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猫と僕と知らない世界  作者: シマタロウ
第一部3章:猫と準備と裏工作

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3-2:猫と修行パート 協力体制が出来ました(想定より早く)

「ううっ・・・・そんな・・・ううううっ」


 男泣きである。柏木さんの男泣きである。

 いやね、僕はただ今まで僕がやってきた事と、いま行き詰っている内容を簡単に説明しただけなのよ?なんでこんな事になってんの??


「赤松さんがそんな思いをしてるなんて、俺知らなかったっす!俺に出来る事があるなら何でもするっす!!そんな・・・ほんと・・・あんたすげぇっすよ!!」


 なんかあれだ。一人で盛り上がり過ぎてて、おじさん少し付いていけないわ。


「少し時間を置いた方がいいんじゃない?」


 頭の上からクロの呆れた声が聞こえてきた。


「そだね」


 とりあえず持ってきたサンドイッチを食べる用意を進める。ちゃんとした食器とか無いだろうなと思って紙皿の用意はもちろん、飲み物もペットボトルで用意済み。ぬかりは無くってよ。

 用意と言っても、やった事は袋から出してテーブルに並べただけなので一瞬で終わった。


 柏木さんは未だに感極まっている。支部長も結構泣いてたし、意外と世間の人ってよく泣いたりするものなのかな?


 暇なので先にクロにカニカマを食べさせる。もちろん、クロの好きなほぼカニ。そういや工場見学、まだ行ってないね。限定カニカマとか売ってたりするのかな?

 そしてクロがカニカマを食べ終わり、良い気分で毛繕いを楽しんでいる時、やっと柏木さんが再起動した。


「すまんっす。取り乱したっす。それで」


「長くなりそうだし先にお昼御飯食べようよ。たくさん買ってきたし」


 とりあえず難しい話は一旦置いておいて二人して「うめぇうめぇ」と言いながらサンドイッチを貪り食う。と言うか、マジで美味かった。なんじゃ、こりゃ?なんか食べた事ない物が一杯入ってるし、単純にマヨネーズべったりみたいなのじゃなくて・・・・なんだろう、これは・・・そうだクリームチーズだ!何かで薄くのばしたクリームチーズをソースみたいに使ってメインの具材であるサーモンの味を引き立ててるんだ!!いまいち分からんけど!!たぶん、そんな感じ!


「あら、ほんと美味しいわね」


 いつの間にか頭から降りてクロも食べていた。それにしても、リアクション控えめ・・・あれ?僕がおかしいの??


「いや、マジすげぇ美味いっすね!サンドイッチがここまで美味いなんか知らなかったっすよ!こんな美味い物、ラーメン以外で初めて食べたっす!!」


 おぉ、ちょっと言ってる事が怪しい感じもするけど、そうよね!美味しいよね!!凄く美味しいよね!!!

 そんなわけで、ものの数分で昼ご飯終了。依城さんがいないと、こうなるのか。くっそ速い、速すぎる。別に悪い事では無いけど、あれね、食事の楽しみが少なかった気がしないでもないね。それはそれとして、次は、お茶を飲んで一服。


「さぁ、本題に入るっすよ」


 一服の隙間は無かったらしい。


「一体、何が問題なんっすか?話せる内容だけでいいんで頼むっす」


 まぁ、しゃーなしか。相談に来た僕が引き延ばしても仕方ないし。


「んじゃ、まず僕から概要を。起こる事の詳細はまだ話せないけど、最終的に僕がしようとしている事って二段階に分かれていてね。まず一段階目は依城さんの魂の分割。必要な分とそれ以外を切り分ける。そして、二段階目が要らない方の排除。ここは今までの積み重ねでたぶん何とかなると思う。

 で、この二つは既に他のところの『僕』が成功してるんだ。手法も複数ある。でも結果はどの手法を使っても失敗。原因は分からないけど依城さんは助からない。まるで全ての結末がそこに収束しているかのように。それでクロが考えたのが」


「世界の復元力が邪魔してるんじゃないかって仮説ね。元々一つになっていた物を二つに切り分けるわけだから、消された方に帳尻を合わされて一緒に消えちゃうんじゃないかなって」


 どうだろう?流れとしては、こんな感じなのだけど。

 柏木さんは難しい顔をしている。凄く凄く難しそうな顔をしている。


「前提の確認なんっすけど、赤松さんって魂の分割とか出来ちゃうんっすか?」


「ん?・・・あぁ、依城さん専用の術式だよ。詳細は全然分からないし、調整も出来ないけど、とりあえず使える事は使える」


「それもう『魔法』なんじゃ」


 僕には魔術と魔法の区別もいまいち付かないけど、クロならその辺りの事も


「そうね。たぶん魔法の域に入ってるわね。なんてたって、わたしにとっても完全にブラックボックスなんだもの。たぶん『術式を作ったマスター本人』しか理解してないわよ。わたし達が出来るのも記録された術式をなぞって発動する事だけだもの」


