【Bar風花 閑話:水島渚】 二つのカクテルと真紅の鋼鉄要塞 〜ケロロと呼ばれた看護官の甘酸っぱい夜〜
【前書き】
※ 本作は『Bar風花 -kazahana-』の日常を彩る、平内科医院と止まり木の一夜を描いた幕間エピソードです。
※ 医療と車とミリタリーをこよなく愛する、少し不器用で真っ直ぐな人々のお話となっております。
吹き抜ける山風が木立を揺らし、冬の足音を告げる十一月の風花町。
白壁の平内科医院では、昼下がりの陽だまりの中に、いつものように賑やかな怒号と笑い声が響いていました。
そして夜の帳が下りる頃、路地の奥にぽつんと灯る真鍮のランタンを頼りに、傷ついたひとつの魂が重いオークの扉をそっと押し開けます。
昼の喧騒を静かに洗い流す、二つの色を湛えたグラスの物語。
どうぞ、そっとカウンターの向こう側を覗いてみてください。
第一章:開かれたパンドラの隊内報
午後一時半の平内科医院スタッフルームには午前の喧騒が嘘のように静かで柔らかな昼下がりの陽光が斜めに差し込んでいた。
使い込まれた事務机の上で自衛隊福岡地方協力本部から届いた広報誌の束を整理していた平茉莉はふと手を止めた。
指先がめくったバックナンバーの片隅に妙に親しみのある鮮やかなカラーの集合写真が載っていたからである。
『連載:我が部隊の横顔 〜第4師団衛生隊の巻〜』
屈強な男性隊員たちが腕組みをして居並ぶ最前列の中央だった。
迷彩服を着てちょこんと体育座りをし満面の笑みでダブルピースを掲げる丸顔の少女がいた。
その写真の下に添えられた太字のキャプションを読んだ瞬間に茉莉の双眸が見開かれた。
【衛生科の爆弾娘・ケロロ水島3曹】
「愛くるしい丸顔に騙されるな! 演習場に入れば84RRのバックブラストを求めてアンビを急発進させ、格闘訓練では屈強な普通科隊員を容赦なく締め落とす衛生隊の侵略者。今日も元気に『〜であります!』と共鳴中!」
ぶふーーーーーッッ!!!
茉莉の口から冷たい麦茶が霧状になって豪快に吹き出した。
激しくむせ返りながら机の上のティッシュをひったくった。
隣でせっせと綿球を詰めていた水島渚を凝視する。
「げほっ、ごほっ……!ちょっと水島さん!!これ何よ!!」
「はひ?何でありますか茉莉副院長殿」
綿球のガラス瓶を抱えた渚がきょとんと首を傾げた。
小動物のように無垢なアーモンドアイと誌面に躍る物騒極まりない活字。
その落差に茉莉のチタンフレーム眼鏡がワナワナと激しく震えた。
「『ケロロ水島』って何よォォォッ!!」
「ゲロッ!?な、なぜその極秘コードネームを副院長先生が知っているのでありますか!?」
「極秘も何も、地本の広報誌に堂々とカラー写真付きで載ってんじゃないの!『愛くるしい丸顔に騙されるな』『衛生隊の侵略者』って何!?あなた自衛隊時代から完全にケロロ軍曹扱いだったんじゃないの!!」
渚は両手で自分のぷにぷにした頬を押さえ涙目で直立不動になった。
「ふ、不本意であります!自分は至って真面目に国防と衛生救護に邁進していただけであります!ただ演習場で84ミリの射撃訓練があると聞けば救急車で最前列へ猛ダッシュし、新隊員教育の格闘で自分を舐めてかかってきた普通科の巨漢隊員を袈裟固めで落とし、駐屯地の売店でHGUCのジムを大人買いして隊舎の棚を占領していたら……いつの間にか部隊長から『おい、ケロロ水島』と呼ばれるようになっていただけなのであります……!」
「全部身から出た錆じゃないのよ!!」
茉莉の鋭いカルテチョップが渚のつむじへ正確に振り下ろされた。
そこへ白髪を揺らした平研造院長がハセガワの精密ルーペを目元に当てながらのんきに顔を出した。
老眼鏡を鼻の頭までずらし渚の顔をしげしげと眺める。
