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朝、whooを見るとやはり巡は東に移動していた。
「巡くん、もしかしたら横浜に帰ろうとしてるんじゃない?」
翠が唐突に言った。
「あーありえる」朔が共感する。
サービスエリアのフードコートでラーメンを食べながら、俺たちは今後の計画を練っていた。
「一か八か、横浜目指して先回りするってのもありかもな」
俺が言うと、「もし横浜じゃなったらどうするの?」と翠が困り眉で言った。
「だから一か八かつったろ」
「うちは結構ありだと思う。そろそろお金もなくなるし」
その言葉に、翠も納得する。たしかに、今は数百円の出費も抑えたいほどだった。
そうして、俺たちが次に目指すのは横浜に決まった。
朔がトイレに行き、俺と翠は売店を見ながら待っていた。だが、もちろんお土産を買う余裕は精神的にも金銭的にもなかった。
翠は俺の前を歩きながら言う。
「巡くん、今何してんのかなー。あんな状態だし、わたしめっちゃ心配」
俺は何も言わなかった。
「巡くんとも、普通に旅行とかしたかったな。もうできないのかな」
足を止めて、ちらっと、翠はこちらへ振り向いた。
目が合う。俺はなんとなく、逸らす。と、逸らした先にガチャガチャを見つけた。キャラクターになんとなく見覚えがある。たしか、あれは――
「モンチッチ」
「ん?」
俺が指さすと、翠は目を光らせてガチャガチャへ飛びついた。
「わー目印キーホルダーじゃんやばー!これどこも売り切れてんだよねー!さすが田舎だー競争率低ー!」
久しぶりに心から嬉しそうな翠が見れて、なんとなく微笑ましく思う。
俺は翠の隣に立ち、「どれがほしいの?」と聞いた。
「んーやっぱモンチッチくんでしょ!」
翠は高揚した声で言う。俺はカバンから財布を取り出した。
「えっ影もモンチッチ好きだっけ?」
「違うよ」
「えっ」
300円入れて、回す。ガラガラと音を立ててカプセルが出てくる。
「開けて」
俺はカプセルを取り出し、翠に渡した。
翠は困惑しつつ、無言で開ける。中には俺が知っている最も一般的なデザインのモンチッチが入っていた。
「わーモンチッチくんなんだけどー!!」
翠は目を見開いて言う。
「あげる」
俺は翠の顔を覗き込むように見つめて、言った。
「えっくれんの!?ほんとに!?いいの!?」
「この前ハンカチだめにさせちゃったし、そのお詫び的な。まあ、それにしては少額すぎるけど」
「ええ全然気にしてないのに!ていうかほんとにいいの!?」
「うん、だってあれたぶん限定品でしょ?ほんとにごめん」
「うそ調べてくれたの!えへへなんか嬉しいな〜」
そう言って、翠はにこにこと笑う。たった300円で、しかも汚してしまったハンカチに割に合わない価値のものなのに、翠はこの上なく嬉しそうに喜んでくれる。それが俺にとっては何よりも嬉しくて。
「あー影笑ってるー」
今度は翠が俺の顔を覗き込むようにして言った。自分でも笑っている自覚はなかった。
「影あんま笑わないからなんか嬉しいー」
翠は再び目を細めて笑った。その悪戯な表情が、俺には怖いくらいきらきらして見える。
この子のそばにいるのは俺であってほしいなんて、そんな思いが一瞬胸を過ぎる。
朔が戻ってきたあとも、翠は上機嫌なままだった。




