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どうしてこうなった?  作者: 英心
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014 彼女の挫折

本日三話目です


 レイの行動は早いと常に感じていた。だけど此処までするとは思いもしなかった。彼女は有無も言わさず俺に新たな奴隷を持つ事を勧める。結局彼女が居た館へこうして足を運んでいた。


「今回は三人です。数は少ないですが、その分選りすぐりです」


 そうライオット氏が言い。女性達を並べる。

一人は肩幅が俺より広いアマゾネスだ。獣人族それも猫科の大型類に属するんだろう。鋭い目付き・隙の無い姿勢・無駄の無い筋肉。どれを取っても俺を凌駕しているとしか思えない。ザ・ハンターと言う言葉が似合う女性だ。


二人目も同じく獣人。イヌ科だと思う。脂肪とは無縁な身体つきだ。一人目が瞬発力重視とすれば、此方は長距離ランナーとも言うべきだろうか。だからと言って極限まで削ぎ落とした感じは無い。この女性の目も鋭い眼光を持って居る。例えるなら、猟犬。そんな言葉が似合いそうな女性だった。


そして三人目は前者の二人と違った意味で細い身体をしている。但し、体質的に筋肉や贅肉が付かないと言った感じだ。そう俺が思い描いた通りの種族・エルフの女性だ。確実にこの女性は攻撃タイプと言うより後衛だと思える。俺とレイに足りないと思えるのは魔法だ。加えるとしたら彼女しかないだろう。だけど、その美貌と醸し出す雰囲気は前回の元貴族の金髪女性を超えている。確かあの女性で金貨百枚だった筈。つまり俺には高嶺の花と言える。


「どうですか?皆素晴らしいでしょう。自慢の品々ですよ」

「そうですね。其々に優れた能力と魅力を感じます。ライオットさんの眼力に敬服するばかりです」


 別に目の前の男をヨイショする気はない。だが、彼の財力とコネと運の全てが凄いと思ったのだ。

一旦女性達と別れ、ライオット氏との三人となり価格の公開とする。今回は面談は無しだ。する意味が無いからだ。ライオット氏は少し残念な表情をするが当たり前な事だと思う。そしてレイは不満に感じただろう。


「今回は儲け無しでこの価格です」


 その数字を見て俺は納得し、レイは驚いていた。レイは自分が売られた価格を知っている。当然だ。彼女の前で俺はライオットに金を払ったからだ。そして、今回提示された金額を見てレイはガックシと肩を落としていた。


「如何ですか?」

「今回は良い勉強をさせて頂きました。ですが、己の力も知りました。残念ですがご縁が無かったと素直に引き下がらせて頂きます」

「では、他の品をご覧に成っては如何でしょう」


 喰い下がるライオット氏に俺は首を横に振る。俺の隣で首を垂れるレイを慰める方が俺には優先事項なんだよ。



無言で俺の後ろを突いてくるレイ。暫く俺も黙って歩く。


「浅はかでした。雅か此処まで差が在るなんて……」


 彼女が無いを思ってるかは判らない。唯、傷ついて居る事だけは判る。


「不思議だよな。人の価値って何だろう?」

「有用性でしょうか」

「有用って何が基本だろう?」

「では、種族的優劣ないでしょうか?」

「それこそ、何を基準にするんだ?海で森の民が活躍できるのか?険しい山岳を超えるのに必要なのは強い足腰だろ!?適材適所。人其々だ。だから種族的優劣ナンテ一言で語れるもんじゃない」


 諭す様に俺は俺の考えをゆっくりと語った。


「女将さんの宿に求めるのは、愛嬌と安らぎと気配りだと思う。現に女将さんとラナは其れに在った優れた人材だと思うよ。レイはそう感じないか?」

「思います……ですが」

「親方のトコは如何だろう?」

「知識・経験でしょうか」

「親方に匹敵する知識と経験を求めるのは可哀そうだろう。そうだな~酒好きは絶対条件だと思うぞ」

「旦那様は何が言いたいんですか?」

「何を求め何に価値を見出すかだよ。必要とするモノとしないモノ違いはそれぞれに変わる。あの場所は、そんな事無しで価格が決まる。何でだと思う?」

「……」

「館の主ライオットさんが勝手に売れると思い込む事だ。其処に価値や有用性や種族の優劣なんて微塵も含まれて居ない。含まれる筈が無いのさ」

「ですが……」

「俺の世界ではね、価値は買う側が決めるって言葉が在る。必要とするかで値段が決まる。高いも安いも無い。其れが基本だ」


 それっきりレイは無言で歩き続けた。だから俺も無言で宿へと向かう。人の価値を勝手に他人が決めるなんて馬鹿げている。其れをレイに判って欲しかった。彼女の金額が彼女の凄い事には繋がらない事を理解して欲しかった。彼女を得る為に、俺は全てを投げ出す事を信じて欲しかった。