「むっ、水島君、ケロロと呼ばれておったのか。うむ、あの吉崎観音氏の描くケロロ軍曹は頭部と胴体の比率が完璧な黄金比であり、コミカルな外見に反してガンプラを愛する職人魂……。水島君のその丸っこい輪郭とダンガンを転がす狂気的なドライブテクニックのギャップには実に相応しい愛称だな」
「お父さんまで感心して納得しないで!!」
カツ、カツ、カツ……。
廊下に響く大気を一瞬で凍りつかせるヒールの足音。
平志乃事務長がバインダーを抱えて音もなく現れ雑誌の『ケロロ水島』の文字へすっと視線を落とした。
「……ふうん。『ケロロ水島』ね」
「「ひっ……!」」
「確かにその丸顔で患者さんを油断させておいて点滴の針を一撃で仕留める手口は侵略者そのものね。……でも水島さん」
志乃は薄く氷の刃のように微笑んだ。
「当院を侵略しようなどと百年早いわよ。午後の外来カルテの搬送任務を五分巻きで完了させなさい。遅れたら貴女のその丸い顔を私のランエボのターボ吸気口にすっぽり嵌めて、風花峠で強制エアインテークにしてあげますからね」
「ゲロォォォッ!?顔面過給圧過多で肺が破裂するでありますッ!直ちに前進でありますッッ!!」
スタッフルームの引き戸が悲鳴のような音を立てて閉まった。
嵐のように走り去った丸顔の看護師を見送り茉莉は深くため息をついた。
第二章:その夜の『Bar 風花』にて
夜の帳が下り用水路の水音が静かに響く路地裏。
真鍮のランタンが灯る『Bar 風花』の重厚なオーク材の扉が力なく開いた。
磨き上げられた鉄刀木のカウンターの端へ水島渚は泥のように沈没していた。
「美和様ぁ……天2曹殿ぉ……。我が軍歴最大の恥部が平医院全軍に露呈してしまったのであります……」
手元には琥珀色の液体が飲み干され小さくなった丸氷だけが残る『アードベッグ十年』のロックグラスがあった。
ピート香の余韻が漂う冷たいグラスの横へ丸い頬をぺたりと押し付け渚はカウンターと同化している。
厨房から淹れたての深煎り珈琲を運んできた天が眼鏡の奥を和ませて苦笑いした。
「あはは……水島さん、地本の広報誌を見られちゃったんだね。でも『ケロロ水島』かぁ……うん、すごく水島さんらしくて可愛いあだ名じゃないか」
「か、可愛いだなんて天先輩!自分は常に研ぎ澄まされたスリーダイヤの刃でありたいのであります!」
「いやいや、木更津のヘリ隊にもいたよ。普段はすごく丸顔で人懐っこくてニコニコしてるのに、整備工具を握らせたりヘリの点検に入ると目つきが変わってもの凄いスピードで仕事を片付ける職人気質の同期がさ。周りから愛されてる証拠だよ」
天の穏やかな声が傷ついた渚の心へ優しく沁み渡っていく。
アーモンドアイに大粒の涙を浮かべ渚はカウンターの上で小さく身悶えした。
「て、天先輩……!仏のような包容力……!五臓六腑に染み渡るであります……!」
カウンターの中でグラスを拭いていた美和が美しい異色瞳を柔らかく細めて微笑んだ。
右のワインレッドと左のアンバーが間接照明を吸い込んで静かに艶めく。
「ふふ。でも渚さん、その丸くて可愛らしいお顔立ちだからこそ、風花町のおじい様やおばあ様たちも安心して痛い注射を受けてくださるのですよ。立派な渚さんの天賦の才ですわ」
美和はカウンターの奥へ立つとメジャーカップを一切手に取らなかった。
研ぎ澄まされた指先の感覚だけでボトルの注ぎ口を傾けていく。
エメラルドグリーンのメロンリキュールに爽やかなホワイトラムそして搾りたてのライム果汁をシェイカーへ手際よく注ぎ合わせた。
氷を満たしたシェイカーの中で小気味よい金属音とともに急冷された液体が丸みを帯びたクープグラスへ静かに注ぎ落とされた。
