13話 お母さんは何でもできるんだよ!
エリスはアーサーに背を向けて立っていたが、次の瞬間、勢いよく振り返ると彼を強く抱きしめた。
「アーサー! 愛しい子、どれだけ心配したと思っているの!」
彼女の目から涙が溢れた。
そしてそのまま泣き出してしまう。
アーサーも母を抱き返し、ぎこちなく微笑んだ。
プリンセスたちは顔を見合わせ、安堵したように微笑んだ。
「お母さん……ここには僕たちだけじゃないよ……」
「あっ!? そうだったわ!」
エリスはアーサーから離れ、前へ視線を向けた。
プリンセスたちの姿を見た瞬間、驚いたように息を呑む。
「プリンセスたち?」
「こんばんは、エリス様……」
エリスはゆっくりと盗賊たちの方へ振り向いた。
その視線は氷のように冷たかった。
「私の大切な息子を誘拐しただけでも許し難いというのに……そのうえ王国のプリンセスたちまで自分たちのものにしようとしたの?」
「これから自分たちがどうなるのか、本当に理解しているのかしら?」
盗賊たちは思わずさらに一歩後ずさった。
最も狂気じみた者たちでさえ、今は沈黙していた。
姿を消していた盗賊の一人が見当たらないことに、アーサーは気づいた。
逃げたのか?
エリスから放たれる威圧感は凄まじく、呼吸をすることさえ苦しくなるほどだった。
「何を突っ立っている!? 早くあいつを殺せ!」
首領の叫びは半ば悲鳴のようだった。しかし誰一人として動かない。
「殺せと言っているんだ!」
「ボス……あれは……」
「エリスだ……」
「ノエルダークフィールドの妻だぞ……」
首領の顔がみるみる青ざめていく。
エリスはゆっくりと一歩前へ踏み出した。
彼女の靴の下で石がひび割れる。
エリスは微笑んだ。
だが、その笑みを見た瞬間、盗賊たちの背筋を冷たい悪寒が走った。
「いいえ」
彼女の瞳が黄金色に輝く。次の瞬間、大地が震えた。
凄まじい重圧が地下空間全体へと降り注ぐ。数人の盗賊がその場で膝をついた。他の者たちは苦痛の悲鳴を上げる。
アーサーは思わず唾を飲み込んだ。彼はこれほど怒った母を見たことがなかった。
そして、戦闘魔法を使う姿を見るのも初めてだった。
「お母さん……」
エリスは振り返る。その視線は一瞬で優しいものへと変わった。
「目を閉じて、あなた。プリンセスたちもお願いね」
「あ? は、はい!」
チャオはザオの目を閉じさせ、ザオはチャオの目を覆った。
「すぐに終わるわ」
首領は危険を悟った。
「逃げろぉぉぉ!」
盗賊たちは四方へ散った。だが、もう遅い。
エリスの背後に数十もの魔法陣が現れた。地下空間が眩い光に包まれる。
「私の息子を誘拐した罪……」
魔法陣が次々と回転を始める。
「プリンセスたちを誘拐した罪……」
空気そのものが魔力によって震えた。
「そして、私の息子の誕生日パーティーを台無しにした罪!」
エリスはゆっくりと手を上げる。
「王様が私より優しいことを祈りなさい」
盗賊たちの身体は完全に麻痺した。
全員がその場に縫い付けられたように動けず、苦しげな呻き声だけを漏らしている。
この女……強い……!
アーサーは母を見つめた。
胸が高鳴る。
前の身体に刻まれていた本能が少しずつ表に出始めていた。
エリスは子供たちの方へ向き直ると、両腕を大きく広げながら優しく微笑んだ。
「あなたたちのヒロインが助けに来たわよ! さあ、抱きしめてあげる!」
「もう、お母さん!」




