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whooを確認すると、山梨へ来ていたはずの巡は何故か静岡へ引き返していた。
それもわたしたちが山梨へ到着した時に気づいたので、尚更タチが悪い。わたしたちは今日、急遽巡を追って静岡まで引き返すことにした。
そろそろ資金が限界なわたしたちは、今夜は山梨から静岡へ移動する間に見つけた個人営業のカラオケで夜を明かすことに決めた。
「翠はサウシーでしょー、影は歌苦手だもんねー」
「えー影歌下手なの?」
久しぶりに遊べるので、心做しかわたし含め全員がどことなく楽しそう。
「ほら翠の番だよ」
「あっはーい、これはめっちゃ失恋ソングでーす」
翠が元気よく手を上げる。
「聞きたくなっ」
影が嫌そうな顔をして耳を塞ぐ。
わたしは2人のやり取りに声を上げて笑った。
酒が入っているせいか、翠は歌っている途中に泣き出してしまう。
「はいはい悲しいねー、でもがんばろーねー」
わたしの膝に飛び込んでくる翠の頭をぽんぽんと叩く。翠の涙がわたしの膝を伝った。
「影もなんか歌いなよ」
影はこちらを一瞥するだけで何も言わない。
「じゃあ入れちゃうよ?なんにしよっかなー」
「歌わないってもー」
影も、若干口数が多かった。
膝の上で、翠が眠っている。
「えっ寝るの早」
わたしはすやすやと胸を上下させる翠を見て言った。
「低いやつがいーよねー、よねけんとか」
「なにそれ」
「米津玄師」
「ああ」
翠がさっきまで歌っていた曲のアウトロが終わり、唐突に部屋の中には静寂が流れる。途端に、部屋にアルコールの匂いが充満していたことを自覚させられる。
「うちも眠くなってきたー。……寝ないの?影」
わたしは静寂を破って聞く。
「まあ」
影はいつも通り淡々と答える。わたしはなんで、と聞こうとしたが、すぐにその言葉は憚られた。なぜなら、聞かずとも察せてしまったからだ。きっと影は、わたしたち全員が寝てしまったときに起こりうる危険を排除しようとしてくれているのだ。影だって疲れているだろうに。
そういうとこが――。
「……じゃあうち歌うね」
「寝るんじゃないの?」
「いーの歌う」
わたしはタブレットで曲を検索する。距離が近く、影と肩が触れ合った。以前はなんとも感じなかったはずのことが、最近は何かある度に鼓動が速まる。全身が熱いのが、酒のせいかそれとも別の何かのせいなのか、わたしにはわかる由もなかった。
選んだのは、SHISHAMOの「恋する」だ。