仕上げに小さな丸いライムスライスがグラスの縁へちょこんと飾られる。
「はい、渚さん。今夜は特別に……『グリーン・インベーダー』です。愛らしい緑の星からやってきた風花町の頼もしい看護官さんのために」
「美和様ぁぁーーーッッ!!」
渚はガバッと跳ね起きグラスを両手で押し戴くようにして感涙にむせんだ。
「いただきますであります!……グビリ……ッ!はふぅぅ……甘酸っぱいライムの酸味が過給圧で焼き焦げたピストンリングを冷却していく……!ケロロ水島、明日からもこの丸顔を盾にして平医院の最前線を防衛する所存でありますッ!」
「あはは、飲み干す勢いまでケロロ軍曹そのものだね」
天が吹き出し美和が鈴を転がすように声を忍ばせて笑った。
丸顔の弾丸娘を真ん中に夜の止まり木はどこまでも温かな笑顔に包まれていった。
第三章:製薬会社MRの淡い玉砕
午前十二時を回り午前の外来受付が終了した平内科医院の待合室はようやく患者の波が引いて静けさを取り戻していた。
消毒液のツンとした匂いが薄れ開いた小窓から十一月の乾いた山風が吹き込んでくる。
待合室の長椅子で新薬のパンフレットを抱えて待機していた大手製薬会社の若手営業マンは受付カウンターの奥へ幾度目かの熱い視線を送っていた。
視線の先にいるのは処方箋の束をトントンと机で揃えている水島渚だった。
襟足をすっきりと刈り上げた艶やかな黒髪ショートボブにくるりとした大きなアーモンドアイ。
小動物を思わせる愛くるしい丸顔にカルテをめくるたびちらりと覗く八重歯が清潔な白衣と相まって無敵の愛らしさを放っている。
小柄なのに背筋は竹を割ったようにピンと伸びており無駄のない所作がいっそ凛々しい。
(……可愛い。平医院に新しく入った水島さん、本当にタイプだ……)
青年はごくりと喉を鳴らした。
今日こそは単なる新薬の情報提供だけで終わらせるわけにはいかない。
スーツの襟元を正しネクタイの結び目を指先で整えると爽やかな営業スマイルを浮かべて受付の小窓へ歩み寄った。
「あ、あの、水島さん!午前中のお仕事、お疲れ様です!」
声をかけられた渚がパッと顔を上げた。
至近距離で見るその肌は透き通るような白さの中にほんのり桃色の血色が差している。
「ハッ!製薬会社の営業殿!お疲れ様であります!本日の新薬サンプルの兵站補給、ご苦労様であります!」
「あ、はは……兵站ですか。水島さんはいつもハキハキしていて気持ちがいいですね」
語尾の物々しさに一瞬たじろぎつつも青年はポケットからスマートフォンを取り出し画面を控えめに差し出した。
「あの、もしよろしければ……今日のお昼、駅前に新しくオープンしたイタリアンへご一緒しませんか?パスタがすごく美味しいらしくて。僕、車を出しますから。実は先月、奮発して某ドイツ車を買ったんですよ」
渾身のプレゼンテーションだった。
二十代半ばの会社員が乗る車として堅実さと知性そしてさりげないステータスをアピールする最高の切り札のはずだった。
だがその瞬間。
渚の愛らしい丸顔からすうっと血の気が引いていった。
くるりとしていた黒目が獲物をロックオンした戦闘機パイロットのそれに豹変した。
瞳孔がコンマ数ミリ絞り込まれ冷徹な光を宿す。
「……営業殿」
「えっ?は、はい」
「その某ドイツ車とやらは……まさか、軟弱なダウンサイジング直噴ターボに乾式七速DSGを組み合わせた、環境性能気取りのFFモデルではありますまいね?」
「えっ……?あ、はい、一・五リッターのマイルドハイブリッドですけど……燃費もリッター二十近くいきますし、静かで乗り心地も……」
言い終える前に渚の両手がカウンターの天板をバァン!と激しく叩いた。
身を乗り出した渚の人差し指が青年のネクタイの結び目を銃剣のように切っ先鋭く指差す。
