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シークレットトラック  作者: 豊岡和人
special thanks
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54/84

special thanks(4)

 その日から早速彩音はバンド練習へ復帰した。


 病欠によって彼女の演奏にも若干のブランクが生まれるかと思っていたが、杞憂に終わった。二日という空白を微塵も感じさせず、相変わらずの見事な手捌きで優美に弦を震わせている。


 やはり彼女のギターが加わると楽曲の表情がまったく変わる。音色に美しい彩りが足されて、アンサンブルがより調和する。旋律は鮮やかな輝きを放ち始める。


 僕たちの活動は順調に進んでいて、アルバムに収録する十三曲のうち十曲は、作曲自体だけでなくバンドでの演奏も、ほぼ完成と言えるレベルに仕上がっていた。残りも、二曲は既に作曲を終えて編曲の段階にある。ほとんど形は出来上がっているので音合わせも難無く進むはずだ。最後の一曲はちょうど作り始めたところだと彩音が語っていた。


 この調子でいけば九月末までに全ての曲を作り終え、全員で音を合わせることもできるだろう。そうなると十月から本格的なレコーディングを始めることも可能だ。十一月に開催される文化祭でのライブも一気に現実的になる。メンバーの誰かがそう口にしたわけではないが、この音の日々の中にあって、皆同じように感じていたと思う。


 しかし、その目算は外れた。


 最後の一曲が、一向に完成に至らなかったのだ。

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