第32話 そしてまた
諸々の事情で投稿が遅れました。
大変申し訳ありません。
『シュラハト』は大通り沿いに面しているわりにはこじんまりとした武器屋でした。
分厚い樫の木の扉の前にはいくつかのタルが置かれており、刃先が青銅でできた木製の槍や刀身が歪んだ剣、錆びた斧などが一律銀貨1枚で売られていました。
何を相手にするつもりかはわかりませんが、あきらかに粗悪な武器でした。
獣相手でしたらいけそうな気もしますが分厚い脂肪に覆われているオークなんかには通用しそうにありません。
不良品のワゴンセールを抜けて店内に入ると、店内には所狭しと武器が並べられていました。
剣、槍、弓、鞭、鬼が持っていそうな金棒など知っているものもありますが、鎖で繋がれた鉄球や輪状の刃物なんて何のために置いてあるのかわかりません。
他にも鈍器にしようと思えばできないことは無いのですが、宝石がはめ込まれ華美な装飾を施された杖ははたして武器になるのでしょうか?
角が当たったら意外と痛そうですが。
商品を眺めていると、同じような形状、同じ素材を使っていても、値段に差があることに気がつきました。
見た限り両方とも新品だと思うのですが、一体何が違うのでしょうか。
じーっと見比べていると何かが見えてきました。
1本5000リラのショートソードは
名:ショートソード
製作者:マーク
素材:鋼
鋼でできたショートソード。
1本50000リラのショートソードは
名:シャープエッジ
製作者:ファブリーク
素材:鋼
スキル:切れ味上昇
鋼でできたとても切れ味のよいショートソード。
意図して使ったわけではありませんが気が付いたら解析が発動していました。
……ファブリークさんあなた武器も作ってるじゃないですか。
武器を客に売るのはダメでも、武器屋に武器を売ることは許されるんですね。
それと物にもスキルがあるようですね。
見た目は同じように見えていても、性能が違うようです。
道具といえどその性能は千差万別。
人と同じですね。
それからは商品に解析を使いながら見学しました。
値段の違いは主に作者、素材、デザイン、中古かどうか等で左右されているようです。
他の人が己の目利きを信じて買っている中で一人だけ詳細な説明書を読んでいるようで気が引けますが、こちらがお金を払う側なのですからカタログやポップで商品の説明を読んでいると思えば正当な権利では無いでしょうか。
開き直って堂々と解析をかけて物色していきます。
解析を使う前は博物館や資料館で展示物を眺めているような気分でしたが、商品の説明が入るだけで一変に買い物のムードが出てきますね。
十把一絡げで雑多に扱われている商品の中にも料理スキルのついたナイフや切れ味上昇のスキルの付いたハンマーなどがありましたが、これらは他の物と値段が同じでした。
これは掘り出し物ではないかとも思いましたが、切れ味の良いハンマーの意味がわかりません。
無駄スキルとはいえ、付加価値の付いた物が他と同じ値段だとは思えません。
もしかしたら、この店には鑑定を使える人がいないのかもしれませんね。
でなかったら料理スキル付きのナイフが世の奥様方に買い取られていない理由がわかりません。
あれこれ見ていて気がついたのですが、武器にはスキル以外にも特性というものがあるのですね。
店内の目立つ場所に掲げられていた数点のみすりるなる素材で作られていた武器にはすべて魔法効率上昇という特性がついていました。
スキルがその物自体が持つ能力なら、特性はその素材のもつ能力ということでしょうか。
他にも同一の素材で作られた物に全て同じ特性がついていたので間違いなさそうです。
それにしても1本金貨数枚からって高すぎませんでしょうか。
みすりるというものはかなり貴重な物のようですね。
店舗内には数百点にも及ぶ商品が陳列されていましたが、スキル付きの商品は数点しかありませんでした。
やはりスキル付きの道具というのは珍しいのでしょうか。
しかも初めに見たショーとソード以外はミスマッチな物しかありませんでした。
