第23話 絵本
しばらく時間が開きました。
ごめんなさい。
まだしばらくかかりそうです。
とりあえず出来たものを順次予約投稿します。
昔々の話です。
この星には何もありませんでした。
木も無く水も無く、空気もありませんでした。
当然、人も動物もいません。
ただ渇いてひび割れた土があるだけでした。
神様はそんな何もない星の事を知っていましたが、特に気にすることはありませんでした。
神様はとても忙しく、毎日働いていました。
しかし、神様にも限界がありました。
それはとてもとても気持ちの良い日でした。
神様は疲労からか、うとうとと昼寝をしてしまいました。
神様にとって、いつぶりの睡眠でしょう。
神様が寝てしまうと、神様の子供たちは何をしたらいいのかわかりませんでした。
ですが、子供たちは神様が忙しく働き続け、すでに何十年も寝ていないのを知っていました。
それなので、神様の子供たちは話し合い、神様が起きるまでそっとしておくことに決めました。
子供たちは話し合い、いつも通りに働くことに決めました。
しかし、いつもは神様の指示で動いていたため、みんな自分が何をしているのか知りませんでした。
一番上の男の子は、神様の指示で火を起こしていました。
世界の果てで燃え滾る炎を掬い、ふわふわと浮かぶ星の内側に注ぎます。
いつもは神様に言われたとおりに火を運び、神様に言われた量だけ注ぎ込みました。
しかし、今日は神様がいません。
男の子は火を運び続け、注ぎ続けました。
その結果、その星は灼熱の炎で満たされ、滅びました。
二番目の女の子は、神様の指示で水を運んでいました。
世界の果てに湧き出る泉からジョウロで水を掬い、ふわふわと浮かぶ星に水を注ぎます。
いつもは神様に言われたとおりに水を運び、神様に言われた量だけ注ぎ込みました。
しかし、今日は神様がいません。
女の子は水を運び続け、注ぎ続けました。
その結果、その星は過剰な水で満たされ、滅びました。
三番目の男の子は、神様の指示で星の形を作っていました。
男の子がふわふわと浮かぶ星に指を立て、粘土を捻るように摘み上げると大きな山が出来、指を突き刺すと深い深い海が出来ます。
いつもは神様に言われるままに星を捏ね、神様に言われた通りに形作っていました。
しかし、今日は神様がいません。
男の子は星を捏ね続け、山を乱立し、また、星を貫通する深い深い海を作りました。
その結果、その星は自身を維持できず、崩れ滅びました。
四番目の女の子は、神様の指示で星に風を送っていました。
大きな大きな扇で、ふわふわと浮かぶ星に風を送ります。
いつもは神様に言われたとおりに星を扇ぎ、神様に言われた量だけ風を送りました。
しかし、今日は神様がいません。
女の子は星を扇ぎ続け、風を送り続けました。
その結果、その星は陸も海も強風により大荒れ、次第に気温も下がり凍結し滅びました。
神様が数年後に目を覚ましたときには、神様が作り上げた殆どの世界が滅んでいました。
神様は子供たちを集め、叱りました。
子供たちは自分達の仕出かしたことを理解し、わんわんと泣き叫びました。
神様はそんな子供たちを見て、自分が間違っていたことに気がつきました。
忙しさにかまけて子供たちに何も教えず、ただただ駒のように働かせていた自分が悪かったのだと。
そんな時、神様は木も水も空気もない星の存在を思い出しました。
神様は、その星を四人の子供に差し出し、自分達で考え、好きなように作り上げ管理するように言いました。
子供たちは同じ失敗を繰り返さないことを心に誓いました。
子供たちは力を合わせ試行錯誤をして、立派な星を作り上げました。
神様は子供たちの成長を喜び、完成ながら不完全なその星に命の種を蒔きました。
子供たちは晴れて一人前となり、また神様と一緒に働きはじめました。
神様と子供たちは、それまで以上に働き、いつしかその星は忘れ去られていました。
何者かによって埋め込まれた『魔』の存在に気がつくまで。
~神学者クロ~
活動を止め冷たく死んでいた世界の核は長兄に注がれた火により生き返りましたました。
続いて長姉により渇ききっていた世界は水で満たされました。
次いで次兄により一面の水の中から陸地が創造されると、次女により空気が生み出され、風となって循環しました。
ゆっくりと、確かに生き返り回り出した世界は末の双子に見守られ、昼と夜を繰り返し、時を刻み始めました。
神様は大いに喜びました。
そのとき流れた一滴の神様の涙は世界を満たしていた水に落ちて混ざり、ただの水は海に変わりました。
そして、海から命が生まれました。
