025 帰還
奴隷契約を結ぶ為ルドルの村へ立ち寄れば、村長と役人の悪事に出くわした。
他にも余罪は在ると思い、内緒で文を侯爵家に送り付けておく。これで、少しは風通しも良くなるだろう。アイーシャ達の件は少し様相が変わってしまう。証文により俺と奴隷契約を結んだのはアイーシャとカレンと言う名の女性だけだったからだ。
「君達が良いなら、このまま全員を引き取ろうと思うけど、どうする?」
「喩え、借金が無いとしても生きてはいけません。いずれ同じ結果に成ります。ご主人様がお許しに成るのであれば、皆付いて行きたいと申しております」
因みに借金奴隷とは、返済が済めば解放される奴隷の事だ。そして自ら奴隷として身を売る事も可能だ。この場合お金は本人に渡される仕組みである。
「じゃこのままって事で話を進めるね」
ルドルにも真面な役人と助役は居た。第三者を用立てて、子供達と奴隷契約を結ぶ手筈が、どうにか無事整った。
「食事と住まいは提供する。給金は月に最低銀貨十枚。これで宜しいなら、互いに契約書へサイン若しくは拇印をして下さい」
晴れて五人は俺の身内と成った。
『名前:アイーシャ。LV:13。年齢:十七歳。性別:女性。職業:狩人。HP:60。MP:70。力:45。防御力:35。機敏性:50。器用:50。習得スキル:弓術:LV:3。小剣:LV2。習得魔法:初級・風属性LV3。火属性:LV2』
『名前:カレン。LV:3。年齢:19歳。性別:女性。職業:無し。HP:35。MP:10。力:15。防御力:8。機敏性:5。器用:15。習得スキル:片手剣:LV:1。弓:LV1。料理:LV:1習得魔法:生活魔法』
『名前:テトリア。LV:2。年齢:8歳。性別:女性。職業:無し。HP:8。MP:8。力:3。防御力:3。機敏性:3。器用:5。習得スキル:無し。習得魔法:生活魔法』
『名前:アレン。LV:4。年齢:15歳。性別:男性。職業:無し。HP:30。MP:12。力:20。防御力:13。機敏性:15。器用:10。習得スキル:片手剣:LV:1。弓:LV1。習得魔法:生活魔法』
『名前:トット。LV:3。年齢:14歳。性別:男性。職業:無し。HP:25。MP:15。力:14。防御力:10。機敏性:5。器用:15。習得スキル:弓:LV1。習得魔法:初級・風属性LV:1。生活魔法』
の以上だ。アイーシャが、ズバ抜けた存在だ。カレンの年齢にも驚かされる。
「よし!明日にはヴェイルだ。皆明日から頑張るんだぞ」
「「「「「はい」」」」」
そして翌日、夕方前に懐かしのヴェイルへと到着。工藤もホッとした表情を浮かべる事が出来た。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「コレが預かった手紙です」
「確かに受け取りました。それで、お父様とお母様はご健勝でしたかしら」
「はい。奥方様のお手紙で少々私は困りましたケド。お蔭で侯爵家の皆様には、可愛がって頂く結果と成しました。奥方様の深い考えに救われ有難く存じます」
「それは、貴方に文を預けた甲斐が在りましたわ」
帰って早々俺はレイ達と別れ、ヴェイル領・領主の館へ赴いた。既に帰る頃だろうと夫人から登城の知らせが宿に届いてたからだ。
「それで、町の感想は如何ですか?」
「ヴェイルも素晴らしい町ですが、シャルロット様が育ちに成られた町も大変素晴らしい所で御座いました」
「そうでしょう。そうでしょう。旅の疲れも在るでしょうから、今宵はもう下がっても宜しくてよ」
早々に館を下がり宿へと向かう。コッチでも女将にキツイ取り調べが待ってると思うと気が重い。
「やっと帰って来たね。待ってたよ」
「どうも」
「ヘレンの話や女たちの話はレイから聞いた。アンタらしいちゃ言えば、アンタらしい話だ。其処は受け入れよう。で、問題は教会の話だ。私しゃ~古い友を裏切ってアンタを守ったんだ。キッチリ聞かせて貰えるんだよね」
「そうじゃ!ワシも気が気でなかったぞ。お蔭で酒も減ったわい」
「俺もだ。雅か教皇殿に嫌味を言われるとは……」
「イキナリ消えたと思ったら、三にも女性が増えるだなんて信じられません」
何故だ?何故なんだ?此処は宿屋『ルスト』の筈なのに……それも書入れ時の忙しい夕時なのに、普段いる客たちの姿は食堂に無く、代わりに居たのは親方を始めギルド長のギャバンと受付嬢のシャルルさん。キッチンで、腕を振るう筈の女将ベラが手ぐすね引いて待っていた。
「なんと、『彷徨い人』とはね」
「変じゃとは思って居ったが……」
「斜め上の驚きですね」
「ホホホー!宿に箔が作って奴じゃないか驚きを超えて呆れるね~」
まぁ~報告はしないといけないメンツばかりなんで、一回で済んだのは有難かった。その分、締め上げのダーメジもデカかったんだけどね。心配してた面々も俺の話を聞いて一安心して貰った。
