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どうしてこうなった?  作者: 英心
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024 旅先での出会いー②


 ヴェイルへ帰る途中で立ち寄った村『ナッシン』其処で工藤達が見たモノは、親に棄てられ借金に苦しむ子供達だ。



「旅のお方は一体何を、為さるおつもりですか?」

「売られると言うならば、俺が纏めて買ってやる。序に村の外れの土地も買って住まおうと考えて居るがダメか?」


 突拍子も無い発言に村長が驚いた。子供たち全員を買うなど普通の旅人がする訳が無いからだ。


「旦那様、今の言い方では勘違いをされますよ」

「えっ!?そうなん」

「……旅の方は……奴隷商の方ですか?」

「ホラ!間違われた。村長それは違います。旦那様は村の外れの土地を買い家を建てる御積りです。その給仕として子供達に仕事と寝床を与えると言う事です」


 レイの補足で村長はやっと理解した様だ。


「其れは有難い話ですが、此処は何も無い村ですよ。苦では無いですか?」

「俺達は冒険者だから。其れに馬が在る。荷馬車も用意するだろうし、生活に困る事は無いだろう。食材は其れこそ、村から売ってくれるだろ」


 有難い話だ。僅かでも通貨が回ればと常日頃思っていたのだ。唯、村まで買いに来るもの売りに行く者が居なかった。だから、余った作物は泣く泣く棄てて居たからだ。



「では、借金は隣村の村長と話を付ければ良いんだな。後は土地の購入と言えの建設許可か、そっちも侯爵様に手紙を出しておくか」

「旅人様はご領主様をご存じで?」

「あぁ~俺達の乗る馬も侯爵様から頂いたモノだ」

「へぇへへー」


 と村長は工藤を前に、いきなり土下座する。正直「馬~」の下りは必要無い。牽制としては十分な効果が発揮するだろう。さて、残った問題は当の本人達との話だ。勝手に話を此処までしておいて感は強いが、話を通さない訳にもイカナイ。


「これで、全員かな?」


 工藤がそう言って集められた子供達を眺める。少女と呼べる年齢の娘が二人。少年が二人。幼女が一人の計五人が工藤達の前に並ぶ。


「君達は秋にも売られバラバラに成る事は知ってるな」

「それは!……」


一人の少女が何かを言おうとするがレイが抑えた。


「勝手だが、俺が君たち五人を買わせて貰う」

「えっ!」

「そう、五人全員だ。そして来年の春頃には、湧水の辺りに家を建てる予定だ。君達も皆一緒に住んで貰うぞ。それで、春までに色々と学んで欲しい事が在る。だから明日、一緒にヴェイルに連れて行く。急だが勘弁して付いて来てくれ」


 子供達には寝耳に水な話だが、本当ならば決して悪い話では無い。一人の少女が代表して工藤に問い掛けた。さっき会った少女だ。


「その話は信じて良いのですか?私達を纏めて奴隷にされると?此の先も私達は村に住み続けられるのですか?」

「うん。そのツモリだ。俺達は冒険者だ。村長との話は付いている。借金のカタを持つ人とは明日会いに行くけど、多分問題ない。家の件も侯爵様からの許しは貰えると思うよ。皆には家の仕事を任せるケド、ヴェイルで鍛えもする。希望者が居れば、共に冒険を誘うかもしれないケド良いかな?」


 工藤の話に子供達は目を合わせ、一斉に頷いた。


「じゃ~まずは、たっぷり夕飯を食べてくれ。宿屋に揃って来なさい既に話は通している。安心して腹いっぱい食べると良い」


 このセリフに子供たちは大喜びだ。唯一人の少女を除いて……彼女は一人神妙な顔付で工藤を見つめ続けていた。



 村長から古い荷馬車を銀貨二十枚で貰い受け、宿には子供達の食事代と明日の弁当代として銀貨五枚を渡していた。何方もホクホク顔で工藤の指示に従って居る。そして、子供達も久しぶりの温かい料理に喜んでいた。


「お話を聞かせて下さい」


 陽が暮れて夜空に星が浮かぶ頃、工藤は少女に呼び出され、宿の外に居た。最初に在った少女で名前をアイーシャと言う。


「何故、施しを与えて下さったのでしょう」

「偶然かな?それとも女神様の導きかも知れないね」

「茶化さないで下さい」

「君は女神様を信じない?」

「本当に女神様が御出でなら、わ、私達はこんな風には……」

「そっか……でも、今までも全部ひっくるめて俺と出会う為のモノだったとしたら?俺は女神様と話をした事が在る。多分二回だ。一回は確実だけど、二回目の出会いもそうだと思ってる」