 クロも分からないんだ。凄い『僕』もいたもんだねぇ。


「ねぇ、クロちゃん、術式による分割が不完全って事は無いのかな?」


「たぶん、それは無いと思うわよ。もちろん確信は無いけど、そんな分かり易い不具合があったら何処かの時点で修正されてるはずだもの」


「なるほど・・・・」


 柏木さんは難しい顔のまま黙り込んだ。そして、既に僕の出番は終わってしまった感じ。これ以上は突っ込まれても何も分からないもの。


 その時、柏木さんがふと顔を上げた。目が合う。なんだか納得したような雰囲気。


「そうか!だから世界を塗り替えるって・・・世界からの復元力が働かないように、閉じた世界の中で作業を行ってしまえば!」


 とりあえず、自信ありげに頷いておく。ごめん。僕、本当は詳細よく分かってないんだ。


「でも、それは・・・・あまりに・・・・・ちょっと師匠に相談してみていいっすか?」


「おぉ、柏木さん、師匠とかいたんだ」


 知らなかった。というか、ここでまさかの新しい登場人物!人脈が広がるねぇ。


「あっ、いや、四谷さんっすよ。ちょっと前から付き合いがあって色々教えて貰ってるうちに、なんかこういう感じに」


 広がらなかったねぇ、人脈。


「それだったら支部長さんにも話をしたら?スマホでグループ通話みたいなの出来るでしょ?」


 机の上へと移動したクロからの提案。でも


「そりゃ、出来るけど」


 いいの?魔術っぽさとか神秘っぽさが一気に消えるけど、それでいいの?


 若干の僕の戸惑いをよそに予定の調整はサクサクと進み、遠隔地二人を加えての方針決定会議が始まった。四谷さんと支部長の「初めまして」みたいな挨拶も無く、柏木さんがスラスラと話を始める。そう、概要説明と議題の解説は柏木さんから。僕とクロじゃ、話が長くなるわ、分かり難いわで語り部としてイマイチだから。仕方ないよね、だって脳筋と猫だもの。・・・最近思うけど、ぶっちゃけ依城さんも僕達と似たようなタイプだよね?なんとなく聡明なイメージがあったけど、実際にはそうでもないような?


『話は分かったが・・・部分的とはいえ世界そのものを塗り替えるような術式はあまりに難度が高すぎる。他の可能性は無いのか?』


 説明が終わると同時に支部長からのダメ出し。


『極端な話、何か認識阻害の結界とかじゃダメなのか?』


 ダメ出しからの代替案の提案。実に素敵。


『阻害系じゃ難しいと思うわ。誰の何を阻害したらいいのか分からないのだし。あっ、私、柏木の師匠をやらせてもらってる四谷です。よろしく』


『これはご丁寧に。こちらこそ、よろしくお願いします。極東支部の支部長をやらせてもらってる磐田と申します。またよろしければ協会への登録の方もよろしくお願いしますよ』


『・・・あ、それは、ちょっと事情があって』


『えぇ、出来たらで構いません、出来たらで』


 この二人はあんまり接触させない方がいいかもね。どうせ四谷さんは色々やらかしてるんだろうし。叩いたら埃がわんさか出て来るだろうし。


『登録の話は置いておいて、あの例の蜘蛛の結界、あれなら可能性あるんじゃないの?』


 なんで四谷さんが蜘蛛の話を知ってるんだ?あれかな?刀の解析を手伝ってくれたのかな?


「あぁ、あれっすか・・・調べてみないと分からないっすけど」


『ちょっと私にも一回詳しく見せてみなさいよ。あとアンタが言ってた例の魔術の虎の巻、それも合わせて見せて頂戴。代わりの術式ぐらいなら何か思いつくかも知れないから』


「・・・・師匠・・・一応、俺の虎の子なんっすけど・・・いや、そりゃいいんっすけどね」


 可哀想。問答無用で研究成果を奪われる弟子。でも僕には得しか無さそうなので黙っとく。


『赤松さん、全面的に協力しますけど、魂をコントロールする術式、その発動の場面ぐらいは見せて下さいよ』


 そんな四谷さんへの返答は僕では無く元気いっぱいのクロから。


「ええ、勿論いいわよ!どうせわたしも分からないし好きに見て頂戴な!!」


『そう、ありがとうね』


 四谷さんも普通にクロに返事しちゃうし。当事者である僕の意思は・・・


『で、柏木よ、俺達は何処に集まればいい?そっちに向かえばいいのか?』


 支部長もやる気が凄い。まさに娘のために頑張る義父って感じ。


「刀を研ぎ直せる職人が東北にしかいないんで・・・後工程も考えると、そっちで集まらせてもらってもいいっすか?」


『分かった。場所は用意しておく。四谷さんもそれでいいか?』


『ええ構わないわ。明日には合流できると思うから』


 なんかサクサク・スルスルと話が決まっていく。


『赤松はそっちで依城と合流してから、こっちに来てくれ。俺達は俺達でやれる事を先にやっておく』


「あっ、はい。了解です」


 なんかよく分からないうちに僕の予定も決まったぞ?


「良かったわね、マスター」


「・・・うん、そうだね」


 皆が依城さんのために動いてくれる。確かに今はそれだけで十分に嬉しかった。

 


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