スキル付きだから良い物かと聞かれたらなんともいえないとしか答えようがありませんが、スキルと道具がマッチしたらそれは確実に良いものなのでしょう。
しかしミスリルの武器も高い物でしたが上には上がある物です。
一通り見回り最後に一番立派なショーケースにたどりつきました。
この店の最高額商品は魔剣と呼ばれる剣で、カウンターの中のショーケースに収められていました。
盗難防止が施されたケースの中で豪華な装飾をされた金色の剣の価格は、なんと1本で大金貨数枚ですって。
無駄に高い剣を眺めていると、店員らしい青年が声をかけてきました。
「やあ、爺さん。お目が高いね。これはうちに置いてある商品の中で一番の商品だぜ。伝説の鍛冶師テヒニクが打ったオリハルコン製の剣に魔導師イリュズがルーンを刻み込んだ業火の剣だ。切られたら最後消し炭になるまで業火で焼かれ続けることになるんだぜ」
タイミングが良いのか悪いのかわかりませんが他にお客も居らず暇を持て余した店員が声をかけてきました。
その店員は少年というには年を取りすぎ、だからといって大人かと聞かれると答え難い微妙な年頃の青年でした。
店員は恍惚とした表情で語っていましたが、最後に魔力があればこれを持って冒険者になるのにと、少しだけ悔しそうに笑いました。
店員の説明はよくわかりませんでしたが、簡単に言ってしまえば魔剣は魔導具+剣のようです。
剣の刀身や柄には魔導回路であるルーンが刻印されており戦闘中でも剣に魔力を込めるだけで魔法が発動するようです。
そんなことをしなくても戦いながら魔法を放てばいいだけな気がしますが。
「おいおい爺さん。簡単にそんなことができたら誰も苦労はしねえぜ」
思っていただけのつもりが口からこぼれてしまっていたようです。
「そうなのですか?これくらいの魔法なら誰でも使えるのではないですか?」
「爺さんバカか?そんなわけねえだろ。業火の魔法を使える奴なんてAクラスの冒険者の中にもそんなにいねえぜ」
業火?
悪行が身を害するのを火に例えた言葉、もしくは罪人を焼く地獄の火でしたか。
そんな物騒な魔法が在るのですね。
少し気になります。
どれどれ……。
いやいや。
あのルーンは業火のルーンではありませんよ。
その証拠にほら。
名:ライターブレード
作者:クラウン
素材:鉛(金メッキ)
スキル:硬化
刃先から小さな火を灯すことができる。煙草に火をつけるのに便利だが刃渡りが90cmあるので他人の煙草に限る。夜道で光源にするには明かりが弱すぎて使えない。
切れ味は悪く刃物としては使えないが、鈍器として使うときその真価が発揮される。
「それは失礼しました」
熱く語る青年に事実を伝えることが躊躇われて、とりあえず謝ることにしました。
店員は小馬鹿にするようにこちらを鼻で笑っていましたが、物を知らないというのはとても残念なことだと思います。
他人を見下すその視線に苛立ちを覚えることも無く、知る人が見たらただのピエロにしか見えない店員がただただ可哀想に思えました。
「おいお前。あの剣をよこせ」
憐憫を込めて店員を眺めていると、いつの間にか隣にいた男が店員に声をかけました。
「お客様。業火の剣は598万リラになります」
「だから、よこせと言っている」
作り笑顔で対応する青年に男は不機嫌そうに答えました。
うわー、なんだか嫌な雰囲気ですね。
こんな時は火の粉が降りかからないよう少し離れてそっと見守るのが一番です。
君子危うきに近寄らず、ですよ。
「大変申し訳ありませんが、先払いとなっておりますので」
男の対応にも愛想笑いで対応する姿勢はさすが商人といえなくも無いが、その瞳の奥にはそんな大金払えるはず無いよね、という嘲りが見て取れた。
「は?俺は勇者だぞ?誰のおかげでのうのうと生きていられると思っているんだ?」
男の勇者発言に青年は眉をピクリとさせましたが、鼻で笑うと姿勢を正し芝居じみた礼をして続けました。
