↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

33/48

第三十三話「血の束縛」

 バシュンッ!!!


 乾いた音と共に、空気が裂けた。


 先に動いたのは――シュンだった。


「来るぞッ!!」


 俺の叫びが終わる前に、視界の端で“それ”が動いた。


 一瞬。

 たったそれだけの時間だった。


 目で追える限界の速度で、群青の鎧を纏ったシュンが、まるで地を滑るようにこちらへ詰め寄ってきた。

 足音すら置いていくかのような――尋常じゃない速さ。


「はああっ!」


 迫る剣閃。

 避ける時間などない。刃は、一直線に俺の首を狙っていた――!


「甘いッ!!」


 直前、ニイコタが滑り込むように割って入り、双剣でシュンの剣を弾いた。


 ギィィィィンッッ!!


 火花が舞い、鉄と鉄がぶつかる金属音が王室に響く。


「うっ……!」


 だが、その反動は凄まじかった。

 シュンの攻撃を受け止めたニイコタの小さな身体が、そのまま吹き飛ばされる。


「ニイコタッ!!」


「っ、大丈夫です……!」


 返事はあるが、今の一撃は重かった。

 俺の鼓動が加速する。


 シュンはその反動で一瞬、バランスを崩しているように見えた。


「今だッ!! 喰らえ――!!」


 俺は両手を前に突き出し、簡易魔術の魔力を最大限に込める。


 長い溜めは要らない。即座に放つ。

 その火力は、並の冒険者なら影も残さず吹き飛ぶ威力だ。


 だが――


「おっと?」


 シュンは軽く笑い、なんと空中で足を蹴るような仕草をした。


 シュンの体が、弾かれたように横へと滑った。


 ――躱された!? あの体勢から!?


「バカな……ッ!」


 着地したシュンは、うっすらと笑みを浮かべながら、まるで踊るように近づいてくる。


「はい、おつかれー」


 その瞬間――


 ギィィ――!!


 群青の剣が、俺の胸を浅く裂いた。


「ぐっ……!!」


 鋭い痛みとともに、鮮血が視界を染める。

 傷は浅い……だが、出血が多い。やばい。


(……長期戦はまずい)


 そう判断したのか――


「永和さん、下がってて下さい!」


 ニイコタが飛び出す。

 あの技を使う気だ。


「《超双剣(オーバー・ツイン)》ッ!!」


 緑の残光が走る。


 ニイコタの身体が風と一体化するように、左右の剣を素早く繰り出した。

 一撃、一撃がまさに必殺。風のように舞い、刃を滑らせるその技は、双剣スキルの頂点の一つ。


「くっ……!」


 だが、シュンは――


「せいっ!」


 その勢いごと、剣を下から大きく振り上げて弾き返した!


「っああっ!?」


 剣と剣がぶつかり、跳ね返されたニイコタの腕が裂かれる。

 鮮血が飛び、赤い軌跡が空を舞った。


「ニイコタッ!!」


「……大丈夫、かすり傷です!」


 必死に立ち上がる彼女。

 だが、シュンはそれを見て、嫌な笑みを浮かべていた。


(クソッ……ここで、終わらせるッ!!)


 今こそ、奴の隙だ。


 俺は両手を広げ、最大出力で魔力を練り上げる。


「今だ――!!」


 ……その時だった。


「《血縛(ブラッティ・バインド)》」


 聞き慣れない単語が、空気を裂いた。


「……がっ……!?」


 全身が、突如として鉛のように重くなる。


 いや、それどころか――


「動か……ない……!?」


 魔力が、止まった。

 手足も、動かせない。


 その瞬間、胸に激痛が走る。


「がっ――ああぁっ!!」


 さっき斬られた傷口を、まさにピンポイントで蹴り飛ばされたのだ。


 体が宙を舞い、床に叩きつけられる。


「がはっ……!」


 視界が揺れる。

 喉に血が上がってきて、息が詰まる。


「永和さん!!」


 ニイコタの叫びが遠くに聞こえた。


「あなた……いったい、何をしたの?」


 血を垂らしながらも、ニイコタは問う。


 それに対して、シュンは悪びれもせず、血のついた剣をぺろりと舐めた。


「これが俺のスキル、《血縛(ブラッティ・バインド)》!」


 ――スキル、だと。


 ニイコタが目を見開く。


「もしかして……斬りつけた相手の血を取り込み、その血で動きを封じる、拘束系のスキル……!?」


「おおっ! 当たりぃ~! 君、頭いいねぇ!」


 舌を出し、ゲラゲラと笑うシュン。


「クソッ……!」


 これは、まずい。

 あのスキル、地味だが相当やっかいだ。

 一撃でもくらえば、動きが止められる。


 そして何より――


 シュンは、強い。


 体術、スピード、剣技、そしてスキル……

 すべてが高レベルだ。


「魔王の配下になったくせに、調子に乗るなよ…!」


 だけど――


(負けるわけには、いかない)


 この怒り、必ずお前にぶつけてやる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
永和は殺してもいいけど、ニイコタは絶対殺させないんだから!
ニイコタちゃん!!嫌だ!もう永和くん置いて にげて!!!そしてしゅんはおれが殺る。
次の話が楽しみすぎて毛穴爆増!!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。