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猫と僕と知らない世界  作者: シマタロウ
第一部2章:猫と魔術師のお仕事

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6-6:猫と僕と彼女の気持ち お疲れ様でした。また来世でお会いしましょう

 私は素直に関心していました。まだ続きがある事に。


 赤黒くドロドロに蕩けた工場跡地。そこから大きな魔力反応が立ち上がる。


 いやはや何の抵抗も無い歯ごたえの無い人達ばかりかと思いましたが、いるじゃないですか根性ある人が。にしても、どうやって生き残ったのでしょう?よっぽど強力な障壁か何かを、それこそ事前に仕込んでないと生き残れないと思うんですけど。


 自分で言うのもなんですが、閉じ込め用結界の展開から爆破まで1分も無い素晴らしく速やかな爆殺だったので、普通の魔術師が対応するのは無理なんですよね。下手を打てば私でも危ないかも知れないのに・・・というか障壁を張ったところで高温の空気で肺やら他の臓器がもたないから、どっちみち生き残るのは無理な気がしますね。


 まぁ、一旦それは置いときましょうか。生き残れたなら逃亡か反撃か、何か動きがあるはずですし。

 さて、今日の私は慎重に動きますよ。今までは相手が格下だと思って油断するってパターンで追い込まれてますからね、二回も。そういうのは止めです。もう油断も慢心もしません。これからの私は独りでも大丈夫。だって、私は強いんですから。強くないとダメなんですから。

 自身の魔力を周囲に厚く展開し『盾』として使えるように待機させる。そして、出し惜しみする事なく、最初から朱天を呼び出す。

 先ほど大きいのをぶっ放したばかり。どうせ長時間の戦闘に耐えられないなら、最初から全力で行った方がいい。それに向こうさんもノーダメージって事は無いでしょうし。


 準備が出来たので屋上の端っこから目視で魔力反応があったところを確認してみる。

 相変わらずの蕩けたコンクリートや燃えている何かや謎の煙。つまり、超見え難いです。一応、強化魔術を使ってはいますが・・・やっぱりよく分からないですね。いえ、よく見ると何か動いているものが・・・


「とりあえず、これで行きますか」


 盾に回していた魔力の一部を切り離し、細長い棒状に加工する。一旦、頭の横あたりまで浮かせ、狙いをつけ魔力で加速して射出。

 特に誘導もしていない普通の投擲。でも、速度が半端ではない。当たらなくても牽制ぐらいにはなるでしょ、たぶん。


 直撃したかどうかは分からないけど、着弾地点で交通事故が起きた時のような激しい衝突音が響き渡った。


 高温で周囲が蕩けているから粉塵が舞ってしまう事は無いけど、そもそもの視界が悪いから成果を知る事が出来ない。

 今までの私なら、ここで不用意に近づいて確認を行ったはず。だが、心を入れ替えた私は一味違う。

 成果が分からないなら、もっと一杯投げればいいじゃない!

 同じように魔力で出来た黒い槍をとりあえず3本用意する。そしてタイミングと場所を微妙にずらしながら投擲していく。


 立て続けに衝突音が響き渡った。


 じっと観察してみるが・・・どうなんでしょう?変化が無いような、あるような?


 流石に観測をしてくれる人ぐらい誰か連れてきた方が良かったかも知れません。

 さて、どうしましょ。遠隔攻撃ばかりしていても埒があきません。終わったのか終わってないのか。やり過ぎたのか、それとも足りないのか。・・・さっきより魔力が弱まった気もするのですけど・・・場の魔力も結構乱れているので詳しくは分かりません。これ、囮を置いて逃げてたら堪りませんね。

 深い考えは無いですが、取りあえず打てる手を打ちましょう。


「朱天、行け」


 私の横で無駄に魔力を消費してるだけの朱天を現場に差し向ける。朱天なら熱も平気だし、不意打ちされても問題無いし、観測手兼強襲部隊として使ってしまうのが最適ですよねね?


 あれ?でもここ屋上だし、朱天はどうやって下に降りるのだろう?