「これはこれは勇者様であられましたか。しかし例え勇者様であっても、お客様から御代を頂いて商品を提供するのが私めの仕事にございます。お金の無い貧乏人様はお帰りやがりくださいでございます」
ニヤニヤと笑いながら顔を上げた店員でしたが、次の瞬間には吹き飛び店舗の壁に背中から叩きつけられていました。
一瞬の出来事でしたが、店員が顔を上げた瞬間に自称勇者の男が顔を殴りつけていたのでした。
男が拳を突き出したのは見えていましたし止めようと思えばできたと思うのですが、突然の暴挙を目の当たりにしてそんなことは思いもつきませんでした。
男は伸びている店員にゆっくりと近づくと襟首を掴み数回頬を叩いて起こそうとしています。
いやいや起こすにしても力入れすぎではないでしょうか、青年の首が千切れるのではないかというくらいぐわんぐわんと揺れていますよ。
そして気の毒な店員が目を覚まして初めに見たのは不機嫌さを隠すこともせずに米神に青筋を浮かべた男の顔でした。
「ヒィッ」
「何だその態度は?」
店員は自称勇者の発言に顔を青くし、ガタガタと震え汗をダラダラと流していました。
「何その態度。あー俺ちょー傷ついたわー。これは慰謝料を請求しなきゃだなー」
いやいや、アレだけのことをされたら店員でなくても怯えるのは無理からぬことではないでしょうか。
「いえ、しかし……」
「なんか文句あんの?」
店員が渋っていると、自称勇者は胸倉を掴んでいた手に力を入れて更なる脅をかけました。
店員は涙を流しプルプルと震えながらもブンブンと首を大きく横に振っていますが、自称勇者はそんなことは歯牙にもかけていません。
「なら、さっさとよこせ」
自称勇者の拘束から逃れた店員は泣く泣く家宝のライターブレードを取り出すと自称勇者に差し出しました。
店員はライターブレードを渡した瞬間に再び殴り飛ばされ、カウンターの奥の方まで転がると壁に打ち付けられて伸びていました。
ライターブレードの感触を確かめるように2、3回振った自称勇者は、初めてこちらに気が付いたのか物色するように見てきました。
初めは『解析』をかけられているのかとも思いましたが、途中でライターソードを欲しがる人間が『解析』を持っているはずが無いと思い直しました。
そうなると、こちらもその自称勇者の真偽を確かめたいような気もしないのでもないですが、碌な目にあわないような気がするのでやめておきましょう。
自分からトラブルに首を突っ込むなんて馬鹿か物好きのどちらでしょう。
それしても自称勇者の彼はおそらく同郷の者なのではないでしょうか。
金髪碧眼ではありましたが間違いなく20代半ばの日本男性の顔です。
しばらくこちらを舐めるように見ていた自称勇者でしたが、興味をなくしたように視線を逸らすと去っていきました。
やれやれです。
偽装を使っているので万が一解析されたとしても問題ないのですが、気が気ではありません。
同じ日本人顔に興味が引かれたのかもしれませんが、それでもどこで見られているのかわかったものではありません、今度からは常に偽装することを徹底する必要がありそうですね。
それにしても、商人だからといって目利きができるわけでもなければ、勇者だからといって『解析』を使えるわけではないようです。
他にも何人か勇者がいるそうですが、みんなあんなに素行の悪い人達なのでしょうか。
助けてあげられなかった罪悪感もあったので意識を失っている店員は『回復』を使って怪我を治しておきました。
青年が目覚めるのを待ち、一番よさげだった料理スキル付きの短剣を購入して店を出ました。
意気消沈気味の青年を励まそうと冗談半分でなんとなく値切ってみたら、半額で買えてしまいました。
青年は終始ボーっとしており心ここにあらずな様子で怪我が治っていることにも気が付いていないようでしたが、あとは警察?なんているのかわかりませんが、法を司る部門と店との問題でしょう。
自分がでしゃばる必要は無いですね。
良い買い物も出来ましたし気持ちを切り替えて次にいきましょう。
三層外壁の大門では衛兵に止められましたが、リストから渡されたタグを見せるとすんなりと通してくれました。
