表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/48

第十九話「チーム」

 膝が震えていた。

 視線がブレる。呼吸が浅くなる。

 俺は、恐怖していた。


 ムトゥの未来視。ラーヴァの反射。


 このままでは勝てない。

 どれだけ魔力を込めても、どれだけ必死に叫んでも、力だけでは通じない。

 俺たちの攻撃はすべて跳ね返され、俺たちの作戦はすべて読まれる。


(ダメだ……これじゃ……)


 だが、その時だった。


 頭に浮かんだ。

 あの“森”での戦い。

 初めて、ラーヴァと対峙したあの時。


 あの時、俺とユーニスは息を合わせていた。


 ユーニスが決死の覚悟で攻撃を入れる。

 ユーニスが削った隙に、俺が全力の魔法を放つ。


(そうだ……あの時は、俺たちは二人で戦ってたんだ)


 今は、違う。

 俺はムトゥを、ユーニスはラーヴァを。

 バラバラに戦っていた。


 単体で見れば、俺もユーニスも、この町の冒険者の中ではきっと強い。

 けれど、黒騎士は強力なスキルを保有し、戦闘を得意とする団体である。


 こっちは違う。

 俺はただの元高校生で、ユーニスは長らく一人で戦ってきた異形の少女だ。


(俺たちは、“強い個人”ではあっても、“強いチーム”じゃなかったんだ)


 だから――だから、負けてたんだ。


「ユーニス!!」


 俺は叫ぶ。


 反射の衝撃で吹き飛ばされたユーニスが、壁にもたれて立ち上がろうとしていた。


 彼女の元へ駆け寄る。

 傷ついてはいるが、戦える。目の奥はまだ燃えている。


「……何か思いついた?」


「ああ。 ……バラバラに戦ってちゃ勝てない。 あの時みたいに、二人で戦わなきゃ!」


 俺の言葉に、ユーニスは一瞬だけ目を見開いた。


 そして、笑った。


「なるほど、確かにそうだ。 やってみようか」


「はいっ!」



「……そろそろ終わりにしましょうか」


 再び、ラーヴァ=ミストリアが構える。

 巨体がのそのそと動き出す。その動きには、一分の隙もない。


 ユーニスが前に出る。


 まるで炎のように軽やかに、鋭く、舞うように前へ。

 足音ひとつ立てず、鋭い蹴りがラーヴァの脇腹へ――


「《反射カウンター》」


 重低音。

 ユーニスの蹴りが返される。だが、想定内。

 ユーニスはその衝撃すら後方への回避運動に変えて、その場を離脱する。


 そしてそのタイミングで――


「そこだっ!!!」


 俺が放ったのは、即座に出せる範囲での最大火力簡易魔法。


 放たれたそれは、光の塊となってラーヴァの肩を焼き、鎧ごと吹き飛ばした。


「っしゃあああああ!!!」


 手応えあり!


 肩の装甲が砕け飛び、焼け焦げた金属が転がる。


「やった、ついにダメージが――」


「…………」


 ……何かがおかしい。


 ラーヴァの肩の鎧が砕けた。そこまではいい。


 だが、その下が――おかしい。


「……肉体が……見えない?」


 鎧の下にあるべき“肌”や“筋肉”が――なかった。


 黒い霧のようなものが、そこに渦巻いている。


「な、なんだこれ……」


(そういえばあの森でも、ラーヴァは兜を破壊された時、すぐに撤退していたな。 何かあるとは思っていたが…)


 その時。


「…………なに、するんですかぁ……」


 ラーヴァが、初めて“感情”を乗せた声を発した。


 頭をゆっくりとこちらへ向ける。

 兜の奥――その闇の中から、怒りの気配が溢れ出す。


 あまりにも異様。

 まるで、人間ではない。

 叫び声でもなく、悲鳴でもない。

 “怒り”という概念が、ただ音になったような震え。


 彼女の両手が、大剣の柄を強く握り直す。


 その柄が、音もなく、わずかに軋んだ。


 金属が、怒りに耐えきれず、悲鳴をあげている。


 ラーヴァの全身から吹き出す黒煙。

 それが、鎧の隙間からまるで蒸気のように噴き出す。


 そして、再び。


「……殺してあげる」


 その声とともに、ラーヴァが地を蹴った。


 先程までとは桁違いの速度で――“何かが変わった”。


「第二ステージ……ってやつかよ……」


 ゾクリ、と背筋が冷たくなる。


「ユーニス、気をつけて……!」


「わかってる!! ……こいつ、本気出してきた……!」


 だが、もう退けない。

 この戦いは、今ここで――


 終わらせるしかない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
イッイッイライラー ラーヴァについてる怒りマーク
煙もくもく、ラーヴァおこおこって感じですね
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