special thanks(3)
「いやあ、ごめんごめん。急に休んじゃって」
三日ぶりに彩音の姿を見た瞬間、途轍もない久しさと安心感に駆られた。夏休み明けの学校に対しては何も感じなかったのになぜだろうかと考えてみたが、思えばゴールデンウィークの最終日から三日前に至るまで、ほぼ毎日顔を合わせていたのだから当然かと、すぐに得心した。
彼女は病み上がりのせいか少し顔色が優れなかったが、言葉を交わすその声色はいつも通りの柔らかさに包まれていた。僕は胸に不思議な心地良さを滲ませながら朝の時間を過ごす。
「そういえば、彩音は今日渡されるだろうけど、進路希望調査票がきてたぞ」
昨日の苦悩を思い出し何気なく伝えると、彼女は消沈するように声を漏らした。
「二年の二学期だもんね……修志くんはもう進路決めてたりするの?」
「……いや」と、僕は素直に返す。
「まだ全然、進学か就職かも決めてないな。とりあえず未定で書いといた」
その答えがいつまで許されるかは分からないが。
「そっか、私も未定かなあ」
彼女の小さな声を聞いた後で、ふと、初めて話した日の会話を思い出した。
「結局、彩音は音楽関係の道に進むつもりはないのか?」
その質問に対して彩音は以前、否定の言葉を語っていた。彼女の非凡な演奏を見た直後だったため、勿体ないと感じたことを覚えている。しかし、その後僕たちとバンドを組んで、答えに変化があったかどうか、少し気になった。
「ああ」と、彩音は何かから目を逸らすように瞳を左右に一度揺らした。そして少し視線を落とし、その顔を注視していないと表情の変化に気づかないような、とても薄い笑みを浮かべて答えた。
「うん、そうだね。やっぱりその道には進めないかな」