三層外壁門を抜けたすぐの四層の大通りには一際大きな店舗がいくつか並んでいました。
その中の一つの建物に入っていく人たちはみんな武装した強面の人やフード付きのバスローブのような外套を着た怪しい人たちばかりです。
表口は普通の店舗のような広い間口の入り口ですが裏にはもっと大きな入り口があるようで、荷馬車にいっぱいの魔獣の死骸を運びこむ者がいました。
もしかしたら、あれがギルドとかいう冒険者の組合なのかもしれません。
どんなところなのか興味はありましたが、特に用事もありませんので今回はスルーです。
組合らしき建物を通り過ぎると、町の外からやってきた旅人や行商人目当ての宿屋や酒場、食堂などが多く見られます。
あちらこちらから肉の焼ける匂いや香草の香りが漂ってきて食欲をそそりますが、塩が効いていない自然味なのはいくつかの屋台で立ち食いしてすでに確認済みです。
自然味が悪いとは言いませんが、やはりパンチの効いた食事も欲しくなります。
この国で生きていくからには、いずれは岩塩鉱床の存在を明らかにしなければいけない気がしてきました。
まだ昼過ぎですが、頬を赤らめて騒いでいるグループがあります。
仕事がうまく行ったのでしょうか、レイクヴァイパーを何匹倒したとかポイズントードを何匹倒したとか、ヴェノムパイソンを何匹倒したとか、周囲に喧伝するように大声で叫んでいるので聞きたくなくても聞こえてきます。
あのグループ毒を持つ魔獣の専門家なのでしょうか。
他にもお通夜のような雰囲気でチビリチビリやっている若者や爆睡している親方風の中年もいます。
やがて武器、防具、道具などを商う小さな商店が並び、その区画を抜けると以前にテレビで見たことがある海外の市場のようなテントを張っただけの露店がずらりと並んでいました。
様々な人が思うままに商品を並べて売っている様はバザーやフリーマーケットにも似た雰囲気でした。
商品も家庭料理から貴金属、骨董品、魔導具、用途不明なガラクタやジャンク品まで様々な物が並んでいます。
この底が抜けたような鍋にしか見えない物なんて、何に使う物なのかすら想像ができません。
もしかしたら何かの特殊な道具なのかもしれませんね。
…………底が抜けた鍋でした。
こんな物買う人いるのでしょうか。
でもまぁ、見ているだけでも楽しいですよね。
ガラクタとして二束三文で売られているものを興味深く眺めていると何か気になるものが目に入りました。
草鞋なんて売っているのですね。
そういえば街中では革や金属で出来た靴やブーツを履いている人しかいませんでしたが、四層に来てからはちらほらと履いている人をみかけます。
彼らに共通しているのは浅黒く焼けた肌と粗末な服装、そして背中に背負った籠に積まれた野菜でした。
おそらく農業を生業とする農民の方々なのでしょう。
ちなみに5層に住む貧民層では裸足が基本スタイルでしたので草鞋は見たことがありませんでした。
日本に来た外国人観光客のような気分で草鞋を手にとると何か違和感がありました。
解析結果は『韋駄天の草鞋』。
『韋駄天の草鞋』とか何か凄そうな名前じゃないですか。
当然即決購入です。
外見はみすぼらしいただの草鞋のように見えますが、駿足のスキルが付いています。
なにやら所々解れてしまっていて耐久性は低そうですが、こんな草鞋が銅貨5枚で買えるとしたら安すぎではないですかね。
皆さん物の価値がわかっていて販売しているのでしょうか。
まあ、わかっていたらこんな値段では売りませんよね。
顔がニヤニヤとしてしまうのを止めることが出来ません。
前世では家庭に眠るお宝を鑑定する番組がありましたが、実は意外と好きなんですよね。
時間があえばいつも楽しんで拝見させていただいていましたが、まさか自分が鑑定する側に回る日が来るなんて思ってもみませんでした。
しかも、解析があれば自分も鑑定成功率100パーセントの優良鑑定士です。
お宝をハズレ無しで二束三文で買い取り、必要としている人に高値で売る。
アレ?
