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召喚獣じゃないから!  作者: ごおるど
第十二章 準備
50/50

番外編 落とし穴にご注意を 3

番外編の為、場所を移動する可能性があります。



 



 まず、私がしたのは聞き取り調査だ。


 大きさが変更できるったって、限界がある訳でしょう。それに万が一、できる素材とできない素材があった場合、折角用意しても無駄になってしまうので、その辺は詳しくお師匠さんに教えてもらった。


 そうしたら、生物はだめ、鉱物も無理。

 布みたいな柔らかな素材は、どれでも問題はなかろうなんて簡単に言ってくれちゃってたけど、ビーズやスパンコールが付いているようなドレスは止めておいた方がいいだろうし、ファスナーは小さくならないって事だよね。やっぱり聞いておいてよかった。

 紐なんかで締めるようなデザインを選ぶか、ファスナーやボタンは外して後からもう一度つけるか、ホックに変更するかした方がいいってことで……ドレスそのものをいじるのがほぼ確定な段階で、レンタルは諦めた。


 その他に、改めてタブーなルールを聞くと、やっぱり腕を出しちゃだめ、脚を出しちゃだめなんだって。レースみたいに透けているのはOKだけど、きわどい部分までスケスケのシースルーはNG。


 更に貴色を避けること、というルールを教わった。

 金色、黄色は王族の色なんだそうで、王族の衣装には必ずこれが入っているため、一般の貴族は一部分でも使用不可。身分の高い貴族ほど黄色に近い色を使うことが多いらしい。

 シャリーちゃんのドレスがオレンジ色だったのは準王族扱いする為で、あとは婚約者や夫婦が、お互いの瞳の色を衣装や装飾品に取り入れたりするみたい。


「じゃあ今回の場合、オレンジじゃなくても、王子の目の色のドレスでもいいのね?」

 王子の目の色は空色だっけ?赤毛に合わせるなら、そっちの方が似合いそうかな。


 あと、これは聞いておかねばと、

「私の住んでいる所だと、白は花嫁を連想させるので、デザインによっては空気の読めない人扱いされる場合があるけど、こっちではそういうのはないの?」

 と尋ねてみたらば──ありました。


 デザインよりも、染めた色の美しさを競う事が多いので、白いドレスは色ドレスに比べて総じて安いんだって。つまり、貧乏で貧相なイメージになるので、白一色のドレスはあまり選ばれない。

 だから白いドレスは止めてくれと言われたけど……貧相ってことはないよね?艶のある白いドレスって、シンプルなデザインでも素敵だよ?


「異世界ではそうなのですか?」

「うん。花嫁はあなたの色に染まりますって意味で、伝統的に白い衣装を着ることが多いんだ」

 ウェディングドレス然り、白無垢然り、貧相なイメージとは無縁な衣装だ。


「染まりやすいという意味では確かにそうですが……」


 恥をかかない程度でいいやくらいの心算で、実はあんまり興味はないみたいなシャリーちゃんと、世俗の細かい事情には疎いお師匠さんに代わり、ユリアさんが説明してくれたのを総合して判断するに、そもそも染色も縫製も何もかも、技術がそんなに発達していないみたい。


 白はこんな感じなんですよ、と見せてもらったハンカチは、なんというか生成り色?

 クリーム?

 うーん、適切なたとえがありそうなんだけど……。


 あ!分かった!羊の毛の色。まさに洗っていないあの色だ。

 ちゃんと汚れが落ちていない所に色を乗せるので、何となく濁ったような色になるみたい。


 金色と黄色が貴色なのは、黄色は発色が綺麗で染料も高価な事、金色は文字通りに金糸を使うため、とんでもなく高価になる事から王族の色とされたのが始まりなんだって。


「シャリー様のドレスも、これだけ明るくて綺麗な色なのですから、最高級品なのは確かだと思います」

「なるほどー」

 高価な素材を使えば素晴らしい物が出来上がるとは限らない、典型的なパターンだね。


「じゃあ、柄物なんてないの?」

「柄物というのは、一枚の布で、ということでしょうか?異なる色を縫い合わせて服にしたものは見たことがありますが、庶民の服がそのようにつぎはぎをしていますので、貴族の間ではあまり好まれません。花柄の刺繍は見たことがありますが、あくまでも一部分だったと思います」

 つぎはぎっていうか、パッチワークのイメージだったんだけど。そうか、穴が開いちゃったところを当て布で塞いだイメージになっちゃうのか。……でも。


「これはいいこと聞いた」

 よし、大体の方向性は分かったから、一度あちらに戻して貰おう。


 お師匠さんにお願いして向こうに帰ってすぐに、私はスマホに色々なウェディングドレスやら、色ドレスの画像を落としこんだ。

 百聞は一見に如かず。画面で見た色と現物が違う事があるけど、さすがに現物を多く取りそろえることはできないから、雰囲気だけでもなるべく見せたいし、私だけで選ぶのは流石にちょっと自信がない。

 実際に買うのは、保険も兼ねてせいぜい二着ずつ(・・)くらいかな?


