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猫と僕と知らない世界  作者: シマタロウ
第一部3章:猫と準備と裏工作

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3-1:猫と修行パート まずはマスターのお友達に相談してみましょう!

「そりゃ、無理っすよ」


「よねー。わたしも流石に無謀かなーって薄々思ってはいたんだけど」


 マスターのお友達の柏木さんに相談してみたけど回答は速攻かつシンプル。何を相談したかって?マスターが「世界を部分的に塗り替えるような結界術」を使えるかどうかよ。

 まぁ、箸にも棒にもかからないって感じよね、分かってはいたけど。魔術師の奥義みたいな術式がそんな簡単にどうにかなるわけ無いわよね、やっぱり。




 時間は少しさかのぼって、その日の早朝、何日かぶりにマスターに呼び出された場所は自宅の和室だった。


「お久しぶりマスター。楽しかった?」


 3日程ほっとかれたような気がするけど?そんな事で怒るわたしではないのよ?


「ごめん。楽しくて・・・つい後回しにしてたと言うか、なんと言うか」


 なんだか知らないけどマスターも反省しているし怒ったりはしない・・・怒ってないわよ?


「いいのよ、マスターの事情も分かるし。ところでナギは?」


「なんか急ぎの仕事があるからって、一人で行っちゃったよ。今回は珍しく九州での仕事らしいから途中まで一緒に帰ってきて、そのまま現地に向かったよ。でも明後日には一旦ここに戻って来るから」

 あら?変ね。なんだか少し話が噛み合わない?


「わたしがオフってる間に何処かに行ってたの?」


「うん、東京に・・・4日ほど」


 少しバツが悪そうに応えるマスター。ちょっと放置されてた期間が想定より長いわね。別にいいのだけど・・・いいのだけど・・・やっぱり、ちょっとムカつくわね。意識せず尻尾でテーブルをタシンタシンと叩いていたぐらいには。


 まぁ・・・いいわ。いいとしましょう。


 気を取り直して、マスターが遊び惚けていた間に、わたしが考えていた事を共有する。今までとは違うアプローチ、単純な戦力増強以外の方法が必要であり、恐らくは新しい魔術の開発が必要になるであろう事を。


「なるほど。いつもありがとう。でも開発じゃなくて運用の方に軸足を置いてしまった今の僕じゃもう無理だよね。正直、何の事だか想像も付かないし。とりあえず柏木さんに相談しようか」


「話が速くて助かるわ、マスター」


 わたしがそう言うのを聞き届ける前にマスターは電話をかけていた。あのお友達って柏木さんって言うのね。これからのキーマンになりそうだから、ちゃんと覚えておかないと。


 ・・・直接事態に関係ない「マスターの友人」なら少々情報を与えた程度で何かが起こる可能性も低いはず。リスクばかりに目を向けていても仕方が無いし、やれる事は何でもやっておきたいところね。


「待ってるから来てくれってさ。あと、ついでに昼ご飯を買ってきて欲しいって」


 マスターが速攻で電話を終え、もう家を出る準備を始めている。Gパン履いて上着羽織って財布を持つだけなんだけど。


「なんかついさっきまで刀の仕上げをしてたらしくてさ。ずっとご飯食べて無くてお腹減ってるんだって」


 あまり興味が持てない類の個人情報ね。


 そんなわけで、早速のお出かけ。わりとご近所さんなので散歩ぐらいの感覚で行ける距離だったり。わたしはもちろん定位置であるマスターの頭の上。数日ぶりの外だから歩いてるだけでも楽しい感じ。


 もちろん、お昼ご飯もちゃんと買って来たわよ、近所のホテルのパンコーナーでやけに豪華なサンドイッチを。なんだか最近パン好きだものね、マスターって。


 そして少し電車に乗って島の外へ。JRに乗り換えて一駅だけ東に進んで徒歩数分でもう到着。柏木さん家もマスター家と同じく普通のファミリー向けマンションね。ここも協会が紹介したのかしら?


「柏木さーん、ランチの宅配に来ましたよー」


 マスターが一階エントランスでインターホンに呼びかける。


『はーい、ありがとうっす。上がってきて下さいっす』


 ・・・そう言えば、「っす」って耳に付くしゃべり方をする人がいるなって思ってたけど、それが柏木さんだったのね。やっと分かったわ。



「ちょっと散らかってるっすけど」


 彼の部屋は色々な物で溢れてグチャグチャだった。脱ぎ散らかしたままの服、ゴミが入ったビニール袋、何かの実験に使ったであろう試薬の瓶・・・って、そんなの部屋の中に置いてたら危ないじゃないの?!・・・降りるの怖いから、しばらくマスターの頭の上から話させてもらいましょう。


「ねぇ、柏木さん、マスターの事でちょっと相談があるのよ」



 そして話は冒頭に戻る。速攻であり得なさを思い出させてもらっただけなんだけど。


「ところで、どうして、そんなマニアックな結界術なんかを使いたいんっすか?確かに凄い術式っすけど、仮に実現出来たところで、ぶっちゃけ、そんなに良いもんじゃないっすよ。持続時間も凄く短いし、その割にコストは重いし」


「細かいところは、ちょっと言いにくいのだけど・・・あれなのよ、なんとか世界の復元力から逃れる方法は無いのかなと思って」


「は?!何を言って・・・・あー、あれっすか依城さんが前に言ってたやつ・・・意味不明なレベルで大事になってるんっすね。流石っす」


 頭の回転が速くて素敵ね。何が流石なのかは分からないけど、話が滅茶苦茶スムーズに運べるから賢い人ってわりと好きよ。ちなみに、話に入ってこないマスターだけど左手の薬指につけた指輪をぼんやりと眺めている。・・・ナギがやってるなら可愛げもあるけど、筋肉質な成人男性がやってると、残念だけど、ちょっとアレね。


「んでね、ナギが言ってた事の中身なんだけどね」


「ちょっと待ってクロ。まず僕が話すよ」


 あら?やる気が出てきたのね、マスター。


「ちょっと行き詰まっててさ、力を貸して欲しいんだ。結局のところ目的は一つだけなんだけど・・・どうしてもさ、死なせたくない人がいるんだ」


 マスターは指輪を撫でながら、そう言った。

 


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