もしかして、これだけで生きていけるんじゃないでしょうか。
正しく鑑定さえできたら、古物商ってぼろい商売なんですね。
その後も欲に眼が眩んで露店を巡りましたが、人生とはそううまくは行かないようにできているようですね。
ガラクタばかりでよさそうな物は見つけられませんでした。
当ても無く冷やかして回り、一つの露店の前で立ち止まりました。
その露店には色とりどりの石ころが並び、中にはカットされていない不恰好な宝石の原石もありました。
いつも余った魔力を石ころに詰め込んでいましたが、宝石にはもっと詰め込めるというのを思い出しました。
いくつかよさそうな原石を見繕い代金の銀貨5枚を支払うと、店主の脇にある岩が目に入りました。
どこからどう見てもただの岩なのですが、どうにも気になります。
いえ、そもそもなぜ岩が置いてあるのでしょうか。
売り物?ですがこんな物をわざわざ買う人はいないと思います。
それとも看板代わりのただのオブジェなのでしょうか。
「気になりますかい?」
岩に釘付けになっていると、露店の店主が話しかけてきました。
店主は重たい石を扱う商人らしく巌のような大男で、気持ちの良い笑顔をしていました。
たしかにこの方でしたら岩を運んできていても不思議ではありませんね。
「ええ、気になりますね。それも売り物なのですか?」
「おおともよ。商人がただでさえ狭え店のスペースに売れねえものを置くわけねえだろ?」
「ははは、間違いありませんね。しかし、そんなただの岩を置いていて買っていく方がいるのですか?」
「おいおい旦那、これがただの岩だと思っているのかい?」
「違うので?」
「当然よ」
店主が待ってましたと言わんばかりにニヤリと笑いました。
「これはただの岩じゃねえ、とある貴族様の家に代々伝わる由緒ある岩なのさ」
「……へえ、それはすごいデスネ」
貴族の家に伝わるただの岩ですか。
ガッカリデス。
「旦那、今それだけかと思っただろ?だがこの岩はそれだけじゃねえんだ。まず軽い」
「軽い?」
「ああ、軽いんだ。見た目は子供ほどの大きさがある岩だが」
そういって店主は岩を軽々持ち上げると、片手で上げ下げして見せました。
その姿からは無理をしている様子は見られず、本当に軽いようでした。
「中が空洞になっているのでしょうか?」
「それは割ってみなきゃわからねえな」
「割らないのですか?」
「そこで次だ」
「次……ですか?」
「そうだ、次だ。次にこいつは硬い」
「硬い……ですか」
「そうだ。ある時この岩の話を聞きつけた名のあるドワーフの鍛冶屋がいたそうだ。その岩を素材にしたら凄い装備が出来るんじゃないかってな。貴族様も代々受け継いできた岩を手放すつもりは無かったらしいんだが、そのドワーフはこの岩と同じ大きさのミスリル鉱石を持ってきたらしい。ミスリルはドワーフ達が採掘したものしか出回らない貴重品だ。流石の貴族様も大金を出しても手に入るかわからないそれを見て快諾したようだ」
「それはすごいですね」
「だろ?それでだ。旦那、俺はそこまで強欲じゃねえ。俺は一日の儲けは自分のポッケに納まる量と決めている。それ以上の儲けは身持ちを崩すからな。」
「それは良いことです。私も見習わなければいけません」
「だろだろ?で、だ。その由緒あるこの岩を金貨10枚でどうだ?」
金貨10枚とか簡単に言っていますが、1000万円オーバーですよ?