「甘い!軟弱の極みであります!!」
「ひっ!?」
「男が四輪を操るならば!三リッターV6ツインターボの怒濤のトルクを四輪すべてに叩きつけ、ゲトラグ製マニュアルをガツンと叩き込み、アクティブエアロと4WSで大地をねじ伏せるように突進してこそ真の駆動兵装というもの!営業殿、今すぐその生ぬるい優等生車を下取りに出し、我がスリーダイヤが誇るヘビー級の鋼鉄戦艦——三菱・GTOツインターボをご購入なさい!さすれば、自分が助手席でラリーアートの四点式ハーネスを骨がきしむまで締め上げ、風花峠の下りをフルブーストの突進力でナビゲートして差し上げますでありますッ!!」
「ヒィィィッ!?す、すいませんでしたぁぁぁッ!!」
直撃を受けた青年は新薬のパンフレットを胸に抱え込んだまま自動ドアをすり抜けて脱兎の勢いで駐車場へと逃走していった。
けたたましく閉まるドアの音。
静まり返った待合室のカルテラックの陰からチタンフレームの眼鏡を光らせた平茉莉が音もなく現れた。
その手にはハードカバーのカルテホルダー。
バシィッ!
寸分の狂いもなく渚のつむじへ正確無比な角度で叩き落とされた。
「痛っ!?も、茉莉副院長殿!なぜ突如として我が頭頂葉へ対地精密爆撃を……!」
「突如じゃないわよこの戦闘狂ナース!!相手はアンタの可愛い顔に釣られて、純粋な下心で飯に誘ってきただけでしょ!なんでGTOで迎撃してんのよ!少しはそのAPP14の顔面偏差値を有効活用しなさいよ!」
「えーぴーぴーじゅうよん?何でありますかそれは!我が陸自の特殊装甲板のミルスペック規格でありますか!?」
「違うわよ!アンタの顔が!無駄に可愛いって話をしてんのよォォッ!!」
昼下がりの平内科医院に茉莉の喉を枯らした絶叫が虚しく木霊した。
第四章:その夜の『Bar 風花』にて
カランと真鍮のドアベルが澄んだ余韻を響かせ重厚なオーク材の扉が開いた。
風花町の細い路地に夜霧が漂い始める頃。
入ってきた水島渚の姿にカウンターの空気がわずかにざわめいた。
昼間の白衣姿とは打って変わっていた。
下半身を包むのは引き締まった脚のラインをくっきりと浮き彫りにするタフな黒のスキニーデニム。
上半身には厚手の牛革で仕立てられた細身のライダースジャケット。
襟足を短く整えた黒髪のショートボブから覗くほっそりとした白い項が店内の柔らかな間接照明に照らし出されてハッとするほど艶っぽい。
無骨な革の質感と愛らしい丸顔のギャップが独特の色香を醸し出していた。
カウンターの中で細身のグラスを磨いていた櫻庭美和がアンバーとワインレッドの異色瞳をふわりと細めて微笑んだ。
「あらあら、渚さん。今夜はまた、とても素敵なお召し物ですこと。ボーイッシュなのに、とても女の子らしくて可愛らしいですわ」
「美和様……!め、滅相もございませんであります!この牛革ライダースは、万が一の転倒滑走時にアスファルトによる皮膚軟部組織の裂傷を最小限に食い止めるための、完全なる個人防護装甲であります!」
「ふふ。そういう無骨な言い回しも含めて、渚さんは本当に愛らしい方ね」
厨房から淹れたての深煎り珈琲を運んできた天がカウンターの端に腰を下ろした。
眼鏡の奥の目元を緩めて苦笑する。
「うん、美和さんの言う通りだよ。水島さん、昼間も製薬会社の男の子に声をかけられてたんだってね。茉莉先生から呆れた電話がかかってきたよ。……でもね、その男の子の気持ちはよく分かるな。木更津のヘリ隊にいた頃もそうだったんだ。水島さんみたいに小柄で丸顔の、笑顔が可愛い衛生科のナースが演習場に来ると、普段は油まみれで無口な整備員やパイロットたちが、かすり傷一つないのに絆創膏をもらいに救急車の前に長蛇の列を作っていたよ」
