16/34
第16話 六歳児の門出
お祝い当日の朝。
母は僕の為に作った一張羅を胸に抱えて泣いていました。
姉もまた目を真っ赤にして泣いていましたが、今にも泣き崩れそうな母を必死に支えています。
父は小さな袋を手にして小踊りし、長男は羨望の眼差しでそんな父を見上げています。
次男はそんな父や母を見ながらも、意識は今回の祭り会場になった二つ隣の集落に向かっているようです。
そして、僕は、その光景を揺れる荷馬車の上に設置された檻の中から、眺めていました。
おそらく、六歳児の双眸は、失望と呼ばれる色で濁り、まるで死んだ魚のようだったのではないでしょうか。
悲しみすら、湧いてきません。
きっと、心の底では分っていたのでしょう。
どうせ、うまくいきっこなんてないと。
村から離れ、ついに泣き崩れた母と姉が小さくなっていくのを、僕は路傍の石を見るかのように眺めるだけでした。
こうして、六歳を祝うこの日、僕は銀貨六枚で売られました。




