第4話『夢1』
「アル! このまま、スピードアップ!」
『任せろ』
アルと呼ばれたお父様のドラゴンは、俺たちの領地の端の方にスピードアップしながら向かっていく。
……うーん……。上空の温度って、すごい寒いはずなんだけどな……
「お父様! お空って、寒いんじゃないの?」
「……ああ、本当はとっても寒いよ。だが、今は魔法を使っているから、暖かいんだ」
「魔法……?」
あれか? お兄様達が使ってた、厨二心満載の唱えてたアレか?
確か……覚醒とか言ったっけ。
「ああ、ダリィは魔法のことは知らないのか。魔法とは、魔力と属性の2つを持って、現象を起こす一つの手段だ」
属性と魔力ねぇ……いいこと聞いたな。
魔力を持ってる人は少ないとか、そんな感じかな?
「魔力は、普通の個体ならほとんどの生物が持ち合わせている……が、最大の魔力の量には個人差がある。魔力というのは魔法を使うためのエネルギーだと考えると分かりやすいな」
なるほど、多分魔力は回復するっぽいな。最大まで溜まったら魔力が回復することはないとかか。
「あとは、属性だな。属性とは、現象を起こすのに必要な力……だな。例えば、お前の一番上の兄さんの相棒であるインフェルノ・ダークネス。
あれは炎の力を極限まで高められた、属性龍と呼ばれる竜の一種だ」
なるほど、だから地獄か。
……黒属性とかはないみたいだな。
「こいつも、属性を持っているんだぞ?」
そう言ってお父様は、俺たちを乗せて飛ぶ竜を、ポンポンと叩く。
「アルフレッド、通称アル。
土属性の、属性龍の中でも特に強い力を持つ竜だ。あとは、結界魔法の名手でもある。こいつの結界魔法と、ナリアさんの風魔法がないと、俺たちは簡単に凍え死んじまうんだ」
「へぇ〜……そうなんだ! ナリアさんってすごいんだね!」
俺がさりげなくナリアさんを褒めると、ナリアさんは若干ドヤ顔で、もっと褒めて欲しそうな顔をする。
ナリアさんってこんな人だっけ?
なんてことを少し考えたが、思考を強制シャットダウンして、お父様との会話を続ける。
「お父様は魔法使えないの?」
「いや、俺はアルを使役しているだろう? これは、竜魔法といって、竜を従えたり、召喚したりできる魔法なんだ。竜魔法を使うには、竜属性が必要なんだ」
「普通の人は竜属性持ってないの?」
「良い質問だ! 竜属性は俺たちの一族だけが持っている特異属性で、国の大きな戦力になるから、俺たちは貴族として好待遇を受けているんだぞ? その分、苦労も多いがな」
そうか、家がやけにデカいと思ったら、貴族だったのか。
今、ガハハと笑っているこんなお父様が書類仕事に追われてるのは見たことがないが……秘書は何人か見たことがあるから、きっとその人たちに任せてるんだろうな。
……お兄様たちはキチンとやってくれていることを祈ろう。
少し考えていると、なんだか眠くなってきた。
家に着くのも少し先になりそうだし……一眠りするか。
そう決めると、意識はあっという間に消えてしまった。
◇◆◇◆◇
「竜爪技・覚醒『インフェルノクロー』」
そう唱え、俺は紅く染まった竜鱗に包まれた竜人の手のひらを、魔神に向ける。
「溜まったか!?」
「あとちょっと!」
俺は、後衛で一撃を溜め込んでいるパーティメンバーの1人に答えを聞くと、最後の力を振り絞り、捨て身の身体強化を行う。それに合わせ、仲間の何人かも俺に合わせて攻撃を強める。
「俺に流れる竜の血よ……目醒めろ! 終戦『レーヴァテイン』」
「全てを貫く、勝利への槍! いまここに! 終戦『グングニル』」
「人々を殺せし、死の冬よ、我の力と化せ! 終戦『フィンブルヴェト』」
「神を飲み込みし、神狼よ! 正義の名のもとに! 終戦『フェンリル』」
「「いっけぇェェエエエエエ!!!」」
各自の最高の一撃は魔神に当たり、魔神は大きく後ずさり、隙を作る。
「今だ! 回復される前に殺るんだ!」
「了解! 急速チャージ完了!」
最大の一撃を叩き込めるその人は、片腕の先にいくつにも立体的に重なった魔法陣の中心を魔神へと向け、静かに制服のスカートと、ネクタイを揺らした。
「世界樹『ユグドラシル』」
その魔法は、俺たちを包み込み……そして、彼女の手から、魔神をかき消す力として放出された。
……目覚めよ、竜の支配者よ
その後、夢から覚める前に届いたのは、その言葉だけだった。
◇◆◇◆◇
……なんだあの夢、妙にリアルでど迫力だった。
俺は、「これは夢だ」と今見たものに関する思考を強制シャットダウンしようとするが、どうしても気になって、仕方ない。
俺はまた寝ようと毛布にうずくまるが、あの夢のせいでなかなか寝つけなかった。
数時間後には諦めて、竜の上から見える景色を、ただボーッと見てたが。
そんな中、俺が緑だらけの景色に飽きて来た頃、一匹の気になる生物を見つけた。
『貴様、何者だ……?』
その生物は竜たちのような声で俺に話しかける……が、会話はお父様に絶たられてしまう。
「一角有翼獣だと!? Sランク魔獣がなんでこんなところに!」
ユ、ユニコーンペガサス!? 中2もほどほどにしろよ!
「スロット2、展開! 召喚『麒麟』」
お父様がそう叫ぶと、アルの真横の空中に、巨大な魔法陣が出現し、全長5メートルほどの少し小さめ……中型の竜が魔法陣の真ん中から現れる。
「アル! このまま進んで行ってくれ!」
『了解した。……くれぐれも、生きて帰れ』
「もちろんだ!」
お父様はそう叫ぶと、巨大な刀を片手に、麒麟に飛び乗る。
それと同時に、俺の新たな家が見えたらしく、アルは下降して行った。
◇◆◇◆◇
〜お父様視点〜
俺は、ギルドの設定したランクで、上から2番目の凶暴な魔物、ユニコーンペガサスと対峙していた。
『主、魔刀を使うのか?』
「ああ、麒麟も相手のことを舐めてると怪我するから、注意してろ」
『わかった。[大妖の咆哮]』
俺と会話を終えると、麒麟は自分たちを強化するスキルで、俺たちの攻撃と俊敏の『ステータス』を一時的な強化を施す。
「一気に行く! 竜剣技・『星終砲』!」
俺は、竜戦技の一つ、竜剣技の終奥義の一つである、遠距離攻撃、星終砲を一角有翼獣に放つ……が、一角有翼獣は少しの間滞空していたかと思うと、星終砲を魔法で撃ち落とす。
「麒麟、こいつ連れて帰ろう!」
『ハァ? ……主だもんな、仕方ない。少しの間、眠っていてもらおう。 [睡魔の誘い]』
麒麟が相手を眠らせるスキルを使い、一角有翼獣が眠り、落下して行く。
俺と麒麟は急降下し、落下する一角有翼獣の体を抱え上げる。
「よし……竜紋『覚醒召喚の儀式』」
俺は、竜技の初期技能、覚醒召喚で一応ドラゴンと幻獣の部類に入る一角有翼獣を俺の召喚リストに登録し、そのまま愛しき我が子と相棒の待つ新居へと帰った。




