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猫と僕と知らない世界  作者: シマタロウ
第一部3章:猫と準備と裏工作

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幕間3:考える黒猫

 わたしの名前はクロ。ちょっと考えの足りないマスターに代わって色々な仕込みを担当している可愛い猫型使い魔。


 好物はカニカマで、特にほぼカニ。嗜好なんかは他の『場所』からの影響を受けないはずなんだけど、何故だかわたしの特徴の一つになっている。つまり、何処のわたしもカニカマ好き。結構、謎。


 そして、そんな感じに素敵なわたしは、今、大きな悩みに直面していたりする。


 もちろん「大きな」って付いている事からも分かるように、趣味嗜好や御飯の話ではなく、わたしの存在意義方面の悩みの話だったりする。


 マスターの記憶制御が緩まると同時、わたしの理解も色々と深まったのだけれど・・・これ結構詰んでる状況かなって。ほぼ無限と言えるほどに可能性を拡張したものの「求める答えが無かった」という絶望感。

 そりゃ、マスターもちょっとおかしくなって当然。でも、マスターはいいわよね、ナギに慰めて貰えるんだから。わたしも誰かに慰めて欲しいんだけど?

 ・・・・・・

 ・・・

 まぁ、そんな戯言は置いておいて、思考を進める必要があるわけ。ありとあらゆるマスターの可能性を試しても実現出来ないという事は、これはもう「世界のあるべき形」と「ナギが失われる事」が何処かで引っ付いてしまっている可能性が高いのかなって。何を試しても過程はどうあれ『同じ結果に着地する』って事は、『世界の復元力』的な物が邪魔してるんでしょ、たぶん。


 ひょっとしたら、無限に続く並行世界の中で『無限に失敗を続けているマスターとわたし』の存在が世界の形を歪めている可能性もあるのかもしれない・・・とは言え、そんなの無数の並行世界を俯瞰出来るような化け物でも連れて来ないと証明出来ないし、証明出来たところで何も解決には繋がらないしで意味は無いのだけど。


 そんなわけで、目指すべき方向が迷子になってるってのが今の状況。今までは「問題を排除するための手段構築」を目標と捉え、時間をかけて魔術や魔法の用意をし、肉体の作り替えも行ってきたのだけど、さて、これからどうしましょうか、みたいな。


 そうそう並行世界からの情報共有体制を構築する前の『元々のマスター』って典型的な魔術師タイプの白くてひょろい感じの人だったらしいのよ。それなのに必要に駆られたとはいえ、今のマスターって知性とかを投げ捨てて体力全振りよ。

 もし昔のマスターが今の脳筋な姿を見る事があったら、たぶん驚くんじゃないのかしらね?思えば遠くに来たものだ、みたいな?

 わたしは脳筋タイプのマスターしか知らないし、それにひょろいマスターの可能性はもう消えてしまっているのだから、今更の話なんだけど、ちょっと面白いかなって。


 で、それはそれとして、目標の立て方、つまり「問題の排除」って方向性はダメで・・・いえ違うわね・・・その方向性だけでは不十分で「問題排除の手段に加え、世界からの修正に抗う手段も用意する必要がある」という事が分かったのだけど


 追加条件が重すぎて眩暈がしそう。


 でも、これをクリアしないと何をやったところで全てを台無しにされてしてしまうと。だから成功したマスターの情報はどこの並行世界にも無いと。世界からの干渉を断つ方法が無いと勝ち目も無いと。


 ・・・実は似たような発想である「世界への干渉を制御する」という試みならマスターも行っていたりする。何を隠そう、それがわたし。目的は並行世界からの情報の持ち込みが「こちらの世界」に影響しないようにする事。「世界から切り離された場所に一旦情報を格納する」という無茶な管理を行う事で実現していたりする。


 ちなみに、この手法には「わたし」という存在の特異性が利用されている。他の世界にも存在しているほぼ同一の存在とネットワークを構築する事で「閉じた情報の輪」を実現し、世界を誤魔化しているわけだけど・・・まぁ、正攻法ではなく、なんか世界の仕様のスキをついているようなイメージなのよね、これ。


 世界の復元力に対抗すると言えば、魔術師の到達点であり異端の象徴でもある『手法』がある事はある・・・自分の内面世界で「世界の有り様」を塗り替える必殺技みたいなものなのだけど、残念な事に実現方法が見事にノーヒント。使い手も見つかるわけないし、使い方も分からないしで・・・真っ当な魔術師をやっていた頃のマスターでさえ諦めるんじゃないかしらね、この方向は。そんな魔術師の奥義みたいなのを脳筋路線に転向したマスターが一年以内に実現するとか、どう考えたって不可能だし。


 それに「世界を部分的に塗り替える方法」が実現したところで、それがあれば世界の復元力に勝てるかどうかなんて正直分からない。そう、それこそ観測してみないと分からない。賭けるのはナギの命とマスターの人生。成功したら万々歳。失敗したら・・・その手法の問題点を分析し、解決策を他の並行世界に伝えて、わたし達は糧になる。どこかのマスターとナギが幸せに過ごせる事を夢見て糧になる。

 ・・・・・・

 ・・・

 正直、分が悪いとは思う。でも、これ以外に今のところ、検討出来るような方法を思いつけない。

 ・・・・・・

 ・・・

 そうね。支部長とあの・・・マスターのお友達に相談してみると何かヒントが貰えるかも知れないわね。安易な期待だとは思うけど、少しでも可能性が見つかる事を祈らずにはいられない気分ね。


 ちなみに、珍しくずっと一人で考え込んでるのは、マスターとナギのデートを邪魔しないように外部出力を止めてマスターの頭の中に引っ込んでるからだったり。

 丁度考える時間も必要だったし?わたしも二人の邪魔ばっかりしてて悪いかな?って思ってたし?別にこういうのも、たまには必要かなって思うのよ?


 でもね、もう丸3日も呼び出してくれないのは流石にどうかと思うのよね?

 一人で出来る事に限界はあるし・・・ちょっと寂しくなってきたし・・・そろそろ、わたしの事も思い出して欲しいなぁって・・・


 可愛い猫ちゃんいますよー。

 


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