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「巡くんのクラスは何するの?文化祭」
ポップコーンを頬張りながら、霞は聞いてきた。
「えっとなんだっけ、なんか食べる系になった気がする」
俺は霞がポップコーンを食べる様子を見つめながら答えた。
「え楽しそう、行きたい!」
「えうんおいで、つーかさ、あのー。……霞のクラスは何やんの?」
一緒に文化祭を回らないか、と誘いかけてやめた。そこまで勇気が出なかった。
「わたしのクラスはね、ちょうどセンターオブジアースやろうと思ってて」
「まじ?」
俺たちは今まさにセンターオブジアースの待ち列に並んでいたところだった。
「でもジェットコースター系って色々制限厳しいから、ちょっと大変そう」
「あーね?まあ楽しそうじゃん、俺も行きたいな」
「いーよ来て!」
霞は笑顔でそう言う。スパンコールのカチューシャも相まって、やたらと眩しく見えた。
「わたしこれ初めて乗るんだよね」
「そうなん?」
意図せず、声が若干高くなる。霞の初めてを、俺が共にできることが嬉しかった。
「怖そう、ちょっと緊張する」
霞は細い眉を顰めて言う。
「大丈夫だよ、意外と一瞬」
「ほんと?」
上目遣いで霞が聞いてくる。
「がち。……もし怖かったら、まあ、俺がいると思って」
言った直後、まずいと、変なことを言ってしまったと痛感する。が、霞は笑って「なにそれー、ありがと」と告げた。
その笑顔がたまらなく可愛く思えた。この瞬間を、俺の目に見えている景色を永久保存しなければと思って、俺はカバンからスマホを取り出す。
「写真撮ろーぜ」
「ん、待って前髪」
霞はポケットから鏡とコームを取り出して前髪を整える。そのままでも十分可愛いのに、と俺は思った。
それから間もなくして、俺たちはコースターに乗ることができた。
霞が小さく「どきどきする……」と呟くので、俺は「だいじょぶだよ」とだけ言った。
たまたま手が触れて、今度は俺の心臓がどきどきする。
コースターがゆっくりと上って、視界が暗がりから開けて空が見える。それから頂点まで上り、直後、――
「!!」
衝撃が走り、俺は目を覚ます。呼吸が荒く、視界に映るのは頂の景色ではなくて、始発の電車の中だった。
急停止します、と車内にアナウンスが流れた。
周りを見て、この車両には俺しか載っていないことに安心する。
どれだけ夢を見ていただろう、スマホを開くと、時刻は四時半を回っていた。
一気に現実が舞い戻ってくる。俺は今、翠を一人部屋に残し失踪を図っているところだった。
昨夜の翠の泣き顔と、抱きしめた時の感触と体温が、全身に焼き付いて離れなかった。
それでもなお、考えているのは翠ではない別の人のことで。まだずっと、ずっと夢の中で天使と会っていたかった。




