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夏休みが半分を過ぎようとしている頃、わたしたちは随分横浜に近いところまで戻ってきた。
朝の身支度中、朔と鏡の前で化粧をしている最中だった。
「翠はさ、もし幼なじみがいて、その人のことがずっと昔から好きなんだとしたら、どうする?」
「えっ」
まるで誰のことを言っているのか分かりきった質問を、朔は唐突に投げかけた。
「しかも、その幼なじみは自分じゃなくて自分の友だちのことを好きなんだとしたら?」
「ええええ!?影って好きな人いるの!?」
思わず個人名を出してしまうが、朔はわたしを呆れた表情で見るだけで、うんともすんとも言わない。あくまで仮の話ということにしておきたいのだろうか。もっとも、わたしにはその理由はわからないが。
「うーん、むずいなあ」
マスカラを塗る手を止めて、わたしは考え込む。今巡という想い人がいるわたしにこの質問に上手く答えられる自信はない。が、それでも親友の相談にはできる限りの助けになる答えを出したいと思った。
数秒の思考の後、わたしは答えを出す。
「もしその友だちと幼なじみが上手くいったときに、どっちの方が応援できるかじゃない?」
朔も、マスカラを塗る手が止まった。
「幼なじみに気持ちを伝えて振られて気持ちを切り替えて2人を応援するか、幼なじみに気を遣って告白せずに2人を応援するか。どっちか、朔にとって辛くない方にしたらいいと思う」
「……なるほど」
「あっでも、これはわたしの考えだから、別にこれが絶対ってわけじゃないからね、最終的には朔が決めるのがいいと思うよ」
わたしが顔の前で両の手を振って言うと、朔は吹き出したように笑った。
「あははっ、おもろ。なんか翠って優しいね、ありがと」
「ええ?お、おもろい?」
「うん。うちは、翠のことも大好きだよ」
朔が、真っ直ぐな笑顔でわたしを見つめる。もしもわたしが男だったら確実に惚れていただろうな、という、そんな気持ちを抱く。
「んもー手止めないで!うちはもうそろ終わるよ」
「あわわごめん〜」
朔に背中をぽんと叩かれ、わたしは鏡に向き直った。
時刻は午前9時を回ろうとしていた。