「な、なんと……!それは明らかな医薬品の不正受給、軍紀の著しい弛緩であります天先輩!」
「いや、男心ってものだよ」
天が穏やかに肩をすくめると渚はぷにっとした柔らかな両頬をみるみる林檎のように染め上げた。
鉄刀木のカウンターに顔を埋めるように小さく丸まる。
「ううっ……自分はただ、6G72の過給圧を愛し、八四ミリのバックブラストに憧れ、ジム小隊の兵站を夢見る、一介の硬派な兵卒でありたいのであります……。可愛いだなんて、そんな軟弱な評価……照れ臭くてブースト圧が上がってしまうであります……」
美和はくすくすと鈴を転がすように笑いながらバーマットの上へ静かに手を伸ばした。
メジャーカップなど一切手に取らない。
研ぎ澄まされた指先の感覚だけでボトルの注ぎ口を傾けていく。
氷を満たしたシェイカーへ琥珀色のブランデー、深紅のチェリーブランデー、ホワイトキュラソー、搾りたてのフレッシュレモン果汁、そして色合いを引き締めるグレナデンシロップを一滴、リズミカルに注ぎ合わせた。
カチャ、カチャ、カチャ。
硬く締まった氷がシェイカーの内壁を小気味よく叩く軽快で澄んだ金属音が店内に響いた。
シェイカーの表面に瞬く間に細やかな白い霜が降りる。
ストレーナーを通して丸みを帯びたカクテルグラスへと静かに注ぎ落とされた。
現れたのは夜の帳に咲く花びらを思わせる深みのある薄紅色の液体だった。
「はい、渚さん。『チェリーブロッサム』です」
「チェリー……ブロッサム……」
「ええ。桜の花言葉は、『精神の美』そして『純潔』。どれほど大きな筒や硬い車が好きであっても、渚さんのその真っ直ぐで優しいお心は、誰よりも可愛らしくて美しいのですよ」
差し出されたグラスを渚は神棚の神酒を戴くように両手でそっと受け取った。
口元へ運び恐る恐るひとくち含む。
ブランデーの芳醇な温もりとチェリーの濃密な甘酸っぱさ、そしてレモンの爽やかな酸味が幾重にも重なって舌の上でほどけていった。
「はふぅぅ……!甘酸っぱい桜の香りが、煤けたピストンヘッドを包み込んでいくであります……!美和様……自分、明日からもこの顔面装甲を隠蔽迷彩として最大限に活用し、平医院の患者様を全力で癒やす所存でありますッ!」
「あはは、結局『隠蔽迷彩』にしちゃうんだね」
天が淹れたての珈琲の湯気に目を細めて笑った。
美和が目元を和ませて柔らかに声を忍ばせる。
不器用で熱苦しくてけれど誰よりも純粋な白衣の弾丸娘の周りに、今夜も『Bar 風花』の温かな静けさが優しく寄り添っていた。
【あとがき】
最後までお読みいただき、心よりありがとうございます。
今回は、平内科医院で日々奮闘する白衣の弾丸娘・水島渚と、彼女を取り巻く平家の面々、そして夜の『Bar風花』でのひとときをお届けいたしました。
どれほど無骨な鉄の塊や過給圧に憧れていても、誰かの痛みに寄り添い、懸命に命と向き合う彼女の真っ直ぐな心は、それだけで愛らしく、美しいものです。
緑の星の侵略者を癒やす『グリーン・インベーダー』と、純潔の美を讃える『チェリーブロッサム』。
グラスの向こうに揺れる小さな灯火と温かな余韻を、少しでも感じていただけたなら、書き手としてこれ以上の喜びはありません。
もしこの小さなお話にクスリと笑っていただけたり、胸の奥が少しでも温かくなっていただけましたら、下部の【ブックマークへの追加】や【評価(☆☆☆☆☆から★★★★★へ)】、温かいご感想などで応援していただけますと、次の一杯を紡ぐ何よりの励みになります。
夜の路地の奥、いつでも真鍮のランタンを灯して、皆様のお越しをお待ちしております。
天照(Bar風花)