あるものは植物に、またあるものは生物になりました。
植物は瞬く間に世界中に広がり、やがて地上に上がりました。
生物も植物を糧とし、植物を追いかけるように地上に上がりました。
植物がどんなに増えようと、それを上回る勢いで生物が増えた結果、生物は食糧危機に陥りました。
そして、この世界に一つの単純にして揺ぎ無い理が生まれました。
弱肉強食。
強者が弱者を食し、弱者の犠牲の上に強者が栄えました。
弱者は抵抗むなしく捕食され数を減らしました。
しかし、弱者もただ捕食されるだけではありませんでした。
多くの犠牲の果てに、無い爪や牙を補う道具を使うようになったのです。
道具はある程度の効果を発揮しましたが、依然強大な力を持つ強者には歯が立ちませんでした。
そこで、弱者は道具を改良することを覚え、強者と戦う術を手に入れたのでした。
こうして人間は世界を支配する強者となりました。
それからも人間の支配する世界は栄えました。
家族単位だった集団は大きくなり、集落を作るようになりました。
集落ができると、狩りの上手くない者は己の得意分野で他者に貢献するようになり、分業を始めました。
分業は効を奏し、土地が広がり人は増えました。
さらに集団が大きくなると、同じ人間の中にも弱者と強者が現れ、強者が弱者を纏め上げるようになりました。
ただの集団は組織となり、効率が上がることで、また人の数は増えていきました。
やがて組織は国となり、絶対的な強者である王が治めるようになりました。
王の統治によりさらに国が大きくなると、やがて同じ人間同士で争うようになりました。
国は統廃合を繰り返し、王が領主である候を、候が村や町の民を支配するように成りました。
そして、一つの国を飲み込むと、また新たな国を取り込もうと戦いを仕掛ける準備を始めました。
世界は東西南北四つの大国と特殊な環境に適応したいくつかの小国に落ち着き、争いも小康状態になりました。
そんな時でした。
全ての人々が同時に、今までに感じた事の無い力が己の中にあることに気がつきました。
その力の強さは均一ではなく、とても大きかったり、また小さかったりしましたが、その大きさに身分は関係ありませんでした。
人々は戸惑いながらも新たな己の力を行使し始めました。
それまでの弱者はすでに弱者ではなく、同時に強者はすでに強者ではありませんでした。
人々は突如手にした力に飲み込まれ、大きな力はやがて人間の体に異変をもたらしました。
あるものは獣の耳や尻尾が生え、あるものは耳の先が長くなり、あるものは背が低くなり、あるものは力強くなり、あるものは鱗が生え、あるものは水中で生活できるようになりました。
それまで一種類しかいなかった人間にいくつもの種類ができたのです。
圧倒的多数だった人間達はそんな彼らを亜人と蔑み排除しました。
人間達の国から追い出された亜人たちは、自分と近しい仲間たちと集まり集落を作りました。
こうして、いくつかの人間達の国は滅び、いくつかの新たな国ができました。
世界は大いに荒れました。
各地で争いが起こり、大国はいとも簡単に瓦解しました。
世界は再び力ある者が君臨する、弱肉強食の世に戻りました。
しかし、力を手にしたのは人間だけではありませんでした。
『魔』の力を手に入れた獣は凶悪な魔獣となり、人々を襲いました。
そして、残念ながら強い力に魅入られたのは獣だけではありませんでした。
『魔』に魅入られた人間もまた魔人となり、その異形の姿と強大な力で人々を襲いました。
人間達にとって幸いだったのは、魔人はその強力な力故に群れなかったことです。
追い詰められた人々は争いをやめ、それらの脅威から身を守るために力を合わせました。
人族、亜人族が微力ながらも力を合わせることで、魔人達から自分達の身を守ることになんとか成功しました。
しかし、臆病な人族はそれまで力を合わせて共に戦った亜人達を再び迫害しはじめました。
亜人族は再び人族と距離をとり、それぞれの国を作りました。
こうして、獣、亜人、人間、魔人、魔物が住む世界が出来上がりました。
~童話作家クロ~
初めは名も無かったこの世界は、四柱の神の子によって作り上げられ、神様によって命を与えられました。
やがてこの星はアストラルと呼ばれるようになりました。
昔、世界には人族、獣人族、魔族の三つの大国と世界の片隅でひっそりと生きるいくつかの亜人族の小国がありました。
人族は、その微力な力を寄せ合わせ、外敵や苦難から身を守っていました。
獣人族は、その獣のように鋭敏な感覚と人族を凌駕する身体能力で魔物や獣の跋扈する森の中に国を作りました。