この男のポケットはかなりの大きさを誇るようです。
しかし、それでもこの岩が気になります。
その理由は、解析をかけちゃったからなのですが。
名:???
製作者:???
素材:???
???
はてなが乱舞しています。
解析でも何かわかりませんでした。
それでも気合を入れて見続けた結果、一瞬ですが神って見えた気がします。
欲しい。
欲しいです。
何に使うのかわかりませんが欲しいです。
ここは何とか値段を下げねばいけません。
「それは少し高すぎではないでしょうか」
「いやいや、そんなこたねえだろうよ。だが、そうだな。旦那には特別に半額の金貨5枚にしてやるよ」
いきなり半額とかこの人絶対これが何かわかっていないですよね。
おそらく吹っかけるだけ吹っかけて高く売れたらラッキーくらいに思っているのでしょう。
「半額ですか。特別というのは嬉しいですが、まだまだ高いですね」
「おおまけにまけて金貨3枚だ。いくら旦那でもこれ以上は譲れねえ」
金貨3枚ですか。
大分安くはなりましたが手持ちがそんなにはありません。
ここが勝負どころですね。
「そうですか。しかし、先ほどの話しですが」
今までの笑顔を取り払い真剣な表情を作ります。
和やかな雰囲気から一転、殺伐な雰囲気に店主の顔が引きつりましたがそれでも作り笑いが剥げないのはさすが商人といったところでしょうか。
しかしまだまだです。
いくら窓際といってもそこは大手のゼネコンで数十年勤め上げてきました。
これくらい出来なくてはヤクザ屋さんとは渡り合えませんよ。
「最後まで話していませんよね?」
笑っていない笑顔を浮かべると、店主の男は観念したのか作り笑いをやめました。
「…………なんでわかった?もしかして知っていたのか?」
「いえいえ、装備品の素材に買い取っていったのでしたら、ここに原形がある状態で残ってはいませんよね?」
「……ハァ、旦那にゃかなわねえな」
店主は諦めるように溜息をつきました。
「数日後にその鍛冶屋が貴族の下に現れたそうだ。鍛冶屋の持つ最高の道具と技術をもってしても傷一つつけることが出来なかったと」
「そうですか。いくら良い素材があっても加工できなかったらただのゴミにしかなりませんからね。ですが、そんなゴミでも欲しいと思う物好きはいるわけで」
ニッコリ笑いかけると店主はうなだれました。
「わかったわかったわかりました。いけると思ったんだがなー。大銀貨6枚だ。これ以上は無理だ。足が出ちまう」
これ以上は無理そうですね。
しかし大銀貨6枚ですか。
現在の手持ちは大銀貨6枚それと銭貨が数枚……。
この男、こちらの懐事情を知っているのではないかと疑ってしまいそうな値段設定ですね。
「まいどあり」
店主の男に大銀貨6枚を渡し、子供サイズの岩を担いで歩き出しました。
老人が岩を担いで歩く、そんなシュールな光景に多くの人が振り返りましたが今は気になりません。
ホクホク顔で歩いていると、とても重大なことに気がつきました。
アレ?
自分、また無一文じゃないでしょうか?
またしても大幅に投稿が遅れてしまいました。
全ては私の手が遅いことが原因なのですが、一つだけ言わせてください。
仕事を辞めるのならせめて1月前には教えてください。
そして出来たら誰かに引継ぎだけはしてください。
ということで、私的な愚痴でしたすみません。
そしてまた……続いてしまいます。
次で買い物も終わるはず……なんです。
お読みいただきありがとうございます。




