018 再会
本日三話目です
工藤とレイがエメロスに旅立って直ぐにギルド長『ギャバン』の下へ教皇からの書簡が届いた。
「シャルル。例の冒険者の所在が解かるか?」
「昨日から来てませんね。ですが、定宿は『ルスト』ですケド」
「スマンが呼んで、否、良い俺が向かおう」
ギャバンの不可思議な行動は教皇から届いた書簡の所為だ。本来ならば、職員に呼びに行かせる所だが、緊急を要する為に自らが動く。結果から言えば、コレが悪手だったと言えるだろう。だがギルド長もこんな結果に成るとは露にも知らず、自ら動いてしまったのだ。
「おや、珍しい人が来たもんだね。どういうう風の吹き回しだい?雅か料理の噂を聞きつけて来たとか?」
「其れも在る。喰わしてくれるのか?」
「残念だけど、仕込み前だからね、コレで我慢しておくれ」
そう言って手元に出されたのは『カステラ』だ。ギャバンはソレを一口口に含んで驚いた。
「甘くて柔らかいな。こんな柔らかいモノは初めてだぞ」
「卵をかき混ぜるのが苦労するけど、ソコソコ日持ちするからね」
「コレを教えたのは奴か?」
「そうだよ。他にも料理で色々在るけど、それはスイーツって奴なんだとさ」
「凄いな」
「ソロバンも彼が広めたんだよ」
「何!商人ギルドが自慢してた奴じゃないか。今じゃウチの職員を片時も離せんと言って居ったぞ」
「だろう!?」
「……粗確定だな」
女将『ベラ』は、『ギャバン』が来た時から不審に思っていた。確信する為に敢て情報を流してみたのだが、彼の零したコトバヲ聞き漏らす事は無かった。
「会えるか?」
「昨日から二人で遠出しちまってるよ」
「ムムッ。帰りはいつだ?行先は?何か聞いてないか?」
「豪くご執心だね~ギルドで何か問題が在ったのかい!?」
「否、そう言う訳では無いが、料理の噂を聞きつけた他の町の長から話を聞きたいと五月蠅いんだよ」
ギャバンとベラの付き合いは古い。互いに助け合った仲でも在る。だが、ベラにとって工藤は店の繁盛を手助けした処か掛替えの無い家族同然だった。そして工藤の言動に疑問を持って居たのも事実だ。だからこそ行動に出る決意をした。
「確か、ヘッジに行って、タラン経由でシーラルを廻って王都に寄って帰って来るとか言ってたかね」
「そ、ソレは本当か!?」
「さぁ~急な話だったしね。定かじゃないよ。急ぎなのかい?」
「い、否、そう言う訳では無いが……それでは一月否、二月は戻って来ないか」
「ひょっこり帰って来るかも知れないけどね。其処までは私も知らないね」
ギャバンも人の嘘を見抜く力を持って居る。伊達に長を務めている訳では無い。だが、今回の騙し合いは『女』で在る女将の方に軍配が上がった。
そして、一足違いで後手に回った自分を呪いながらギルド長は帰る事と成った。
「ラナ。ラナ!悪いけど少し店を留守にするよ。仕込み大変だけど頼んだよ」
古い友人が去ったことを確認した女将は急いで、もう一人の友人の工房へと向かう事にした。彼にも口裏を合わせる必要が在ったからだ。
一方、工藤とレイは予定時間前に間に合う様にと宿を出た向かう先は侯爵家の館である。約束したシャレーヌ嬢に逢いたい気持ちも在るが、今回は仕事優先だ。
其れなりの格好を気にしながら二人は歩き出した。
「コレが依頼を受けた品で御座います」
「うむ。長旅ご苦労であった。確かに受け取った」
形式的な仕事の終了を確認する様に侯爵家当主と工藤は言葉を交わす。
「さて、此処からは娘を持つ親として其方と言葉を交わそう」
雰囲気をガラリと代え侯爵様がプライベートモードに切り替えて来る。
「機会が無く遅れたが、娘を救って頂いた事誠に礼を言う」
「その件でしたら、既に御付きのボイド殿とご本人シャレーヌ様から直々にお言葉を頂いております。オマケに多大な謝礼も頂きました。これ以上のお言葉は必要御座いません」
「其れでも父として娘の安否を救った者に言葉を掛けたいのだ」
当主『エルーラ候』が言葉を掛け続ける事に困惑する工藤とレイ。其れを救ったのは娘であるシャレーヌと母『シャルロット』だ。
「父上。余り度が過ぎますとクドウ様がお困りです」
「そうですよ貴方。御二方も困ってらっしゃるわ。それにしても本当に貴女は綺麗ですね。クドウ様の御供でなければ、是非当家に迎え入れたい所ですのに」
「お母様!もうその話は済んでいますわ。私は今では御二方が当家に仕えていない事が本当に良かったと思って居りますのに」
チッ!まだレイを奪う事を諦めて無かったのかい!?貴族さってのはシツコイね。その点シャレーヌ嬢は、スパッとして気持ちが良いよ。遊んだ甲斐が在ったってモンだ。
「だがな、お前の救われた命を、お金で返すだけではなぁ~」
「でわ、何か形在るものでお返しされては」
やっぱり、シャレーヌ嬢も貴族様でした。宿暮らしの俺達に、家宝級のお荷物ナンテ邪魔物以外無いんですケド
「それで、お二人は何時まで滞在なさるんですか?」
「今回は仕事の依頼で参りましたから、明日一杯町を見学させて頂いて明後日の朝には帰ろうかと思って居ります」
「そんな~お約束したではアリマセンか。お忘れですか?」
おっと、思ってたけどココでシャレーヌさん駄々を捏ねますか!?
「姫様、指切りはシッカリと胸に刻んで居ります。此度はアクまで仕事でお伺いしたまで、お約束は仕事抜きで伺いたいと思って居ります。また近い内に必ず」
レイの非打ちい処の無い台詞は完璧です。コレで今回は収まるでしょう。
「判りましたきっとですよ。お待ちしております」
一旦話が終わり掛けた所で、メイドさんが室内入って来る。驚いたのは、メイドさんの持ってきた品だ。見覚えの在るモノにしか俺には思えなかった。
差し出されたトレイの上には、見覚えの在る品と一通の手紙が在った。夫人は手紙に目を通し直ぐにトレイの上の品をパクリと頬張ったんだ。
「まぁ~コレは凄い」
侯爵夫人が目を見開いて俺の方を見詰る。いや~目力が凄いし、人妻に見られ続けるって俺免疫力無いですから。旦那の前ですし、イキナリ手討ちとかご勘弁願いますから。チョッと視線をずらして頂けませんか?
「どうしたシャルロット」
「貴方も口に運んで下さいまし。シャレーヌもよ」
二人揃ってパクッて……ハシタナイデスヨ~。
「アンの手紙には、他にもヴェイルで流行ってるモノが在るそうですね」
何か言葉に力が籠ってませんか?
「確かに幾つか流行りモノが御座います」
「それらの作り方をご存じですね」
「えっええー。確かに製造方法を知って居ります」
「残念ですが、クドウ殿。ヴェイルへの御帰りは数日延期して頂きます」
あぁ~雅かの攻撃ですか。それも有無を言わさずの決定事項ですか!?
そっとレイの方を見れば、頭を抱えるポーズですよ。アレッ?全部俺の所為?
どうして、世界が変わっても女性は甘いものが好きなんでしょうね。序に言えば、どこの家庭もカカア天下なんでしょうかネ。




