022 授かった力・探す力
本日三話目です
月詠み様の咳で三人は話を交える。月詠み様の体調が戻った事に先ずはホッとする。お告げには体力消耗が激しいらしい。部屋に籠ってばかりじゃ無く運動しようね。
「月詠み様は俺と女神様の会話をご存知ですか?」
「全ては知りません」
「では、どう言った事を知ってらっしゃいます?」
「クドウ様が悪しきモノでない。と女神様がご理解した事です」
「では、私は今後どうなるのでしょう?」
「何も変わりません。今まで通りです。只、時折私とお話して下されば……」
「近況報告をしろと言う事ですね」
「あっ!否、……唯、私が嬉しいと言う事なんですが、ダメ?ですか」
最後に何ポロって言っちゃってるんですかネ!?それより教会や女神様は俺に関知しないって事で良いの?昨日の俺達の決意って……。
傍でじっと黙って居たレイの耳が、長くて白くて可愛い耳が先っぽまで赤くなってるね。うん俺もだ。
「そう言えば、俺が仕えない力って何ですか?」
「私より傍にずっといらっしゃったレイさんの方がご存じなのでは?」
月詠み様から振られて考え込むレイ。何かが閃いたように笑顔を俺に見せた。
「魔法ではないでしょうか。旦那様に魔素が在ればスキルを学べますから」
「なるほど!確かに魔法か。授かってたら良いな。でもどうやって調べる?」
「ステータスを開いてみては如何ですか?」
流石、教会幹部。月詠み様の一声で俺は呪文を唱え久しぶりにステータスを見てみる事にした。
『名前:工藤英司。彷徨い人。LV:15。年齢:28歳。性別:男性。職業:冒険者。HP:95。MP:0。力:85。防御力:85。機敏性:70。器用:90。SP残:40P。習得スキル:無し。習得魔法:無し。ユニークS:言語習得術:LV2。契約の紋様。女神の加護』
久し振りに自分のステータスを見れば数字が色々と増えている。基本レベルのアップに加えて軒並み成長している。それと加護漏れから女神の加護へと変わって居る。更に彷徨い人と明記された事とユニークスキルに契約の紋様ってのが在る。何コレ?
レイに聞いても判らず、月詠み様も初めて見たと言われた。
その時だ。突然背中それも肩甲骨の辺りに激しい刺し傷の様な痛みが走った思わず耐えきれず、床に伏せもだえ苦しむ俺。レイと月詠み様も驚いてオロオロと慌てる始末だ。
「旦那様!どうなさいました?旦那様!」
「……ふぅ~お、収まったよ。イキナリ肩の辺りが刺された様な引っ掻かれた様な激しい痛みが走ったんだ。……チョッと見てくれる?」
そう言って俺はシャツを脱ぎ上半身を曝け出してレイに背中を見せた。
「旦那様!月詠み様の前で裸体を晒すなど失礼ですよ!」
えっ!?痛みに釣られて月詠み様の存在忘れてシャツを脱いだけど、全裸じゃないよ?アレレ?結構皆、上半身裸って居るじゃん。
月詠み様は別です!なんて怒られたけど、俺も以前みたいに醜い身体じゃ無くシックスパックの腹筋と引き締まった胸板だし、良いじゃん。
「わ、私は構いません。其れより、背中の方は如何ですか?」
顔を赤く染め月詠み様が話を逸らした。俺も同調して二人に背中を見せる。
「コレは……」
「「紋様ですね」」
「っん紋様?」
「はい。見た事が無いです」
「待って下さい!……コレは古代文字ですね。形が独特ですが古代文字の様です。
読めそうです。チョッと待って下さい。ウィ……ウィズ、ダム……確か知恵とか賢人と言った意味ですよ」
「知恵ですか」
何気なく俺はウィズダムと小声で叫んでみた。
「うぉおぉぉ~頭が!」
「旦那様!」
「だ、大丈夫だ。騒がせてスマナイ。チョッと驚いただけだ」
「何が起こったのですか?」
「うん。俺も知らない俺の世界の知識がイキナリ頭の中に流れ込んだ」
「それって……」
「今は収まった。もの凄い膨大な知識が頭の中に蓄積された気分だ」
「賢者の誕生ですか?」
「あぁ~どうなんでしょうね。あくまで俺の世界の知識ですよ。この世界と融合させるには暫く時間が必要でしょう。何しろ俺はこの世界について知らな過ぎますからネ。アハハッ」
契約の紋様とは、入墨に似た古代文字を体に刻み込むモノではないか。刻んだ紋様の内容次第で得られるものが違うのでないか。魔素が無い俺に魔素や魔法の代わりに成る力ではないか。
それが、女神様の言葉を解釈した月詠み様の言葉だった。
「では、入墨が増えれば自ずとスキルや魔法が使えるかもって事ですか?」
「だと思います」
「問題は、その紋様をどうやって増やすかだな」
「女神様は探せと言われたのですよね」
「って事は何処かに何らかの形で散らばってるって事か」
「当面の目標が出来ましたね」
話がひと段落して落ち着いた俺達。教会から逃げ回っていた事も必要が無くなり、一安心だ。懸案だった俺の立場は全部の開示は無理だが、『彷徨い人』として公開しても問題ないとお墨付きが貰えた。
王都の教会総本山で教皇様がヤキモキしているだろうと月詠み様は帰り支度を急いだ。いずれ王都へも訪れると約束を交わし俺達は別れた。
侯爵家には、事の経緯を全て話す事にした。夫人の感は結構鋭いから隠し立てしておくと、後で大変な気がしたからだ。エルーダ候も是非一度共に王都へ言ってくれと懇願された。正直利用されるのは好きじゃない。
「利用されない為にも往くべきです。王家から釘を刺して頂かないと余計に難題が降り懸かりますわ」
と夫人が俺を脅す。その考えも理解出来るな。序でに言えば、家を購入する件は流れた。『彷徨い人』の俺を侯爵家が囲ったのではと思われるのを避ける為だ。その代り、料理教室でお披露目したスィーツの数々をエメロスの町で広めて行く事を快諾する代わりにと侯爵家から金貨三百枚。年金貨十枚を振り込まれる事を無理やり承諾させられた。お金は在っても困らないからね。
後、シャレーヌ姫はレイばかりか俺にも気を配る様になったかな。チョッと嬉しい。そして、ベラには『話はまとまった。安心してくれ』と手紙を出し俺達は、エメロスでの滞在期間を延ばす事にした。
何でかって?また馬車に乗って帰るのを躊躇ったからさ。
「では、乗馬を覚えましょう」
「馬か……俺乗った事無いんだよね」
「大丈夫です。私がお教えします」
それから、三日ほど滞在期間を延ばし、昼は牧場で乗馬の稽古。何故かシャレーヌも一緒だった。夕方は侯爵家で夫人を交えての団欒。夜にはヘレンの宿屋で、レイとの二人っきりの時間を過ごし、漸くヴェイルへ帰還する事に成る。
「それでは、この文をシャルロットに渡して下さいね」
「『ロン』と『シャン』は若いが良い馬だ。可愛がってくれよ」
ロンは白馬。シャンは黒馬。何方も侯爵様から頂いた馬だ。俺達の新しい仲間と言う事に成る。
「姉とラナによろしく伝えてね」
エメロスで出会った皆と別れ、俺達は帰る事とする。




