表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二七歳の男が無敵のシスコン兄から溺愛される妹に転生した異世界物語  作者: key@holder
第一章 第一部 レミリス王国編 ~死の森~
2/119

第2話 嘘と真実

「ご馳走様でした」


 小さく手を合わせてそう告げると、腹の奥に残る満足感がじんわりと広がった。


「もう、いいのか?」


 隣に座るレインが、少し意外そうに眉を上げる。


「うん。もうお腹いっぱい」


 本音を言えば、もう少し食べたかった。だが――あの肉はあまりにも美味すぎたのだ。このまま勢いに任せていれば、確実に食べ過ぎていた。


「そうか……」


 レインは短く頷くと、ふと視線を落とした。


 その視線は、一瞬だけ――俺の胸元あたりに留まり、すぐに逸らされる。


 ……ん?


 今の、なんだ?


 どこか言い淀むような空気を感じて、首をかしげる。


「お兄ちゃん、どうしたの?」


「ああ……いや……」


 歯切れの悪い返事。


 しかも、目を合わせようとしない。


 明らかに様子がおかしい。


「何? 気になることがあるなら、ちゃんと言ってほしいな」


 少し身を乗り出して問いかけると、レインは困ったように視線を彷徨わせた。


 ……珍しい。


 レインが、ここまで言いづらそうにするなんて。


 俺に対して、何か遠慮でもしているのか?


 なら――


 少しだけ、背中を押してやるか。


「私、お兄ちゃんなら何を言われても大丈夫だよ。だから……ちゃんと訊かせて?」


 そう言って微笑むと、レインはしばし黙り込み――やがて、小さく息を吐いた。


「……そうか。なら、言うぞ」


 観念したように顔を上げる。


 その視線が、再びこちらへ――いや、正確には胸元へと向けられた。


 そして――


「フェリスは、もう少し……食べた方がいいと思う。俺から見ても、少し痩せすぎだ。そのままだと――胸も大きくならないぞ」


 ――は?


 一瞬、思考が止まる。


 いや、ちょっと待て。


 確かに俺は華奢だ。自覚もある。食事も気をつけている。


 だが、問題はそこじゃない。


 そこじゃないだろ!!


 心の中で、全力のツッコミが炸裂する。


 こっちはな、毎日鏡を見て、この可愛らしい姿に満足してんだよ!


 それに、太らないように必死に食事制限してるんだよ!


 本当はな――腹いっぱい、好きなだけ食べたいに決まってんだろうが!


 解ってんのか、この筋肉バカ!!


「はぁ……はぁ……」


「ど、どうしたフェリス!?」


 気づけば、呼吸が荒くなっていた。


 しまった。内心で暴れすぎた。


「あ……な、何でもないよ」


 慌てて取り繕う。


「本当に大丈夫なのか?」


「うん、全然平気」


 怪訝そうな視線を受けつつも、なんとか平静を装う。


 するとレインは、少し不安げに眉を寄せた。


「もしかして……俺は、フェリスを怒らせてしまったか?」


 ――おお、よく気づいたな。


 心の中で拍手を送りたくなる。


 だが、それを表に出すわけにはいかない。


「ううん、怒ってないよ」


 にこり、と笑みを作る。


「お兄ちゃんが、私のことを思って言ってくれたのは解ってるから」


 ――本当によく解ったよ。


 お前、巨乳好きなんだな。


 ちなみに俺は、慎ましい方が好みだ。残念だったな。


「でもね」


 少しだけ声を落とす。


「私の体、あまりたくさん食べられないの」


「……そうなのか?」


「うん。だから、ごめんね。今まで通りの量じゃないと、ちょっと厳しいかな」


 そう言うと、レインはしばらく黙り――やがて、ゆっくりと頷いた。


「……解った。俺の方こそ、余計なことを言ったな。もう、フェリスの体について口出しはしない」


「うん。ありがとう、お兄ちゃん」


 素直に礼を言いながら、内心で強く念を押す。


 そうだぞ! これ以上、俺の体についてとやかく言うんじゃねえ!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