 子供達の話を聞かせた老人も、きっとそうだろう。と工藤は思っていた。


「ほ、本当ですか?」

「示す事は出来ないけどね。それと此の先に家を建てるのも本当だよ。湧水が在るのは知ってるよね!?」

「はい。温かい不思議な湧水です」

「アレが俺の目的の一つだ。巧く行けば、この村は寂れ続けずに栄えるかもしれない。ソンな湧水なんだよ」


 工藤の話にアイーシャが目を細めた


「……独り占めする考えですか?」

「否、でも口で言っても誰も理解できないでしょ。だから最初に俺が行動で示す。其の為に君達が必要なんだよ。……コレで少しは安心したかな?」

「不安ですが……信じる事にします」

「そうしてくれると有難いね。じゃ~君も皆と夕食を食べておいで」


 ペコリと頭を下げ、アイーシャは工藤の元を離れた。そしてレイが代わりに近付く。


「しっかりとした娘ですね。其れに彼女はエルフの血を引き継いでいます」

「そう?気づかなかったな。でも賢いし、人を思う気持ちも在りそうだね」

「純血では無さそうですから。ですが粗、覚醒すると思います。出ないとお導きが在りませんよ」


 アイーシャに湧水の話をした事で、目的を逸らせた。アイーシャとの出会いが彼等にとって重要だったのを今は知らせない方が良いと思ったからだ。助けた事は、施しじゃ無い。他の子も必要で在ってお荷物じゃない。そんな風に思って欲しいと、工藤とレイは思って居た。


 翌朝、揃って村を旅だった。レイが乗るロンに荷馬車を引かせ、子供たち五人が乗る。御者にはレイだ。工藤は一人シャンに跨って居た。相変わらず酔うからだに馬車を牽いた事で足は遅くなったが、隣村までなら今日中に付けるだろう。

そして、夕方近く予定通り隣村『ルドル』に工藤達は無事に着いた。


「レイ。皆を頼んだよ。俺は話を付けて来るから」

「判りました。行ってらっしゃいませ旦那様」


 レイと子供達を置いて俺は村長の家へと向かう。ナッシンと違って此処の村長は裕福な暮らしをしている様だ。コレが駅馬車の恩恵なのだろう。


「ごめん。村長のお宅は此方で間違いないか?」

「そうでございますが、お客様は?」

「俺はヴェイルに住む冒険者工藤と言います。ナッシン村に居る借金を持つ子供達の件で村長と話がしたい」


 ナッシン村の村長の手紙を携えて俺はルドルの長と話をしている。子供達の借金は金貨三枚にも満たない。だが、子供達も知らぬ内に親の借金まで在るとルドルの村長は言い出した。結構面の皮が厚い男の様だ。


「では、その親達は何処居る?」

「借金を残して消えて居ります」

「その証文を書いたのが本人と誰が証明するんだ?」

「私しか居りませんな」

「それじゃ話に成らないね」

「ではお役人様を通して筋を通すしか在りませんな」


 強気な態度に工藤は気づいた。この村長が羽振りが良いのは役人と結託している可能性が在る。そう睨んだ工藤は、黙って村長の指示に従った。


「この証文に不備は無い。よって村長の言い分が正しい」

「不備が無くても本人が書いた証拠には成りません。まして、子供達の承諾ないままに借金のカタなどとは通りが通りませんよ」

「冒険者風情が私の判断に逆らうか!コレは領内の法に基づいた公文書だぞ」

「成程、判りました。ではご判断を領主の侯爵様にお尋ねする事にしましょう」


 俺の言葉に役人と村長が固まった。冒険者風情から飛び出す言葉では無かったからだ。書式も用紙も公式だろう。(多分偽物と思うケド)だが、親の借金のカタに子供を身売りする事等、エルーラ候は認めはしないだろう。


「お主は否、貴殿は……ご領主様を知っておるのか?」

「先日、ご令嬢のシャレーヌ様の件で親しくさせて頂いております。馬も二頭授かり、エメロスからヴェイルへ戻る途中で御座います。今から文を飛ばせば、数日中に使者の方が来られるでしょう。其れまで俺は待ちますよ」


 俺の言葉に、脅す相手を間違ったと役人は掌を返した。


「待て待て待て!この様な小さき事をイチイチ領主様に報告などしていたら仕事に差しさわりが起ころう。何分お忙しい方なのだから」

「ですが、ご家族で炊き出しにご参加されるお方が、このような理不尽な話を見過ごす事も有りますまい。特に奥方様に至っては……」


 ここで、領主ばかりか夫人の影をチラつかせると役人の顔が一気に青ざめた。


「よく見れば、この用紙には印が無いではないか!村長。誠にこの用紙は公文書なのか!?」

「何をお言いで?一緒に居たではアリマセンか。さっさとこの男を!」

「ええい!黙れ!黙れ!黙~れぃぃぃぃい!。偽の公文書ばかりか私まで貶めるツモリか!?誰か!誰か、村長に縄を掛けろ。厳しく取り調べを致す」


イザコザの在った話は落ち着いた。親の借金話は海の藻屑と化す。それでも子供達が作った借金は残る。証文にはアイーシャとカレンと言うもう一人の少女の名が記載されている。だから、二人は借金奴隷として俺と契約を交わしたのだ。

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