魔族は魔物を従えることはありますが、その強大な力故に群れることはありませんでした。
しかし、ある時彼らからしても絶大な力を持つ魔王が現れたことで統治され、国ができました。
そして、魔王は魔族たちを引き連れ、その強大な力で獣人たちの国を滅ぼしました。
生き残った獣人たちは魔王軍に取り込まれ、人族の国へ侵略してきました。
これによって、それまで強力だが個体数の少なかった魔王軍は数倍にも数を増やしましました。
魔王軍に侵攻され戦力が目減りしていく中で、人族は追い詰められ滅亡は目前まで迫っていました。
そんな状況になってはじめて、人族はかつて自分達が迫害した亜人たちに協力を要請しました。
人族の勝手な要求に呆れた亜人たちでしたが、このままでは彼らも明日は我が身です。
過去の恨み辛みは一度棚に上げて、人族・亜人族の連合軍は魔王軍に立ち向かいました。
亜人族の援軍で魔王軍の勢いはおさまりましたが、依然として魔王軍の猛攻が止むことはありませんでした。
日々増えていく負傷兵や墓標の数に皆が絶望し、諦めかけていました。
そんな時、一人の青年が勇敢に魔族へと立ち向かって行きました。
それが後に勇者と呼ばれる青年でした。
青年が魔王に手傷を追わせると、それまでは防戦一方でしたが、勢いづいた人間軍は息を吹き返したように魔王軍を追い返していきました。
しかし、戦場が拡大すると戦況は膠着し、両軍のにらみ合いとなりました。
青年は彼に賛同する少数の精鋭を引き連れ、魔族が跋扈する中を魔王に迫りました。
熾烈な戦いの末、魔王は四肢を地面に投げ出しました。
青年が魔王を討ちとったかに思えましたが、魔王の最後の足掻きは青年に大きなダメージを与え、大陸を半分に裂きました。
幅数キロに及ぶ裂け目には海水が満たされ、完全に大陸を分断しました。
そして、大陸は人族の大陸と魔族の大陸に別れました。
その日、青年達が魔王を討ったという知らせは全ての民を歓喜させました。
喜び覚めやらぬ中、亜人族は王といくつかの協定を結び、静かに去っていきました。
王の娘を娶った勇者は最も魔族の大陸に接近する地域に国を起こし、魔族の動向を生涯を通して監視し続けました。
こうして、人族と魔族の戦争は終り、人間達は幸せな日々を送るようになったのでした。
~歴史学者クロ~
パタン。
ニールは借りていた本を閉じました。
本の内容は概ね世界の成り立ちについての絵本でした。
日本で言うところの古事記や日本書紀のようなものでしょうか。
御伽噺にしか思えませんが、実際に神様に会ってしまった手前、簡単には否定できないですね。
それにしてもこれ、たぶん作者同じですよね。
神学者に童話作家に歴史学者ですか、他にはどんな肩書きがあるんでしょう。
これらの本は、ウィムも幼い頃に読んだことがあるらしいのですが、獣人の国でもほぼ同じ内容だったようです。
国が変われば、内容や結末に多少の差異があってもおかしくはないと思うのですが、まったく一緒とは不思議なものです。
それにしても、こんなに高そうな本を読んだことがあるとは。
ウィムはお金持ちの家の子だったのでしょうか。
それと、ウィムが聞いた話によると、今では少数ですが魔族と人族の商取引もあるようです。
獣人の国は完全には消滅せず、魔族からも人族からも迫害を受けた獣人族は森の中でひっそりと暮らしているそうです。
両大陸に分けられた獣人ですが、人族の大陸に残された獣人は耳と尻尾、多少の毛や鱗を残す人間よりの獣人となり、魔族の大陸に残された獣人は完全に顔や体の一部が動物の獣よりの獣人になったらしいです。
ウィムさん物知りです。
それにしても、ウィムやエルンのような獣耳や尻尾があるだけの獣人は問題なく人間だと思えましたが、流石に顔が完全動物な人間に出会った時に同じ人間だと思えるか自信がありません。
まあ、いずれは会うこともあるかもしれませんが、今から会わないかもしれない人のことを考えていても仕方がありませんね。
枕元を照らす発光石には、まだ魔力が残っていてまだまだ消えそうにはありませんでした。
ニールは部屋を照らす用のガラスの入れ物ではなく、ブリキでできたバケツのような入れ物に発光石を入れ、そっと蓋をしました。
バケツから明かりが漏れることは無く、部屋の中を暗闇が満たしました。
ニールはウィムとエルンの寝息が聞こえるのを確認して、そっと自分の布団の中に入りました。
睡魔が襲ってくるのに、そんなに時間はかかりませんでした。
知り合いのところでネットを使わせてもらいました。
忙しすぎて当分ネット接続どころではなさそうですが、定期的に投稿出来るように頑張ります。




