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翌日、わたしたちはすぐに荷詰めをして出発した。予算はほとんどなかった。わたしのバイト代と影のバイト代、そして朔の家からのお小遣いのみだった。ので、節約するために夜行バスで静岡まで向かうことにした。
「横浜から静岡までって、どんくらいかかるんだろ」
朔が言った。
「知らん」
影が答える。
「結構かかりそうだよね、バスだし」
わたしも答えた。
「巡くんはどうやって、一人で静岡まで行ったんだろ。お金ないよね?」
ふと思って、わたしは聞いた。
「でもあいつ、前まで夜職やってたから」
影はなんの躊躇いもなく言った。
「あっえっ、そうなんだ」
わたしは動揺せずにはいられなかった。
「……わたし、巡くんのこと何にも知らないな」
ぼそっと、わたしは呟く。
「うちらも言うてそんな知らんよ」
朔が言う。
「幻滅した?あいつ2年くらいやってたから、未成年のときからだよ」
影は言った。
「ううん」
わたしは即答する。
「きっと、そうしなくちゃいけない理由があったんだと思う。巡くんの過去のこと、もっと教えてほしい」
二人は黙った。わたしの問いかけだけが、車内に響き渡る。
「俺が巡に初めて会ったのは、俺が中二の時だった」
唐突に影は語り始める。
「家出した俺を、巡は匿ってくれた」
わたしは黙って真剣に影の話を聞く。
「俺が中二だから、巡はたしか高一?とかだったかな。巡は片親らしくて、母親に迷惑をかけたくないからすぐに一人暮らしを始めたって言ってた。だから俺が初めて会った時、巡はもう既に今のマンションに一人で住んでたよ」
「そう、なんだ」
わたしの知らない事実が次々と明らかになって、巡はどうして今まで何もかも話してくれなかったのかと、寂しい気持ちになる。
「あとあいつああ見えて友だちいないんだよ、高校のときやたら嫌がらせされてたの、よく見た」
そこは少しだけわたしと似てるな、なんておこがましい思いを抱いて、少しだけ嬉しくなった。
「俺が知ってんのはこれくらい」
影は話に終止符を打つ。
「うちも影と一緒」
朔も影に同意した。
「ありがとう、教えてくれて」
わたしがそう言うと同時に、バスが駅に到着する。わたしたちはキャリーケースの取っ手を引き出して、立ち上がった。




