【Bar風花 閑話】 琥珀色の炎と薫香 〜晩秋の夜に二人が分け合う甘い煙のたゆたい〜
【前書き】
※本作は『Bar風花-kazahana-』の短編エピソード(櫻庭家の冬の夜)です。
※暖炉の炎、熟成されたお酒、そしてパイプの薫香が織りなす甘く静謐な日常を描いています。
※静かなBGMや薪のはぜる音を思い浮かべながら、ゆったりとお楽しみください。
晩秋の冷気が静かに街を包み込む夜、営業を終えた櫻庭家のリビング。
すべての灯りを消した静寂のなか、マントルピースの薪だけがふたりを優しく照らします。
グラスを満たす琥珀色の雫と、紫煙に乗って解けていく甘い息遣い。
世界に二人きりになったような、あたたかく愛おしい晩秋のひととき。
どうぞ、そっとカウンターの向こう側を覗いてみてください。
すべての灯りを消したリビング。
マントルピースの中で燃える一条山の薪だけがどこまでも柔らかなアンバー色の光を部屋全体に落としていた。
ふかふかの大きな革製クッションに体を預け厚手の絨毯の上ふたり並んで直接腰を下ろす。
天の腕の中に美和がそっと寄り添い肩から腰にかけての体温が隙間なく重なり合う。
外の冷え込みが嘘のように暖炉から放たれるぬくもりが身体の芯まで優しく染み渡っていった。
天の右手には手削りの丸氷がからりと音を立てる重厚なクリスタルグラス。
深みのある琥珀色のウイスキーが揺らめく炎を吸い込んで静かに輝いている。
美和が手にする大きなスニフターグラスからは手のひらの熱で温められたヴィンテージ・ブランデーの芳醇で甘いアロマがふわりと立ち上っていた。
「……ふふ、天ちゃん。こうして床に座って火を眺めていると、世界に私たちふたりしかいないみたいね( ´∀` )✨」
美和が異色瞳を美しく揺らし愛おしそうに天の横顔を見上げる。
天は穏やかな笑みを浮かべると使い込まれたブライヤーのパイプに静かに火をつけた。
小さな炎が煙草葉を炙り暖炉の薪が放つ澄んだ木々の香りと火皿から立ち上るバージニア葉の甘い薫香が部屋の静寂の中にゆっくりと広がっていく。
「そうだね、美和さん。お店や取材の忙しさを忘れて、こうして寄り添うこの時間が、僕にとって一番の宝物だよ( ´∀` )」
天がウイスキーをそっとひとくち含みゆっくりと紫煙を解き放つ。
煙の向こうで一条山のクヌギの薪が「パチッ……」と澄んだ音を立てて小さく爆ぜた。
美和はブランデーの豊かな余韻を静かに味わうと天の胸元にすっぽりと頭を預け空中にたゆたう煙を細い指先で慈しむように撫でた。
「ねぇ、天ちゃん……そのパイプ、私も少しだけ吸わせて?( ´∀` )✨」
甘えるような声に天がふっと目元を緩めて優しくパイプを差し出す。
美和が薄い唇でマウスピースを咥え静かに煙をくゆらせるとそのやわらかな空気の中にふたりの香りと甘い呼吸が溶け込むように混ざり合っていった。
暖炉のすぐ脇では絨毯の上で狐白が丸くなり心地よさそうに小さな寝息を立てている。
炎の揺らぎと芳醇な酒の香りとパイプの薫香。
大好きな人の体温にすっぽりと包まれながら風花町の冬の夜はふたりだけの甘く静謐な余韻とともにどこまでも深く更けていく——。
【あとがき】
最後までお読みいただき、本当にありがとうございます。
今回は『Bar風花』の営業が終わったあと、櫻庭家のリビングで静かに更けていく冬の夜を描いてみました。
普段は凛としたプロとしてカウンターに立つ美和さんが、暖炉の前で天ちゃんにすっぽりと体を預け、少し甘えながらパイプをねだる時間を、お酒や薫香のシズル感とともに味わっていただけたら嬉しく思います。
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冷え込む夜には、どうぞ温かい一杯とともに穏やかな時間をお過ごしください。
天照(Bar風花)