 指示を出したものの、ふと疑問に思い眺めていると普通に屋上の縁を飛び越えて下に落下。着地時に凄い音を響かせたものの、特に気にせず目標がいるであろう焼け落ちた工場跡に走って行きました。

 着地地点のアスファルトがバキバキですね。まぁ、いいですか。保険とかおりるでしょ、たぶん。あんま保険の仕組みとか知らないですけど。


 それはともかく、朱天は先ほどまで私が槍を投げ込んでいた方向へと一目散に走って行きました。やっぱり誰か、あるいは何かいるんですかね?

 朱天は強いし便利なんだけど意思疎通が出来ないんですよね。こっちの指示には従うんですけど。今はドローンとかもありますし、そういうのを使える人に手伝ってもらった方がいいんでしょうか?


 というわけで、私は普通に階段を使って下まで降りる事にします。頑張れば飛び降りても平気ですけど、わざわざやる意味は無いですからね。・・・なんとなく赤松さんは飛び降りそうな雰囲気がありますね、クロちゃんと一緒に「ひゃっはー」とか言いながら。


 そして、建物から出た私の耳に飛び込んで来るのは剣戟の音。おぉ、やっぱり何かいたらしい。

 念のため、盾がいつでも展開出来るかを確認してから現場に向けて走り出す。

 近づいて行くと熱が酷い事が分かった。後先考えずに爆発させたせいだけど・・・よくこの中で生きてましたね。私なんてただ走るだけでも完全密閉型の障壁が無いと無理なのに。というか、障壁の中に閉じ込めた適温の空気が無くなったら死んじゃいますね。肺が焼けちゃいますもの。・・・これ、速攻が必要ですね。


 剣戟の音がいよいよ近づいてくる。


 そこに居たのは朱天と切り合う白っぽい素肌を晒した『人』でした。

 なんとビックリ!『人』です。今までのお薬を使った人とは違い、人っぽい姿ではなく、もちろん犬でもなく、完全な人型です。

 しかも大きな日本刀で朱天と切り合っています。ガツンガツンと鎬を削っています。どんなパワーなんでしょうか?!

 この世には赤松さんみたいな戦い方をする人って結構いるものなのでしょうか?正直『オンリーワンかな?』とすら思っていましたが。


 にしても、片や黒い鎧の鬼っぽい何者か、片や白っぽいけど人の形をした何者か・・・どう見ても朱天が悪者ですね。見た目・・・どうにかした方がいいのかも。まぁ、白い肌のムキムキのおじさんがデカい日本刀を振り回している姿(しかも全裸)も正義の味方に見えるわけじゃないので、どっちもどっちかも知れませんけど。

 それはそれとして


「術式展開」


 念のため盾を具現化し身を守る。結界が破けるだけでも死んじゃいますので早めの展開です。

 続いて、更に魔力を回し、盾の周りに50センチ程の短い「棘」を生やす。

 彼我の距離は20メートル程度。この程度なら強化された視力をもってすれば肉眼でも狙えるし、外れてフレンドリーファイアしたところで朱天だからどうって事ないし。


 というわけで発射。

 一本ずつではなく数本ずつ束ねてタイミングと場所をずらしながらドンドンと射出していく。

 あまり命中率は高く無いですが、当たる度に白い人の動きが悪くなっていく。全裸ですしね、いくら肌が硬いと言っても防御力は大した事ないですよねと。


 考えなく連射していた棘がいいところに入ったのでしょう。白い人が膝をつきました。

 すかさず朱天が大ぶりの一撃を振り下ろす。

 文字通りの袈裟斬り。斜めに体がお別れになりました。

 白い人、終了のお知らせ。最後はあっけないものですね。


 とは言え・・・

 大きめの「棘」、いや、これはもはや何時ぞやの電柱のようなものか、を作成し、生き別れた下半身にぶつけて粉砕する。もし繋げる方法とかあったら危ないですからね。これで機動力は消滅です。