 その日、レイと知り合って初めて静かに寝た。俺から誘うのはどうかと思ったからだ。唯、ずっと朝方までレイを優しく抱きしめ続けた。


 気が付けば、俺より先にレイが目を覚ましていた。じっと俺の顔を見詰めて居るレイ。何かを言い掛けて彼女は止まった。そして笑顔を俺に見せる。


「おはよう御座います旦那様」

「おはようレイ」

「……あのぉ~コレ凄いんですケド」

「……仕方ないよレイと一緒に居る様になって俺若返っちゃたカラね」

「若い男性とは皆こうなんですか?」

「うんサルだね。男として如何なんだとも思う所は在るけど、サルと一緒だな」

「フフッ困ったものですね。ですが今朝はもう遅いですから、我慢して下さい」


 ベッドの中で何方からとも言わず笑い出す。そう偉そうな事を考えて見栄を幾ら張っても男なんて、こんな生物なんだ。ソンな生き物の為に女性が深く悩み傷つくなんて馬鹿らしいと思ってくれれば良い。


 気分一新で、何時もの狩場へ向かう。昨日と同じ様に狩りを続け、成果を上げる。何時もと同じ時間を共有し過ごしていく。俺達は何時もの日常を迎えていた悲鳴が聞こえてくるまでは。


「旦那様!」

「方角はどっちだ?」

「右前方です」

「よし!向かうよ」


 掛け声と同時に走り出す。悲鳴が聞こえた先に近付くにつれ、争う音が聞こえて来た。剣と剣が重なり合う音が響く。人が倒れているのが見えた。


「止まって下さい」


 俺より先行してたレイが囁いて俺の行動を止めた。木々の間から覗いてみれば、馬車を襲う人影が幾つか見える。その周りには既に事切れて倒れている人影が数体転がっていた。


「何方の加勢に向かいますか?」

「当然襲われてる方だ」

「宜しいのですか?場合によっては難儀な事に巻き込まれますよ」

「俺の存在自体がそうだから構わない。其れに見捨てたら俺を嫌いに成るだろ」「私は決してそうは成りません。何時までも好きであり続けます」


 レイはそう放つと俺より先に飛び出した。クソッ!と思いながら後に続く。

 思わぬ乱入に襲撃犯が一瞬固まった。そこへ一人の年配者が叫んできた。


「私は侯爵家に仕える『ボイス』と申します。冒険者とお見受けします。此処に居りますは侯爵家ご令嬢どうかご加勢を願います」


「ご依頼を承った。これよりボイス殿の加勢に加わる。暴漢者共、悪行を消したりたい成るならば俺を倒せ!」


 襲い掛かる暴漢者の一部が俺に目標を変え襲い掛かる。其れを槍で受け流し体の位置を入れ替えた。


「レイ!」

「任せて下さい」


 その隙にレイは襲われている馬車へと近づき中に居る令嬢の保護へと回った。

 馬車を背に暴漢者に槍を構える俺。ボイスも俺達の行動を確認し劣勢を挽回する。既に護衛と思える騎士が三人倒れているが体勢は三対二と形勢逆転だ。オマケに暴漢者もソレなりに傷を負っている様子だ。無傷で元気いっぱいの俺とレイの参加は奴等には不利だろう。


「クソッ!引くぞ」


 一人の男がそう言うともう一人も後に続いてその場から立ち去った。危険が去ったと確信したボイス氏は、ガックリと膝を崩しホッとする。


「大丈夫ですか?安物ですがコレを」


そう言って回復剤『ポーション』を白髪の執事ボイスに手渡した。


「忝い。そして無礼をお許し下さい。流石に歳で立っているのもキツイ……」

「何気にしないで下さい。それよりご無事で良かったですね」

「旦那様。馬車の中のご令嬢様も気を失ってますが大丈夫です。御付の方も問題ありません」

「だそうです。先ずはご自分の体力回復に専念して下さい」

「重ね重ね忝い。お言葉に甘えさせて頂きます」


 ボイス氏の怪我が回復し体力が戻ったのが、半刻程後。御付の女性とご令嬢は、怪我が無い事を確認した後に馬車を動かし町へ向かう事に成る。

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