無事にヴェイルへ戻ってきた矢先。世話に成ったメンツから締め上げを喰らった俺。レイの手厚い看護の夜を迎え、翌朝には心身共に生き返る事が出来た。
今朝は女将にたっぷりの朝食を用意してもらう。
「今日の予定を伝える。昼前までに皆、綺麗に身を整えて置く事。レイが連れて行ってくれ」
子供達はお世辞にも綺麗とは言える姿では無かったのだ。
「午後には、カレンとテトリアは女将の下で料理の修行と店の手伝いを頼む。コレは手料理の幅を広げる事と給仕を学んで貰う為だ」
二人は元気よく頷いてくれた。
「三人は、レイと共に親方の工房へ行ってくれ、装備を揃える」
此方も元気よく頷いてくれた。
「旦那様は如何なさるんですか?」
「……俺は、領主様から呼び出しだ。特に夫人からの要請が大きいみたいだな」
ガックリと頭が垂れた。理由は判ってる。昨日渡した手紙の内容だろう。コレも越えなければならない山だ。仕方が無いと諦めるしか道は無い。
そう言って解散し、俺は早々に館へと足を向けた。
「おぉ~クドウ殿。待って居ったぞ。ササッ此処へ座られよ」
声を掛けて来たのは、ご領主フレーゲル伯爵だ。これには俺も首を傾げてしまった。何故に?……考えれば直ぐに分かる事だ。侯爵家と伯爵家は領地が近いばかりか親戚筋だ。片方に俺の素性が割れているならば、此方にも届くのも当然。其れも俺が運んできた手紙でだ。自分で自分の首を絞めたって事ですね。
「それで、本日のご用件は?」
「此方の町に家を構えてはどうかと思ってな。候補地を勝手ながら選んでおる。如何かな?」
そう来ましたか。だけど、俺の考えは少し違うんだよね。まぁ~俺が持って来た手紙と俺が送った手紙とでは状況が変わったからね。此処はしっかり説明しないとね。間違うと角が立ってしまう恐れがある。
「その事で私が発見した事とご提案したい、議が在ります」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「村に湯が沸く事は知っておった。雅か、本当にその様な効果が在るのか?」
「念の為源泉の廻りも調べました所、私の知るモノと同じです」
「フム……それがクドウ殿の知り得し知恵ならば、信じる他なかろう」
「そこで問題が起こります。領地は侯爵家。ですが路順は伯爵家と結ぶ道。此処で開発を進めるだけでは、いずれ双方の御屋敷に亀裂が入らぬかと心配です」
「其処まで広まるモノか?」
「はい。宣伝次第では大きく」
「なんと……」
「思うに湯の効能は『美肌の湯』伯爵様が手を拱いていると、夫人が……」
「皆まで言ううな!そうか。クドウ殿は既に感じ取って居ったか」
「あの方の母君にお逢い致しましたゆえ」
「そうじゃな……そうじゃ。あの方が母君じゃからな……」
どこか遠くを見つめる伯爵様。まだ会話は終わってませんよ。暫くして意識が帰って来た伯爵様と話を続ける。
「失礼ながら、伯爵様の後に婦人と御話しするのを気が滅入ります」
「話す内容を既に理解しているのか?」
「多分、彼方の御屋敷で披露した菓子の件だと思います」
「苦労を掛けるな……だが、合い分かった。村の件早々に両家で話を纏め王家の了解を得よう。当然クドウ殿が良き案を出してくれると思って良いのだな」
「お任せ下され」
伯爵様から約定は取った。残るは、夫人との攻防だ履くさまと話をするより気合を入れて会談に臨む。
「雅か、このままエメロスに移り住むとは言われ無いですよね」
「エメロスに住む気は在りません。唯、旅の途中で良い土地を見つけました」
「他の地ですか!?エメロスには妹が住んで居るのにですか?」
「遊びにはお伺いしますが、定住する地は他の場所です。彼の地ならば、きっと奥方様を始め多くの方々をお招きする事が叶うと思って居ります」
先ずは、俺が家を建て、侯爵家と伯爵家の両方に示す方が良いだろう。あの湧水の素晴らしさを知れば、大きな産業に代わる筈だ。
「では、家の件は此処までにします。本題に移ります。此処でも同じモノが作れるかしら」
「さぁ~どうでしょう?牛の数はエメロスと比べて如何ですか?」
「三割が限界でしょうね」
「でわ、違うモノをお薦めします」
「……良いでしょう」
夫人はそれだけ言って俺を開放してくれた。在る意味窮地に追い込まれたかもしれない。だけど、迷ってる暇は俺には無い。
「旦那様。三人の装備如何ですか?」
「魔法攻撃って武器は杖じゃ無くても良いんだ!?」
「なんじゃそれは?聞いた事も無いぞ。大体魔素の量から考えてデカイの二、三発放って後は武器で攻めるのが普通じゃわい」
「アイーシャには弓と短剣。アレンは長剣か大剣はどうじゃ?トットは剣と盾か槍で良いのではないか?」
「成程ね。親方がそう言うなら、俺は問題ないよ。後、鎧は皆レイと同じで良いんじゃないの?」
「そうじゃな。それで良かろう」
「して、お主の注文の槍じゃ。ホレッ」
やっと俺の下に念願の槍が手元に届いた。
本日二話目です




