんな事、初めてのはずだけど、とても懐かしいような。


「さぁ、柏木さんもクロちゃんも行きますよ!」


 彼女はとても楽しそうに笑っていた。

 


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