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二七歳の男が無敵のシスコン兄から溺愛される妹に転生した異世界物語  作者: key@holder
第一章 第一部 レミリス王国編 ~死の森~
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第3話 これからの事

 食事を終え、わずかな静寂が訪れる。


 結界の内側だけが、かろうじて安息の空間として保たれていた。


 俺とレインは顔を見合わせ、この先の行動について話し合うことにした。


 この広大な死の森を、当てもなく彷徨う。


 そんな選択が、どれほど愚かかは解りきっている。運よく出口に辿り着ける保証など、どこにもない。


 魔法で空を飛ぶことも、一応は可能だ。


 だが――それもまた、愚策に近い。


 この森の空は、地上以上に危険だ。


 なぜなら、そこには魔物の最上位種――ドラゴンが棲んでいる。


 中でも黒竜、白竜、赤竜、青竜といった種は、人と同等の知能を持つとされる存在だ。単なる力任せの怪物ではない。空を行く者など、格好の標的にされるだけだろう。


 だからこそ――慎重に、確実に、生き残る道を選ばなければならない。


 となれば。


 まずは、経験豊富なレインの考えを訊くべきだ。


 探索者として数々の死地を潜り抜けてきた男だ。この状況にも、何かしらの活路を見出しているはず。


「お兄ちゃん、これからどうするの?」


 そう問いかけると、レインはわずかに視線を巡らせ、静かに口を開いた。


「そうだな……まずは、死の森にあるダンジョンを探す」


 ――やはり、そこか。


 即座に意図を理解する。


「ダンジョン……ってことは、中にある転移魔法陣を使うの?」


「ああ」


 レインは頷いた。


「ダンジョンには、一〇階層ごとに必ず転移魔法陣がある。それを使えば、俺たちの村まで戻れるはずだ」


 理にかなっている。


 確かに、ダンジョンの転移魔法陣なら、サイダールへ帰還することは可能だろう。


 だが――


「うん、その案には私も賛成。でも……」


「でも、何だ?」


「この死の森の中で、そのダンジョンがどこにあるのか……判るの?」


 これが最大の問題だ。


 ただでさえ危険な森の中を、あるかどうかも判らない目標に向かって彷徨うなど、無謀にも程がある。


 だが。


「ああ、それなら問題ない」


 あまりにもあっさりと、レインは言った。


 え?


 一瞬、耳を疑う。


 レインは立ち上がると、迷いなく一方向を指差した。


「こっちだ。少し距離はあるが、問題はない」


 その声音には、一切の迷いがなかった。


 まるで、そこにあると“見えている”かのように。


 ……なんだこいつ。


 本気で規格外だな。


「お兄ちゃんって、凄いね。ダンジョンの場所まで判るの?」


 素直な感嘆が口をついて出る。


 するとレインは、わずかに肩をすくめて答えた。


「ダンジョンには、特有の波動がある。それを感知できるだけだ。さすがに距離が離れすぎると無理だが……どうやら今回は運が良かったらしい」


 さらりと言ってのけるが、それを“だけ”で済ませるのはどうなんだ。


 とはいえ――


 その言葉に、胸の奥で張り詰めていたものが少しだけ緩む。


 どうやら、俺たちは最悪の状況の中でも、まだ運に見放されてはいないらしい。


「お兄ちゃんが一緒で、本当に良かった」


 思わず、そんな言葉が零れる。


 レインは一瞬きょとんとしたあと、柔らかく微笑んだ。


「当然だろう。フェリスには、いつでもどこでも俺がついている」


 いや、それはちょっと問題発言では?


 一瞬ツッコミが頭をよぎるが、口には出さない。


 何だかんだで、その言葉に安心している自分がいるのも事実だからだ。


「うん……ありがとう、お兄ちゃん」


 素直に礼を返すと、レインは満足げに頷いた。


「それじゃあ、行くぞ。ダンジョンへ」


 そう言って、こちらへ手を差し出す。


 大きく、温かな手。


 迷うことなく、それを掴む。


「うん」


 しっかりと握り返すと、レインは軽く頷いた。


 こうして俺たちは、再び歩き出す。


 死の森の奥深く――


 脱出の鍵となるダンジョンを目指して。


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