 ──そう。お師匠さんが本当に私の言う通りにしたのだったら、王子の相手の本命はユリアさんの方のはずなのだ。

 だったら、是非ともシャリーちゃんと一緒にドレスを着てもらわなければなるまい。まあ、王子は見向きもしない可能性が高いけど、それでもここは盛大に着飾ってもらわないと。


 

 直ぐに呼び出しがかかって、スマホの画像を見せつつドレスを選んだ。


 ドレスの好みを聞くついでにシャリーちゃんとユリアさんの身の上を聞いてみたら、シャリーちゃんのお父さん、自己紹介の時に言っていたケヴィン・クラヴェル子爵というのは、第二騎士団長の団長だそうな。

 第二騎士団は、庶民上がりか下級貴族が多いので、シャリーちゃんは婚約者としては打って付けだったみたい。

 女の子でも剣術を習っているので……現在進行形で、これだけは止めないと言っているらしく、正直、あまりおしゃれには興味がない、と本人談。この辺、お父さんの教育方針もあったのかも。

 今回お披露目するにあたって礼儀作法を詰め込まれているのが、剣術の練習よりも大変と嘆いていたので、こんなお姫様な振る舞いは今まで滅多にしていなかったようだ。


 そしてユリアさんは、実は男爵令嬢なんだそうだけど、シャリーちゃんの所と同じように代々騎士の家系であるし、兄弟が多いので結婚は早々に諦めて、剣に生きることにしたんだそうだ。


 兄弟が多いとなんで結婚できないの?と思ったら、持参金が払えないからなんだって。

 明るい栗色の髪に緑色の目をしたユリアさんはすごい美人さんじゃないけど、かわいらしいよりも凛々しい感じの女の人だ。

 結婚しない、じゃなくて、できないなんて最初からあきらめちゃっているのは本当にもったいない。

 王子が相手をしなくても結婚できるように、気合を入れて綺麗にしてあげよう。


 スマホを見たお師匠さんが興奮しすぎて、訳わからなくなるというハプニングもあったけど、二人がかりでユリアさんを説得して──言いくるめたともいう──ドレスを選んでもらった。


 シャリーちゃんは、白地にオレンジの花柄のドレスと、明るい空色で、裾が途中からレースになっているドレスを選んだ。

 ユリアさんは、白から淡いグリーンのグラデーションになっているドレスと、真っ白い、刺繍とレースがふんだんに使用されたAラインのドレス。


 肩が丸出しのデザインなので、ドレスとは別にオーガンジーのボレロを上から羽織る事にしたのだけど、幸いにして、四点とも紐で締めるタイプだったので、それ以上手を加える必要がなかった。


「これ、ものすごく高いドレスなんじゃないですか?」

 って、二人から言われたけど、実は安い。ポリエステルの既製品だから、一着二万円もかかっていない。


 染色技術も縫製やデザインも、現代日本の方が勝っているから、安い物でも通用しそうだって思ったんだよね。

 化学繊維とか化学染料とか日本では安価なイメージだけど、あっちだと見た事のない素材と鮮やかな発色の布で作られたドレスって事になりそうだし。


 一応、お師匠さんにも確認してもらったけど、申し分のないドレスだと太鼓判を押してもらった。

 白いドレスも、そこまでオフホワイトでもない完全なホワイトのドレスで、ポリエステル特有の光沢もあり、みすぼらしいなんてことは皆無だから心配ないと言われて、安心して帰ることができた。おまけに、アレンジできるようにコサージュやらリボンやら、ビーズやらも渡したしね。


 これで私はお役御免。

 王子の衣装がカボチャパンツに白タイツだったら、指差して笑ってやるんだけどなー、なんて思ってたんだけど……。






 その後、王子から「お前も舞踏会に出席するんだ」と呼び出される事になるとは、今の私には想像もつかなかったのだった。







番外編と言いながら、本編に続いています。

(化学繊維でも魔力が宿っているため、魔法防御力がその辺の鎧よりも余程高いドレスなので、デザインの珍しさや色の美しさも合わせて、金貨数百枚出しても買えない衣装になっています)


人を呪わば穴二つ、でした。


すみません。またしばらく書けなくなると思います。

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