第二十七話「新たな仲間」
ギルドの掲示板前は、いつものように人だかりができていた。
昼前ということもあり、今日は戦闘系の依頼よりも、物資運搬や小規模討伐が多め。
掲示板に目を通していた俺――村上永和は、一枚の紙を貼り付けた。
自分で書いたものだ。
《パーティメンバー募集》
●依頼内容:共に依頼をこなせる仲間を探しています
●条件:ある程度戦えること
●報酬:成果に応じて山分けします
●活動拠点:この町
●興味があれば、近くの席で声をかけてください
ユーニスがいなくなって数日。
独りで依頼をいくつかこなしてみたが、正直、やっぱり限界があると痛感していた。
(強くなったつもりでも、俺はまだ“ただの高校生”だった頃の弱さを完全には捨てきれてない)
それでも、前には進まなきゃいけない。
ギルドの一角、窓際のテーブルで紅茶を飲みながら、俺は誰かが来るのを静かに待っていた。
椅子に座って五分と経たない頃。
「……あの、すみませんっ!」
紅茶を飲んでいた手がピタリと止まる。
声の主に目をやると、そこには――
明るめの緑色の髪。肩までのボブカットに、くるりと外跳ねした毛先。
柔らかな色のレザー装備に、腰には小ぶりな双剣が二本。
年齢は……ぱっと見で十代半ば、いや、前半?
(ま、待てよ……高校生、どころか中学生にも見えるぞ……?)
小柄で細身、声もどこか幼い。
こんな子が、戦えるのか……?
思わず目を見開いてしまった俺に気づいたのか、少女は緊張しながらも、真っ直ぐに名乗った。
「私、ニイナ=コタルティスっていいます! えっと、皆からは“ニイコタ”って呼ばれてて、できればそう呼んで欲しいです!」
「……ニイコタ?」
「はいっ! 名前の前と後ろの二文字ずつを取って、ニイコタです!」
(ニイナ=コタルティス……ニイコタ……いや、可愛いけど!)
名前のセンスも顔も全体的に“あざとさ”の塊みたいだ。
なにより、細い腕や足、どこからどう見ても戦場でバリバリやってるタイプには見えない。
(マジで大丈夫か……?)
口には出さないまでも、そんな雰囲気が出ていたのだろう。
ニイコタは慌てて言葉を継いだ。
「こ、こう見えてもちゃんと戦えるんです! スキルもあるんですよ!」
「……どんな?」
すると、彼女はにっと笑って、自信満々に言った。
「《超双剣》です!」
「……!」
スキル名を聞いて、思わず身を乗り出してしまった。
《超双剣》――それは双剣系スキルの中でも、攻撃速度と手数、さらに瞬発力に優れる高等スキル。
特に接近戦においては、相手が一瞬でも怯めば致命傷を与えることができる、一種の“必殺”系だ。
(見た目で判断するのは危険ってことか)
彼女は続けて、スキル発動時の得意動作や体捌きについてもさらっと話し出した。
それは実戦を重ねていなければ語れないリアルな内容だった。
……ちゃんと戦える。間違いない。
しかも、スキルも強い。これで弱いわけがない。
ふと、疑問が湧いた。
「でも……なんで俺のパーティに? もっと強いパーティもあったんじゃ……」
そう問いかけると、ニイコタは少しだけ照れたように笑った。
そして、口を開く。
「……私、こういう時の“勘”って、当たるんです」
「勘?」
「はい。 なんていうか、“ここだ”って、ビビッときたんですよ。 あ、この人となら、ちゃんと戦えるって」
まっすぐな瞳だった。
ふざけているわけでも、お世辞でもない。
本当にそう思ってくれているのだと分かった。
「……勘ねぇ」
思わず苦笑いしてしまった。
それは俺が、前にユーニスに対して感じていた感覚と、少し似ていた。
(今の俺に必要なのは、こういう“感覚”かもしれないな)
――強そうだし、戦えるし、何より、悪い子じゃない。
「よし、じゃあ今日からよろしくな。ニイコタ」
「はいっ! 永和さん!」
元気よく返事を返して、ニイコタが手を差し出す。
俺も手を伸ばして、それをしっかりと握り返した。
あたたかくて、小さな手だった。
(俺はまた、仲間を得たんだ)
そして、新たな日々がここから始まる。
ユーニスとの記憶を胸に、ニイコタとの新しい冒険が、今、動き出した。