 そして、私は上半身に向かって話しかける。


「あなたが赤松さんを亡き者にしようとした件の主犯でよろしいですか?」


 一応の確認です。はっきりすれば、少しすっきりしますから。わざわざ、これを確認するためだけに朱天に強化魔術を使わないで手加減したたわけで。

 ちょっと返事を待ってみます。

 返事は返って来ませんでしたが・・・なんだかよく分からない不可視の衝撃波的な物が、盾の黒い魔力に自動迎撃されて散っていった。元気ですねぇ。下半分もう無いのに。


「もう一回、聞きますよ。赤松さんを殺そうとしたのはあなたですか?」


 ・・・・・・

 ・・・

 沈黙が落ちる。もうやっちゃいますかね?暑いし息苦しいし、半分とは言え全裸で見苦しいし。


「・・・あぁ、そうだ。俺が指示した。だがな、俺には共犯者がいる。お前は知っているのか?・・・なぁ、なんなら教えてやってもいい。俺とお前が組めば」


 凄い!体が半分になっても勧誘しようとしている!!なんてガッツ溢れる人なんでしょう!?でもね


「知ってますよ。四谷さんでしょう?」


 そう言いながら展開したままだった2本目の電柱擬きを投擲し頭をぶち抜いた。

 聞きたい事は聞けたので十分です。お疲れ様でした。また来世でお会いしましょう。


「四谷さん。もういいですよ」


 そう言うと少し離れたところから四谷さんが恐々とした足取りで出て来ました。


「・・・あなた、本当に凄いわね」


 なんだかげっそりとした表情。なんででしょう?暑いから?


「はぁ、これぐらいは大した事ないですよ。四谷さんも何かする事があるのでしょう?早めに済ませて撤収しましょうよ。そろそろ消防も来ちゃうでしょうし」


 彼女は少し驚いた顔をしながらも、いそいそと白い人の残骸に向け歩いて行った。いつぞやの犬と同じくガラス質、まるで生き物とは思えない質感に変わってしまっている残骸に。

 少しだけ哀れな気がしますね、ほんの少しだけですけど。


「熱ッ!!」


 なんだが分からないけど、四谷さんは残骸の胸の辺りに工具のようなものを突っ込んでゴリゴリ作業をしています。流石に手伝ってはあげませんよ、今だって見逃してあげてるんですから。

 しばらくして彼女は胸の中から何か青っぽい石の塊を取り出しました。凄く嬉しそうです。彼女の目的は、結局のところ、その石だったのでしょうか?


「さて、四谷さんの用事も終わったし撤収しましょうか」


 白い人の残骸を朱天に踏み砕かせた。コンクリートでも潰したような妙な音。


「・・・ええ、そうね。帰りましょう」


 四谷さんが少し怯えたような態度です。私、彼女に対しては普通に接してましたよ?なんで?

 でも、今はそんな些細な事に気を取られている場合ではありませんね。


「んじゃ、サクサク帰りましょうか。今日はね、赤松さんが退院してくるんです。せっかくこっちにいるんだし何か美味しいものでも食べに行こうかなって」


「ねぇ、まさかと思うけど、その恰好のまま行く気じゃないでしょうね?」


「いえいえ、汗もかきましたし、流石にお風呂に入るし服も着替えますよ。そもそも、こんな戦闘用霊装のまま行くわけないじゃないですか」


「それならいいのだけど・・・あれでしょ。事実上、久しぶりの再会なんでしょ?今日はちょっと気合を入れるぐらいで丁度いいんじゃない?」


 そうなのかな?

 久しぶりだからこそ、いつも通りって・・・あれ?ダメ?この発想??え?どうせ気付いてないでしょうし、気軽な感じで?え??ダメ???


「そうね、今日のお礼もあるし、片付けが終わったら後でもう一度会いましょう。少し時間を貰えれば、私があなたに教えてあげられる事もあると思うわよ、色々と」


 初めてあった時の四谷さんの姿が目に浮かぶ。・・・ムカつきますが・・・正直ムカつきますが


「よろしくお願いします」


 そして朱天を消し、私達は現場から立ち去った(後始末は課長にお任せです)

 


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